2019/7/18

4876:ガラス窓  

 Paoさんのサブシステムは、2階の一室に設置されていた。急な角度の階段を上がっていって、その部屋に入った。

 部屋は6畳の和室であった。部屋の短辺側には畳の上に大きめのオーディオボードが3枚置かれていた。そのオーディオボードの上に二つのスピーカーとオーディオラックが置かれていた。

 気になっていた、Paoさんのサブシステムの正体は、私の勝手な予想とは少し違っていた。しかし、古い日本製のオーディオ機器であろうという予想は当たっていた。

 「好きですね・・・このタイプのスピーカー・・・」私は、サランネットが外されて、その三つのユニットが見えていたスピーカーを目にして、口にした。

 「このタイプのスピーカーってダサいよね・・・このダサさが良いんだよね・・・懐かしい感じがしてね・・・」

 Paoさんはそう話された。

 「ONKYO D-77RXですか・・・何時の時代のものですか・・・?」私は、メーカー名と型番を確認してから尋ねた。

 「これは1994年発売。ONKYO D-77RXは77シリーズの確か8代目だったかな・・・長岡鉄男のダイナミックテストでも、歴代の77シリーズは大賞や優秀賞の常連だったんだよ・・・」

 Paoさんはそう笑いながら、サブシステムのスピーカーを紹介してくれた。1994年というと25年前である。

 ONKYOのD-77シリーズは、ある意味日本のスピーカーを象徴するものかもしれない。3ウェイのユニットは綺麗に縦に並んでいて、ユニットの状態も綺麗であった。キャビネットは艶やかな茶色で、専用のスピーカースタンドの上にセットされていた。

 真ん中には、YAHAMAのGTラックがオーディオボードの上に置かれていて、そこにはCDプレーヤーとプリメインアンプが納められていた。

 近づいていって、そのオーディオ機器を確認してみると、どちらもNakamichi製のものであった。そのメーカー名を確認して「Nakamichiですか・・・」と呟いた。少々意外であった。

 Nakamichiというと、高級なカセットデッキで有名なメーカーであった。そのNakamichiが作ったCDプレーヤーとプリメインアンプに関しては、全く予備知識がなかった。

 「アンプが、IA-1・・・1993年の発売・・・まあ、あまり注目されるような製品じゃないけど、いい顔してるよね・・・このサイズがジャストな感じで、サブシステムにぴったりという気がしてね・・・色も良いよね・・・やっぱり黒じゃなくっちゃね・・・」

 「CDプレーヤーは、CDplayer2・・・1990年の発売で、ダイナミックテストでも優秀賞を受賞しているから実力機だよ。ぱっと見からは分からないけど。ミュージックバンクシステムを採用していて、7枚のCDを連続再生することもできる。これもこのサイズがジャストだよね・・・」

 と、Paoさんは相好を崩しながら、話した。

 「嘱託の仕事はもうやめてね・・・我慢すれば後2年は働けたんだけど、精神的につらくなってきてね・・・もうやめたっ!て感じで・・・これは3年間我慢した自分への褒美だよ・・・この部屋は空いていて全く使っていなかったからね・・・」

 Paoさんは現在63歳である。60歳で定年退職して、その後3年間は1年契約の嘱託で働いていたようである。

 「仕事をやめたから、時間だけはたっぷりとある・・・ここでのんびりと時間を過ごすんだ・・・CDをBGM的に流して、この椅子に座って本を読む・・・」

 部屋にはオットマンとセットになったイージーチェアが置かれていた。部屋に一つあるガラス窓からは甘泉園公園の木々の緑が見えていた。



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