2019/6/27

4855:入札  

 「全然だめでした・・・5万円で入札して一旦は最高額だったんですけど・・・最終的にはどんどんと値段が上がっていって・・・」
 
 「ゆみちゃん」はそう話し出した。

 喫茶店「Mimizuku」のカウンター席の右端にはオレンジ色のパタパタ時計が置かれている。その数字が描かれた板がはらっと回転した。

 彼女はヤフオクに出品されていたSpendor SP1/2に入札したのであるが、落札はできなかったようである。

 「結局幾らまで上がった・・・?10万円超えたんじゃない・・・?」

 「10万円どころか11万円を少し超えました・・・」

 「11万円か・・・それはちょっと高すぎるね・・・」

 「もう箸にも棒にも掛からない・・・といった感じでした・・・」

 SPENDOR SP1/2は有名なSPENDORのBCUの後継モデルという位置づけのSP1のマイナーチェンジモデルである。発売は1993年。

 低域には20cmコーン型ウーファー、高域には3.8cmソフトドーム型ツイーターを搭載し、超高域には1.9cmソフトドーム型スーパーツイーターを搭載している。

 それらの三つにユニットは縦に綺麗に並んでいる。少し変わっているのはバスレフポートが二つ、スーパーツイーターを真ん中に挟んでその両サイドに設けられていることである。

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 その姿形は、いかにもイギリスの伝統を感じさせる穏やかなものである。HARBETHとともにSPENDORは古き良きイギリスを体現しているメーカーである。

 SP1/2はその後改良を受けSP1/2Rとなってしばらく販売が継続されてされていたが、現在ではClassic1という名称となって、ユニットの配置などにも変更が加えられている。

 「この縦に綺麗に並んだ三つのユニットが見ていて気持ちが良いですよね・・・」彼女はSP1/2の写真をスマホで見ながらそう話していた。

 カウンターにはナポリタンが入っていた皿が空になって置かれていた。その横にはホットコーヒーの入った珈琲カップがあった。そのカップの中には3分の1ほど珈琲が残っていた。少し冷めてしまった珈琲を飲んだ。

 「今使っているDAITONEのスピーカーが壊れたわけじゃないから、いいんじゃない。あのスピーカーは発売当時凄く人気があったんだよ・・・」

 「そうだったんですか・・・確かになんだかしっかりとまとまったスピーカーですよね・・・見た目的にも・・・」

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 DIATONE DS-251MKUも2ウェイにスーパーツイーターを加えた構成である。1973年の発売で、この時代の雰囲気というか息吹のようなものを色濃く反映している。

 彼女とはしばらくの時間、差し障りのない会話を続けた。時刻は7時を過ぎ、7時半に近づいてきた。実は7時半になったら別の場所に移動する予定でいた。

 それは、同じビルの4階にある「オーディオショップ・グレン」であった。また例のごとく、「面白いものが今入っているよ・・・」という連絡が小暮さんからあったのは3日前であった。



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