2019/6/10

4838:トラブル  

 料金所を過ぎてからはパワーの数値が230ワットを超えないように注意しながら、クランクを回し続けた。多くの参加者が走っていたが、皆マナーがとても良かった。

 遅い人は左側に寄り、早いペースの参加者は右サイドを走っていった。時折数名で構成されたトレインも走っていた。

 最初のうちは同じFグループであるチームメイトと連なっていたが、少しばらけ始めた。一人は先を行き、私ともう一人のメンバーは一緒に走り、一人は遅れ始めた。

 私は10分に1回くらいの割合で給水すると決めていた。またシッティングだけだと同じ脚の筋肉を酷使することになるので、15分に1回くらいはダンシングを入れようと決めていた。

 計測開始ラインを跨いだ瞬間にサイコンのタイマーが動き始めていた。そろそろ負荷を上げてから10分ほどになったので、右手でボトルを取って一口二口に水分を補給した。

 そして、ボトルをボトルホルダーに戻そうとした瞬間であった。雨で指が滑ったのか、ボトルを道路に落としてしまった。

 「まずい・・・!」と焦った。しかし、取りに戻ると相当なタイムロスになる。すぐ後ろを走っていたチームメイトがそれを見て「大丈夫ですか・・・?」と声をかけてくれた。私は「そのまま行きます・・・!」と返答して、そのままペースを替えずに走った。
 
 「この先水分補給なしか・・・脚の筋肉が終盤で攣らないといいが・・・」心の中には不安が広がった。

 しかし、もう起こってしまったことを後悔しても始まらない。「なんとかなる・・・なんとかなる・・・」と自分に言い聞かせた。

 最初の5kmの目標タイムは20分に設定していた。この5kmは平均斜度が高めである。道の左脇に「5km」と書かれた看板の前を通り過ぎた時、目標タイムを50秒ほど経過していた。

 「まずまずかな・・・このままのペースでいこう・・・」と思いながら次なるポイントである10kmを目指した。

 5kmを走ってきて、エンジンも暖まりその回転は比較的順調のように思えた。スタートからの平均パワーは235ワットほどで推移していた。

 しばらくトレインの後ろにつかせてもらったり、ペースが合わないので降りたりを繰り返していると、一緒のスタートであったチームメイトの背中が見えてきた。少しパワーを増してその右を通りすぎて声をかけた。

 5kmから10Kmまでの区間は最初の5Km比べると斜度は緩めである。16分で走り切りたかった。「10Km」と書かれた看板の前を通り過ぎた時、37分ほどが経過していた。やはり1分ほどの遅れである。

 平均パワーは230ワットほどであった。10kmを経過して少しした頃であった。サイコンの「10秒平均パワー」の数値が忽然と消えた。

 「あれっ・・・どうした・・・」と一瞬焦った。2,3分すると数字が「0」と出た。その後その数字は少しづつ大きな数字になり、やがて本来の数値を示すようになった。

 「戻った・・・」とほっと安心した。パワーメーターとサイコンの通信が何らかの理由で一時的に途切れたようであった。

 その間3,4分であろうか。230Wほどを示していた「平均パワー」が急落して220ワットほどに下がっていた。

 「直った・・・」とほっと一安心して、「10秒平均パワー」が220ワットから230ワット程度の負荷になるように、時には抑え、時には「怠けるな!」と叱咤して、次なるポイントである15Km地点を目指した。

 10Kmから15kmの5Kmは18分ほどで走る予定であった。ようやく「15km」と書かれた看板が見えてきた。その看板を視界の左端に捉え、ペースを上げてその前を通過した。

 タイムは54分ほどであった。やはり目標タイムよりも1分ほど遅れていた。目標タイム通りであれば1時間21分台で走れるはず。1分ほどの遅れでも1時間22分台は可能である。1時間22分台が実質的な目標であった。

 「大丈夫・・・大丈夫・・・このペースで走れば自己ベストが出せる・・・」と自分に何度も繰り返し無言で語りかけた。

 15kmから20Kmの5Kmはメンタル的にも肉体的にもかなり厳しい状況を迎える。ここで大幅なぺースダウンをしてしまうと、自己ベストは遠ざかってしまう。
 
 この5Kmも18分ほどで駆け抜けたかった。2Okm地点で1時間12分以内であれば、1時間22分台のタイムが出る可能性は高い。

 しかし、パワーを維持するのが徐々に難しい状況に体は追い込まれていった。斜度が緩むエリアに入ると脚は休みたがる。するとパワーの数値はすっと下がって200ワットを切ったりする。それを目にすると、自分の心に鞭を入れる。1度、2度、3度と騎手が馬に鞭を入れるように心の鞭を入れた。

 「山岳スプリット賞」として、19km〜20kmの区間に設定された計測区間に入っていった。「山岳スプリット賞」とはまったく無縁であるが、何でもいいから利用したい心理から「この1kmを頑張る・・・!」と自分を励ました。

 そして20kmを経過した。1時間12分を数秒超えた程度であった。「1時間22分台のタイムは出るのでは・・・」と少し気持ちが軽くなった。しかし、この先に一つの難関が待っていた。



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