2019/5/21

4818:ゴール  

 なるべく負荷が一定になるように走った。サイコンには二つのパワーの数値が表示される。一つは10秒間の平均パワーの数値である。そしてもう一つがスタートしてからここまでの平均パワーである。当然前者は数値が頻繁に変わり、後者はゆっくりと変わる。

 それぞれの数値が230ワット程度になるようにクランクを回し続けた。スタートして5kmを走った。先にスタートしたチームメンバーにも追いつくようになった。申告タイム通りであれば、スタートの差は申告したタイム差の半分であるので、順次追いつくはずであった。

 富士スバルラインには我々のチーム以外にも多くのローディーが試走していた。その中にエメラルドグリーンのチームウェアを見つけると、気合が入り引き上げてもらえた。

 その右脇を抜けていくときには「頑張て下さい・・・」と声をかけた。同じ申告タイムでスタートも同時であったメンバーの背中も近づいてきた。

 点在するエメラルドグリーンの目印を目指して走っているうちに、走行距離は10kmとなった。前半が終了した。残り距離は13.5kmである。ここまでの平均パワーは235ワットであった。

 後半でもこの数値を維持するのは相当な困難を伴う。低下するのは必然であるが、その低下する幅を少しでも小さくしたいと思っていた。

 後半は軽くバトル状態になった。同時にスタートしたメンバーの背中が近づいてきて、追いつき追い越そうとするが、脚力に差がないのでしばし接戦が続く。

 バトルで脚を盛大に削るわけにもいかないが、自転車は気持ちで走る面があるので、無理のないバトルであれば、その効果を活用して平均スピードを上げることもできる。

 15kmを経過した段階で同時にスタートした3名のメンバーを一旦かわせた。しかし、一人のメンバーはすぐ後ろから迫ってきていた。

 そのおかげで、緩みそうになる心には常に緊張感がもたらされた。コースは残り少なくなってきた。視界の先には、2分半先にスタートしたチームメンバーの背中が迫ってきていた。

 その脇を一旦走り抜けたが、その背中はやがて視界の前に戻ってきた。すると後ろから迫ってきていたメンバーも前に出た。

 3名のメンバーは一団となって、この長いヒルクライムコースの終盤に入っていった。富士スバルラインの終盤には平坦部分がある。この平坦部分の直前は斜度が上がる場所がある。そこをダンシングでこなしていった。

 そしてようやく道は平坦コースに入っていった。3名はほぼ同時に平坦コースへ向かった。フロントギアをアウターへ入れてクランクを勢いよく回していった。

 平坦コースでは二人の前に出てスピードを上げていった。本番の時には数名の参加者で形成されたトレインの後ろにつくこともできるはずであるが、今日は単独で走った。

 やがてスピードは35km/hまで上がった。風切り音がゴーゴーと響く。口を大きく開けて酸素を少しでも多く取り入れながら、平坦コースを必死に走った。

 このままゴールさせてくれると嬉しいのであるが、問屋はそうは卸してくれない。やがて道は上りに転じる。

 斜度が上がった道はまっすぐに続いている。脚は既にスカスカである。体もがたがたである。急速にスピードはダウンした。

 後ろから追いかけてきた一人のメンバーが、道が上りに転じてから前に出た。その背中に視線を集中して差を縮めようとするが、脚は鉛のように重く、ケイデンスは全く上がらなかった。

 あっという間に30メートル以上の差がついた。「残り距離は少ない・・・ラストスパート!!」と心のなかで弱った自分を励まし続けて、ラストスパートした。

 前のメンバーの背中が近づいてきた。30メートル以上に一旦開いた差は10メートルほどに縮まった。そしてゴールした。

 ゴールした瞬間サイコンの小さなボタンを押して、スタートしてから動き続けていたタイマーを止めた。そして、その数字に視線を向けた。「1:21:43」と表示されていた。
 
 5合目は霧に包まれていた。辺りは白く煙っていた。ゴールした直後、ふらつく足でロードバイクを押して道の脇に立てかけた。呼吸器を酷使し続けたので、しばらくの間咳が止まらなかった。 



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