2019/2/16

722:MFBトゥイーター  

 リスニングポイントに置かれた黒い革製の3人掛けソファに座ると、いつもよりも多い「視線」を感じた。

 フロントの左右にはB&W 801Nが並び、センターにはB&W 802Dがすっくと立つ。その三つの「視線」以外にさらに二つの未知なる「視線」がそこにはあったのである。

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 その見慣れない「視線」からは、冷徹なまでの直視感を感じた。高性能なカメラのレンズに否応なく捉えられたような感覚があった。

 「これは・・・なんだ・・・」とその物体を凝視した。「スーパートゥイーターであろうか・・・しかし見たことのない製品だな・・・」と思い。エム5さんに「これはスーパートゥイーターですか・・・?」尋ねた。

 「いえ、モーショナル・フィードバック・スピーカーです・・・」

 全く聞きなれない名称が耳に飛び込んできた。「なんだろう・・・?」技術的なことに疎い私は、頭の中に大量発生した「?」マークの処理に苦心した。

 エム5さんの話によると、このMFBツイーターは、強力なターボチャージャーがエンジンを活性化するように、B&W 801Nにがつんと喝を入れたとのことである。

 メーカー名は「湯島技研」。製品名は「MFB H-10」。このMFBトゥイーターは、トゥイーターでありながらスコーカーやウーハーの帯域もしっかりと支え、 全体を引き締めてひとつの音場にまとめることができるようである。

 「百見は一聴にしかず・・・」であるので、早速聴かせてもらった。かかったのはアラン・パーソンズ・プロジェクトの「アイ・イン・ザ・スカイ」であった。

 「グリップが凄いな・・・バスドラやベースラインの音がびしっと決まる・・・ボーカルの声の質感も自然で加工感がない・・・」

 エム5さんは、このMFBトゥイーターを導入して以降は、マルチよりも2CHを聴いているという。その言葉がうなずけるレベルの高さである。

 MFBトゥイーターはB&W 801Nのトゥイーターと同じ高さに据えられている。前後関係で言えばB&W 801Nのトゥイーターよりもやや後方に設置されている。

 この位置もMFBトゥイーターの効力を適正に発揮させるためにとても重要な調整項目であるようである。

 MFBトゥイーターは、パワーアンプ内蔵である。後方からは電源ケーブルが出ている。プリアンプから延ばされたRCAケーブルが繋がれていた。

 1曲目を聴き終えて、MFB H-10の及ぼす効果のほどに少々驚いた。さらに何曲か聴かせてもらった。今日はポピュラー系のソフトが多かった。

 そのいずれも、素のBMW 523iから、M-Sportsモデルに乗り換えた時に体感するであろう変化に近いものを聴感上で感じた。

 エンジンレスポンスは素早く、足回りのセッティングはぎゅっと締め上げられている。その凝縮感は実に心地良い。

 試しに近くまで行って、そのMFB H-10に耳を当ててみた。ほとんど音が出ていない。「これで、どうしてこれほど作用するのであろうか・・・」と不思議に感じた。
 
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 後半はクラシックのソフトに移っていった。鮮烈な印象を受けたのは、武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」である。

 武満徹が1967年に作曲した、琵琶、尺八とオーケストラのための作品であり、瞬発力ある音の立ち上がりに、胸のすく快感を感じた。

 最後に、私のリクエストで白井光子によるブラームス歌曲集のCDとエディット・マティスによるシューマン歌曲集のCDを聴かせてもらった。

 白井光子は、1曲目「野の寂しさ」、2曲目「サッフォー風頌歌」、そして8曲目「夜うぐいす」を聴いた。ハルトムート・ヘルのピアノ伴奏は、左手が奏でる低音の和音が音楽の流れの底流をしっかりと支え、右手は軽やかにそして時に悲し気に音楽の精細な表情を伝える。

 白井光子の声は、中心に固い芯があり、決して貧相になることがない。歌詞が鮮明に聴こえ、響きが豊かで痩せることはない。

 エディット・マティスのシューマンは「女の愛と生涯」から「私が彼を見た時から」、「彼は誰よりも素晴らしい人」、そして「今、あなたは私に初めての苦痛を与えました」の3曲を聴いた。

 こちらも素晴らしい出来である。彼女の凛とした美声がエム5さんのリスニングルームに広がった。録音が新しいからか、サウンドステージが実に広々としている。

 最後の「今、あなたは私に初めての苦痛を与えました」は、沈痛な心情を吐露する曲であるが、彼女の演奏には引き込まれずにはいられない。

 エッシェンバッハのピアノ伴奏も素晴らしい。主張すべきところはするが、演奏の一体感を損うことは決してない。

 それぞれの演奏の素晴らしさを余すことなく堪能させてくれたエム5さんのシステムは「MFB H-10」という強力な助っ人の力を得てさらなる高みへ上ったようである。



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