2019/2/14

4720:クスリ絵  

 「ゆみちゃん」は捉えどころのないところのある女性である。だいぶ変わっているのである。まず妙に古いものが好きである。

 特に70年代のものに興味があるようで、31歳の女性の部屋にあるのが実に不思議なレトロなラジカセやオーディオセットが据えられている。

 それらのものを購入した時には、彼女の相談に乗った。ラジカセは渋谷にある古い時代のラジカセを専門で扱っている店にも一緒に行った。

 さらにレコードプレーヤ、プリメインアンプ、スピーカーを揃えた時にも、1970年代のもので整備されたものを探すのを手伝った。

 いろいろと探すと、そういった古い時代のオーディオ機器を整備販売しているところが見つかるのである。

 結果として実に渋いラインナップが揃った。レコードプレーヤーはYAMAHAのYP-700、プリメインアンプはSONY TA-1120、スピーカーはDIATONE DS-251 MKUという組み合わせである。定年間近のおじさんが持っているようなシステムである。

 さらに、彼女は人のオーラが見えることがあるという。もちろんそれが事実がどうか検証のしようはないのであるが、彼女に虚言症の兆候があるようには思えない。

 喫茶店「Mimizuku」の店内のような、白熱灯の淡い光に照らされてうすぼんやりとした空間では見えやすいようである。

 私も時折チェックしてもらったりしている。体調が悪い時などはその色合いがくすんでしまうようである。

 オーラは人によって色合いも違うようで、私の基本的な色合いは「グリーン」であると彼女は言っていた。

 「この『クスリ絵』は、人間の周囲を繭のように包んでいる生命場に良い影響を与えるのです。使い方は簡単で、服に貼り付けるんです。まあ、めんどくさければ洋服のポケットに入れておくだけでもいいですけど・・・」

 「貼り付ける時も、ポケットに入れる時も図柄を体に向けるのではなく外側に向けるのがポイントです。」

 彼女はカウンターに置いたポストカードのようなものを説明した。彼女によると、この「クスリ絵」は、丸山修寛という医師が長年の研究の結果開発したもので、実際に病気の治療にも活用されているとのことである。

 心の中で「眉唾ものだな・・・」と思いながら、その3枚の「クスリ絵」を眺めた。それらは非常に複雑な造形をしている。

 その3枚は特に共通項はなく、全く異なった色合いと形をしている。彼女はそれらを1枚ずつ説明してくれた。

 「まずこれは『フラワーシャーベット』という名称が付いています。生命の源である太陽をイメージし、形や色を組み合わせたということです。そのわりには色合いが寒色系ですけどね・・・自然治癒力の向上、マイナスエネルギーの消去、オーラのクリーニングなどに効果があるそうです・・・」

 彼女は1枚のカードを手元に引き寄せてそう説明した。なんだか妙な雰囲気になってきた。心の中では「怪しい・・・実に怪しい・・・」とは思いながら、彼女の手元にあるカードに視線を移した。

 「Mimizuku」の店内では、不思議な時間が流れている。濃厚でいながら、たゆたうような時間である。

 それ故か、この不思議な「クスリ絵」も、徐々に心の中に浸透してきて、無意識に湧きあがってきた拒否反応もすっと引いていった。 



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