2019/1/10

4685:110番の日  

 「今日は110番の日なんですよ・・・語呂合わせで・・・」と「ゆみちゃん」は笑いながら言った。カウンターの上には、ナポリタンが盛られた皿が置かれ、その脇にはアイスコーヒーが添えられていた。

 彼女はこれからそのナポリタンに取り掛かろうとしているところであった。私はというと、既にフレンチトーストを食べ終えて、ホットコーヒーをゆっくりと堪能していた。

 フレンチトーストは数ケ月前から喫茶店「Mimizuku」のメニューに加わった。それまでは、ナポリタンとホットサンドのみであったので、選択肢が三つになった。

 「110番したことありますか・・・?」彼女が訊いてきた。

 「あるかな・・・一度交通事故であったな・・・大した事故でなく、擦った程度だったんだけどね・・・」

 「私もあるんですよ・・・泥棒で・・・」

 「泥棒・・・?」

 「ええ、もうだいぶ前ですけど・・・以前住んでいたアパートの部屋に泥棒が入ったんです・・・」

 彼女はその時のことを話し始めた。アパートの玄関の横には台所の小さめの窓があり、外側には柵が設けられていた。

 その柵が壊されてその小さな窓から入ったようである。その台所の窓の施錠を忘れていたのだった。泥棒はそれを確認してから柵を壊したのであった。

 壊された柵は玄関の脇に立てかけられていた。取られたものは大したものではなかったが、気味が悪かったので、少ししてから引っ越した。

 「でも、捕まったんですよ、その泥棒・・・常習犯だったようで、あちらこちらで犯行を重ねてたみたいで・・・目黒警察署から1年ぐらいしてから電話があって、持っていかれたものは大半が戻ってきました。」

 「取りに行ったの・・・?」

 「そう、取りに行ってきました。警察署の中に入るってちょっと緊張しましたね・・・」

 「ゆみちゃん」とのとりとめのない話を終えてから、「じゃあ、お先に・・・ちょっと上に行ってきます・・・」と私はカウンター席に置いてあったコートを左手で取った。

 「オーディオ・ショップですか・・・?」

 「そうそう、古いオーディオばかり置いてある変わった店があってね、このビルの4階に・・・」

 会計を済ませて、店の外に出た。外は真冬の寒さである。年末から寒い日が続いているが、今日は特別な寒さである。 



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