2018/10/22

4605:スタート  

 スタートまでのカウントダウンが開始された。「1分前」が「30秒前」になり、「10秒前」となり、そして号砲が鳴った。

 周囲で左足のクリートをペダルにはめ込む音が響いた。100台以上のロードバイクがゆったりと動き出した。

 スタートゲートを潜ると、すぐ計測開始ラインが横たわっていた。その上を通り過ぎた瞬間、サイコンのスタートボタンを押した。

 Kuota Khanのフォークには計測チップが取り付けられていて、それに反応してどこかからか音がしたような気がした。

 サイコンのタイマーはあわただしく時を刻み始めた。スタート直後、斜度の厳しい坂が真っすぐに続いている。

 その直線コースの向こう側には青い空が広がっていた。スタート直後はテンションが高いものである。脚も余力が十分ある。それゆえ、周囲のペースに合わせてしまうとペースを乱しがちである。

 スタート直後はやはり少しオーバーペースになっていた。サイコンの表示を見ながら、ペースを徐々に整えていった。

 斜度がきつめの坂なので、心拍数は走り始めるとすぐにぐんぐんと上がっていった。そして、心拍数は170を超えた。

 心拍数は体にかかる負荷を如実に示してくれる。170から175の範囲に心拍数が収まるように走るつもりであった。

 175を超えると1時間以上の時間厳しい坂を上り続けるスタミナが後半切れてしまう。170を下回ると自分の持てる能力を出し切れない・・・そんな風に思っていた。

 箱根ヒルクラムの斜度はそれほど大きく変化しない。概ね9%ぐらいの斜度の道が延々と続く。10kmを超えると、アップダウンが何度か繰り返される。

 箱根ターンパイクは、普段は自動車専用道路であるので、広く走りやすい。天気は最高で風もなく、コンディションとしてはこれ以上望むことはできない感じであった。

 私はヒルクライム中はどちらかというとうつむき加減に走ることが多い。サイコンの表示のある一つの数値に意識を集中させていると、精神状態を一定のテンションに保ちやすいところがあるのかもしれない。

 今日は心拍数の数値を見つめ続けた。その数値は「172」あるいは「173」を示し続けていた。もちろん常にうつむいていると前方確認がおろそかになるので、時折視線を前に戻し周囲の状況を確認した。

 体調は思いのほか良いようであった。調子が良くない時は、30分ほどヒルクライムしていると、体がずっしりと重くなり余力がなくなってくるが、今日は30分ほど走り続けていても、まだ余力が感じられた。

 箱根ターンパイクは、厳しい斜度の道が延々と続くが、稀に斜度が緩む所がある。するとサイコンに表示されるパワーの数値がすっと落ちる。

 疲れてきた脚を休ませたいところであるが、その気持ちをなんとか抑えて、すぐさまギアを上げて、出力を上げた。

 心拍数は予定どおりほぼ一定の範囲の数値を示し続けていた。一定の負荷を体にかけ続けて上っていくと、ようやく残りの距離が5kmになった。

 「残り5km」とはっきりと書かれた表示板が道の真ん中に置いてあった。その脇を通り過ぎて、「残り5kmが勝負・・・大丈夫、このペースを維持すれば、昨年並みのタイムで走れる・・・」そう自分に言い聞かせた。

 この辺りまで走ってくると厳しい坂に体力も気力も奪われてロードバイクを降りて押して歩いている参加者の姿を見かけた。

 「残り距離5kmか・・・あと2km程走れば、アップダウンエリアに入る・・・」それを心待ちにしながら、疲弊してきた脚に鞭を入れ続けた。 



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