2018/10/31

4614:締め  

 その後少し間があって「揚げナスの香港風スパイス炒め」がテーブルに置かれた。彼女は「変わってますね・・・揚げナスですか・・・」と興味深げな視線を向けた。

 「これはビールに合いますよ・・・」私はそう言って、小皿に取り分けて渡した。それを一つ口に含んでから「本当・・・!」と彼女は目を大きくした。

 「私、どちらかというとナスは苦手なんですが、これなら全然いけますね・・・とても美味しいです・・・ここの店主は相当研究熱心ですね・・・」

 続いて登場したのは「エビの巻き揚げ」であった。これもこの店の人気メニューである。細かく刻まれた海老以外にも何種類かの具材が入っていてそれがギュッと詰め込まれて巻かれて揚げられたものである。

 そのままだと少し薄味なので、塩かケチャップを少量付けて食べる。塩とケチャップが盛られた小皿が付いてくる。

 「まずは、塩で試してみてください・・・ケチャップもいけますよ・・・」そう伝えると、彼女は、一切れ箸でつかんで、塩が盛られた小皿に近づけて小量の塩を付けてから口に運んだ。

 「爽やかな味わいですね・・・いろんな味わいがじゅわっと口に広がります。くどくないところが良いですね・・・」彼女は笑顔であった。

 この2品は「絶品」と言えるであろう。美味しい料理の効果で、ビールの消費量もペースが上がった。

 キリンガービールをさらに2本追加注文した。互いのコップにビールを注ぎ合って、強めの喉越しを堪能した。

 続いて登場したのは、「神奈川地野菜のクリーム煮込み」であった。これはかなりの変化球である。

 これは中華料理という範疇からはみ出てしまうような優しい味わいの料理である。体にも良さそうに感じる。

 「中華街に来たんだけど、なんていうか・・・中華中華していないところが良いですね・・・」と「寧々ちゃん」はこれまでの料理を評した。

 「でも、最後に来るのは『THE 中華』ですよ・・・」そう予言したが、「特製四川麻婆豆腐」はなかなか来なかった。

 そこで店員を捕まえて「四川麻婆豆腐、まだ来ていないんですけど・・・」と催促した。「それから一緒に小ライスを二つ付けて・・・」と付け加えた。

 ようやく「締め」が到着した。「四川麻婆豆腐」はその名の通りかなり辛い。口に入れた瞬間はそうでもないが、後から辛みがじわっと来る。

 その味わいは、ライスが欲しくなる。ライスと合わせると実にしっくりとくる。これで頼んだ料理はすべて出たことになる。

 2人でビールは結局6本を消費した。どうやらこの「一楽」の料理は彼女にも好評であったようである。  

2018/10/30

4613:一楽  

 朝陽門に着くと、彼女の姿は既にあった。挨拶して、「では行きますか・・・ここから数分です・・・」と目的の店に向かった。

 朝陽門を後にして中華街大通りへ向かった。その通りの真ん中あたりにあるのが、「一楽」である。それほど大きな店ではない。

 その外観は特別な高級感があるわけではなく、敷居の高さを感じることはない。それは中に入っても同様である。

 幾つか並んでいる4人掛けのテーブルの一つに二人は座った。彼女は椅子に座って、店内に一通り視線を這わせた。

 「とても、普通な感じですね・・・」

 「そうでしょう・・・全然気取ってないんですよ・・・どちらかというと庶民的な雰囲気ですよね・・・」

 私はメニューを開いて、どの料理をチョイスしようかと思案しながら、そう答えた。

 「値段も庶民的なんです・・・でも、料理の味はかなりレベルが高いですよ・・・あっ、そうだ・・・何を飲みますか・・・?」

 「もちろん・・・ビールです・・・」と彼女はきっぱりと答えた。彼女はビール好きである。量も私よりも飲める。

 瓶ビールを2本頼んだ。さしさわりのない会話をしていると、すぐにビールが来た。その際料理も頼んだ。

 「炭火焼チャーシュー」「揚げナスの香港風スパイス炒め」「エビの巻き揚げ」「神奈川地野菜のクリーム煮込み」「特製四川麻婆豆腐」

 私は、素早く、この店に来たならば頼むべきと個人的に確信している幾つかのメニュを店員に伝えた。

 瓶ビールをお互いのコップに注ぎ合って、乾杯した。瓶ビールはキリンのラガービールであった。その苦み走った味わいは、どことなく気持ちをほっとさせるものである。

 「良い娘さんですね・・・目的に向かって頑張っていて・・・感心しました。うちの娘と大違いだなって思いましたよ・・・」

 私は先日「遺産分割協議書」に署名・押印をもらう際に、出会った彼女の一人娘の話をした。彼女は吉祥寺にある有名パティシエの店で修業していた。そして、将来は自分の店を持ちたいと語っていた。

 「どうなるか分かりませんけどね・・・将来自分たちの店を持ちたいといっても、上手くいくとは限りませんし・・・洋菓子業界は結構厳しい世界で、開店しても上手くいかない場合も多いようですし・・・」

 「それは、そうでしょうね・・・かなりレベルの高いものを出さないと、埋もれてしまうでしょうね・・・」

 そんな、話を続けていると「炭火焼チャーシュー」がテーブルに運ばれてきた。これはこの店の人気商品でお土産として買って帰る方も多い。

 国産の豚肉を特製の漬けダレで一晩漬けこみ、炭火で焼いた香り高いチャーシューは、とても良い色合いである。

 小皿に取り分けて彼女に渡した。それを口にした彼女は満面の笑顔となった。「確かな味わいですね・・・」

 私も一切れ口へ入れた。その味わいをしっかりと咀嚼してから、キリン ラガービールを口に含んだ。

2018/10/29

4612:中華街  

 「その金額、振り込んでもらっても良いですけど、オマケのようなものですから、その金額を使って一緒に食事でもしませんか・・・」

 「寧々ちゃん」の声は、スマホの小さなスピーカーからさらさらと流れるように私の耳に届いた。その声の抑揚には特別な感情の内包は感じられなかった。

 「その金額」とは、彼女の亡くなった夫が随分以前に使っていたプリメインアンプ ONKYO Integra A7をヤフオクで売却した金額のことである。

 相続税の申告を済ませたのちに階段下の物置から出てきたささやかな「遺品」であるIntegra A7の売却代金は9,000円ほどであった。

 この時代の日本製のプリメインアンプの売却額の相場は2,000円ほどであるが、このIntegra A7は、傷や錆が全くなく、保存状態がとても良かった。過去に2度メンテナンスを受けていたのも良かったようで、予想された金額よりも相当高い金額で落札された。

 その経緯と落札金額を口座に振り込む旨を彼女に連絡した時に、彼女は「その金額で、一緒に食事でもしませんか・・・」と返答したのである。

 一瞬の間があった。「ということは、〇〇さんの奢りということですね・・・」と私が話すと、「そういうことになるかもしれないけど、そのお金は本当はないものだったんですから・・・奢りというほどのことでもないかも・・・」と、彼女は少し笑いながら話した。

 彼女とは10年ほど前にゴルフスクールで知り合った。様々な経緯を経て、一時私達二人は「特殊関係人」となった。

 その関係は数年続いたであろうか。その後その関係はきれいに清算された。そしてその関係がすっかり過去のものとなろうとしていた時に、彼女から連絡が入った。

 スマホ画面に表示された彼女の名前を訝し気な目で眺めながら出てみると、彼女の夫がくも膜下出血で亡くなり、その相続に関する手続きが全く手つかずで困っているとのことであった。

 私は相続関連の手続きに関してアドバイスし、彼女の夫が遺した膨大な量のレコードと高価なオーディオシステムの処分も行った。

 それらの手続きは順調に進み、不動産や金融資産の相続手続きや相続税の申告・納税も期限内に済んだ。

 不動産の相続手続きは知り合いの司法書士に頼み、相続税の申告手続きは私がやり、報酬もしっかりともらった。

 膨大な量のレコードは「ディスクユニオン」で処分した。高価なオーディオ機器は「オーディオショップ・グレン」の小暮さんにすべて引き取ってもらった。

 彼女の夫は比較的潤沢な生命保険に入っていて、さらに務めていた会社から高額な死亡退職金も出たので、経済的には今後全く不安のない状態となった。

 「もちろん、食事だけですよ・・・」彼女は含みを持たせた言葉を続けた。「了解です・・・もうそういう年齢でもないですからね・・・」私はゆっくりとそう答えた。
 
 私は既に55歳となり、彼女もちょうど50歳である。二人ともいい歳になった。ある意味いい塩梅に枯れてきたともいえる。

 「お薦めはありますか・・・?」彼女は続けた。「予算は9,000円ですよね・・・少し考えさせてください・・・」私はそう返答した。

 そんな会話を交わしたのが先週のことであった。そして、今日二人は横浜の中華街の朝陽門で待ち合わせをした。平日の夜であるが、中華街は思っていたよりも多くの人がいた。 

2018/10/28

4611:季節の谷間  

 朝の6時に起きた時、外の気配に注意を向ける必要はなかった。昨日の天気予報は今日は晴れることをしっかりとした言葉で伝えていた。雨の心配はなかったのである。

 しかし、別の心配事があった。それは私の体調である。昨晩、自宅に向かって車を走らせている時に喉に痛みが出始めているのを感じた。それと同時に体に倦怠感があった。

 それは明らかに風邪の症状であった。「まずいな・・・風邪かな・・・明日のロングライドは久しぶりなのに・・・」と思った。

 10月は台風や悪天候、プライベートな用事などで、日曜日のチームでのロングライドに参加できていなかった。

 先週の日曜日は「箱根ヒルクライム」であったので、10月に入ってからロングライドには全く参加できていないのである。

 どうにか久しぶりにロングライドに参加したところであったが、朝の6時に目を覚まして、外の気配ではなく、自分の体の具合を検証した。

 のどの痛みは悪化していた。体の倦怠感もぐっと重くなっていて、鼻の奥に明らかな違和感があった。

 「だめか・・・」と落胆した。「これは治るのに3日から4日ほどかかるな・・・」と思った。私は季節が秋から冬に向かう時期に風邪をひくことが多い。

 昼は晴れると暑いほどであるが、朝や夜は結構冷え込む。この気温差にやられるのである。どうやら季節の変わり目の谷間にすっぽりと嵌まり込んでしまったようである。

 残念ながら、この体調ではどう考えてもロングライドは無理のようであった。私の場合、風邪をひくと、そのポテンシャルは恐ろしいくらいに下がってしまう。

 数年前であった。風邪気味の体調をおしてロングライドに参加したことがあった。その時は都民の森まで走ったのであるが、散々な目にあった。

 Twitterには「本日は通常通りロングを行います。」とのリーダーの告知があった。それに「走りたかったのですが、風邪でダウンしてしまいました。」と返信した。

 Kuota Khanとの別れが近い。今日と来週の日曜日のロングはKhanで走る予定であった。その後に、Khanに装着されているコンポーネントをLOOK 785 Huez RSに移植する予定であった。

 「1週間、LOOK 785 Huez RSのデビューを遅らせてもらうかな・・・」そんなことを考えながら、ベッドに横たわっていた。喉が痛み咳が少し出た。

2018/10/27

4610:nightclub  

 摩周湖のホテル「乃の風」のロビーで見かけたMcIntosh XRT26の姿に心を奪われたことがきっかけとなり、横浜のMさんは、その巨大な「建造物」を今年になって新たに導入された。

 どこかしらニューヨークに聳え立つ高層ビルを思わせるXRT26は、JBL Paragonが鎮座するメインのリスニングルームではなく、横浜のMさんがオーナーとして経営されている会員制のワインスクール「Le Salon」の広大なサロン空間の一角に据えられた。

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 XRT26は二つの躯体を有している。一つは中低域用である。低域用に30cmコーン型ウーファー2個、中域用に20cmコーン型ミッドレンジをそなえている。

 もう一つは「タワー」と表すべき高域を担当する躯体で、高さが実に2.2メートルもある。この「タワー」は23個もの2.5cmアルミハードドーム型トゥイーターを搭載している。

 XRT26は、部屋の音響条件に合わせてチューニングできるよう、アクティブ・イコライザー・ユニットが付属していて、このイコライザーにより、広範囲な補正が可能となっている。このイコライザーの調整が音決めにとても重要な役割を担っているとのことであった。

 「Le Salon」の広々とした空間に置かれているのでしっとりと目に馴染むが、一般の家庭の空間には、すんなりとは収まりきらない物体である。

 これを駆動するのは、McIntoshのアンプ群である。パワーアンプはMC1000・・・巨大な躯体を有するモノラルアンプである。プリアンプはC26・・・これぞMcIntosh!と評すべき印象的で美しいデザインを有するプリアンプである。

 送り出しは、デジタルがEmmlabsの最新バージョン。そして、アナログはTHORENS TD521である。この豪華なラインナップにより、XRT26は奏でられる。

 私とチューバホーンさんは、横浜のMさんがご贔屓にされている「一楽」で素晴らしい中華料理のディナーを堪能した後、「Le Salon 」の豪華なソファに腰を掛けた。

 照明が落とされたサロン空間の中には、非現実的とも思われる雰囲気が濃厚に漂っていた。無音の状態でも、既に酔わせる諸要素が淡い霧のようにたなびいていた。

 最初にかかったのは、白井光子のメゾソプラノによるブラームス歌曲集から「野の寂しさ」・・・二人にとっては耳タコソフトである。

 ハルトムート・ヘルによる伴奏ピアノが流れ出した瞬間、芳醇な音の質感に瞬間的に魅せられた。濃厚でまろやか、温かみを感じる音の質感は耳に実に心地よいものであった。

 続いて白井光子の歌が流れ出した。そのボディー感は実にしっかりとした実在感を伴っていた。眼前でサロンコンサートが行われているのかと思わせる臨場感に心から浸ることができた。

 その音からはMcIntoshサウンドのエッセンスがしっかりと感じられた。「芳醇」「濃厚」「豪華」「華麗」そういった修飾語が、「タワー」に縦に並んだトゥイーターのように、ずらっと頭の中に並んだ。

 残念ながら、私はワインを嗜むことはないが、その味わいは超高級な赤ワインを思わせるものなのであろう。

 その後は、ポピュラー系のソフトやジャズなど様々な素晴らしい音楽が流れた。McIntosh XRT26の音の質感、そして「Le Salon」の現実的な世界をはるかに超越した豪華な空間に、すっかりと酔わせていただいた。「堪能」するというよりは「酔う」という表現がぴったりである。

 しばしの小休止の後、アナログタイムへ移行した。THORENS TD521はロングアームが前提のプレーヤーである。アームはSMEの3012Rが装着されていてその先端にはTHORENSのカートリッジが取り付けられていた。

 アナログになると、音の濃厚度合いがさらに深いものになった。醸造された年代がさらに遡ったワインのように、その味わいの舌への絡みつき具合が、重厚さをます。

 そして、チューバホーンさんのリクエストによりかかったPatricia Barberの「nightclub」から選ばれた「Yesterdays」は、SACDで聴いてから、さらにアナログでも聴かせていただいた。

 どちらも素晴らしいものであったが、「酔わせる・・・」という点においては、やはりアナログの方が一枚上手であった。

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 そのジャケット写真には、彼女の美しい横顔が写っている。そして、椅子に座る彼女の前のテーブルにはワイングラスが置かれている。この「Le Salon」で、しかも夜に聴くには、最もふさわしい1枚であろう。

 実に豪華な時間であった。「Le Salon」から立ち去る時には、私とチューバホーンさんは「さっ・・・現実の世界に戻りましょうか・・・」と声を掛け合った。

2018/10/26

4609:ドライバーショット  

 ゴルフは1ラウンドで18ホール回る。18ホールのうち4ホールはショートホールなので、ドライバーは使わない。

 距離が300ヤードを少し超える程度に短かかったり、極端に左右が狭いミドルホールの場合にもドライバーを使わないことがあるが、普通は18ホール中14ホールでティーショットにドライバーを使う。

 その14回のドライバーショットのうち何回ナイスショットが出るかで、その日のスコアは大きく変わってくる。

 もちろんドライバーショットが良くても、アプローチショットやパターでミスして悪いスコアが出ることはあるが、ドライバーショットの出来がその日のゴルフの成否を決める大きな要素であることは間違いない。概ね月に1回程度のラウンドしかしない私の場合は特にそういった傾向が強い。

 今日は同業者団体のゴルフコンペであった。場所は武蔵カントリークラブ笹井コース。プロのトーナメントも行われる名門コースである。先月の下旬、ここで「アジアパシフィック ダイヤモンドカップゴルフ」が行われて、池田勇太が優勝した。

 距離はしっかりとある林間コースであり、グリーンの周りは数多くのガードバンカーが囲んでいる。

 グリーンの速さは10フィートほどで平均よりは速い。アンジュレーションもあり、上に付けると極めて厄介なグリーンである。

 素晴らしいコースであるが、月一ゴルファーにとってはかなりの難敵である。林間コースなので、アップダウンはない。

 天気は曇りで、時折太陽が顔を覗かせたが、暑くもなく寒くもなく、さらに風も吹いていなかったので、ゴルフをするコンディションとしては最高と言ってもいいくらいであった。
 
 天候は良かったのであるが、今日のドラーバーショットの出来は残念ながら良くなかった。14回ドライバーをフィニッシュまで振り切った結果、胸がすくような会心の当たりは3回だけであった。その確率は14分の3で、21%でしかなかった。

 それ以外は引っかかって左の林へ入ったり、右にプッシュアウトして右の林の中へボールが入り込んでしまうといった状況であった。

 ドラーバーショットが林の中に入ってしまうと、第2打はアイアンを短く持ってフェアウェイへ戻すしかない。

 しかも、林の中からフェアウェイの戻す際に木に当たって、また戻ってくるといった失態を2回も行ってしまった。

 その結果、スコアは散々であった。前半のINコースは「50」、後半のOUTコースも「50」、トータルでぴったり「100」という、ある意味とても綺麗なスコアであった。

 「もう少しドライバーショットの精度を上げないと・・・」と反省しながら、ゴルフバッグを車の荷室に入れた。

 たとえ月一ゴルファーであっても、やはり100を叩くと落胆する。来月は2回ゴルフコンペの予定が入っている。それまでには少し練習場にでも行ってみようかと思っている。

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2018/10/25

4608:4年ルール  

 今年のロードバイクの機材関連においては「決戦用ホイール」として、「カンパニョーロ ボーラ ウルトラ 35」を購入したことが一番大きな投資であった。

 年に数回しか使用しない「決戦用ホイール」に数十万円を投入することについては「贅沢かな・・・」という思いがあったのは事実である。

 しかし、ロングライドの時にリーダーの「ボーラ ウルトラ 35」を試させてもらった時に、「これは良い・・・!」と気持ちがすっかりと固まった。

 その「新兵器」は、しっかりと威力を発揮した。6月に行われた「Mt.富士ヒルクライム」、8月末に参加した「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」、そして、この前の日曜日に走ってきたばかりの「箱根ヒルクライム」において、全て昨年のタイムを上回ったのは「ボーラ ウルトラ 35」の効果が大きかった。

 ロードバイクの機材に関しては概ね「4年ルール」を適用している。フレーム、ホイール、コンポーネントは、概ね4年ごとに新たなものに交換するというのが「4年ルール」である。

 今年のホイールに関しては「交換」ではなく、どちらかというと「追加」と表すべきなのかもしれいない。

「4年ごとの順番でいくと、来年はフレームかな・・・」と思っていた。ヒルクライムレースに有利なのは、やはり軽量フレームであるので、各メーカーの軽量フレームは注目していた。

 その中で第一候補にあがっていたのは「LOOK 785 Huez RS」である。他にもいくつか候補があったが、「785 Huez RS」が、一番輝いて見えていた。

 昨年発売された「LOOK 785 Huez RS」はすぐに大人気となり、昨年は注文してから半年以上たっても納品されないといった事態となっていた。

 「来年のMt.富士ヒルクライムには間に合わせたいから、今年中に頼んでいた方がいいかな・・・」と思い始めていた。

 そこで、先月行われたLOOKの2019年モデルの展示会の直後、意を決して、リーダーに発注を依頼した。

 輸入代理店の話では「785 Huez RSの入荷予定は全く未定で、何時になるか分からない・・・」とのことであった。

 その話をリーダーから聞いて「もしかしたら、来年6月に行われる予定のMt.富士ヒルクライムには間に合わないかもしれない・・・」とも思っていた。

 そういう心づもりであったので、今日リーダーから次のようなLINEが来た時には、不意を突かれて、一瞬何が起こったのがすぐには飲み込めなかった。

 「こんにちは。お疲れさまです。実はLOOKの輸入元からHuezの入荷に関して大幅な変更がありました。せっかく注文いただいて、楽しみに待っていただいたのに申し訳ありません」(ここまで読み進めて、これは今年日本に割りあてられた分の785 HUEZ RSは、既に完売状態で、再来年2020年にならない入手できない旨の連絡かと勘違いしてしまった・・・)

 「当初5月以降と言っていた入荷予定ですが、正式な入荷予定は今日です。というか今日入荷しました。ということで、納車はいつでもできますので、ご希望日など連絡ください。」

 すとんと何かが頭の上に落ちるように新たな事態が降ってきた。心の準備ができていなかったので、その事態を飲み込むのに多少の時間を要した。

 「あっ・・・そうなの・・・」という感じで、きょとんとした。事態を飲み込むと同時に、大人気の785 Huez RSが予想よりも早く手に入るという嬉しさと共に、もう一つの別の感情が沸いてくるのを感じた。

 それは今まで3年7ケ月の間、苦労を共にしたKuota Khanとの別れがすぐそこに来ていることに対する寂寥に似た感情であった。

 「来年の5月ぐらいまでは、一緒に走れる・・・」との心積もりであったので、「もう少し一緒にKhanと走りたい・・・」と思ったのである。

 そこで私は「予想外の展開で驚きました。でも、嬉しい驚きで良かったです。労苦を共にしてきたKuota Khanとは、もう少し一緒に走りたいので、10月28日と11月4日のロングライドはKhanと一緒に走り、11月4日のロングの後で、ショップにKhanをお持ちして、コンポーネント移植をお願いします。785 Huez RSのデビューは、11月11日のロングの予定にします。よろしくお願いします。」とLINEで返信した。

 ということで、LOOK 785 Huez RSのデビューは今年の11月11日に決まった。その日は奇しくも「ポッキー&プリッツの日」である。(全く関係はないけど・・・)  

2018/10/24

4607:下山  

 ゴールして惰性で進んでいくと、計測チップを回収しているエリアに達した。役目を終えた計測チップをKuota Khanのフォークから取り外してスタッフに手渡した。

 預けたリュックを受け取りに行くために、Kuota Khanを一旦サイクルラックにかけて、そのエリアに出向いた。

 リュックはシートの上にずらっと並べられていた。その中から自分のリュックをようやく見つけ出し、背負った。

 リュックの中には防寒着と補給食が入っていた。しかし、天気が良かったので寒さはあまり感じなかった。

 とりあえず、レッグカバーを装着し、ウィンドブレーカーを着用した。補給食としてはコンビニのお握りが三つ入っていた。

 その三つをリュックの中から取り出して、ひとつずつ胃袋の中に入れていった。「和風ツナマヨ」「とり五目」そして「チャーハンおむすび」の順であった。なかなか充実したラインナップである。

 すっかりと胃袋も満たされたところで、「アネスト岩田スカイラウンジ」に向かった。ここでゼッケン番号を告げると、「完走証」をプリントアウトして手渡してくれる。

 サイコンのタイマーの記録は「1:03:04」であった。スタート地点でもゴール地点でも、サイコンのボタンはジャストタイミングで押したので、サイコンのタイムと公式の計測タイムにはほとんど差がないと思われた。

 その予想通り、手渡された「完走証」に記載された記録は「1:03:04:250」であった。ぴったりサイコンのタイムと一致していた。

 その後は下山が開始されるまで、芦ノ湖の向こう側に見える富士山を眺めながら、時を過ごした。

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 空には雲一つない。澄み切った青を背景に白い頂を輝かせた優雅な富士山は、優しく微笑みかけてくれているように感じた。

 3年連続で参加した「箱根ヒルクライム」のタイムは以下のとおりである。

 2016年 1時間3分38秒
 2017年 1時間3分26秒
 2018年 1時間3分 4秒

 そのタイムを頭の中に浮かべて、「安定しているというべきか・・・伸びしろがないというべきか・・・」と少し複雑な思いに捉われた。

 「まあ、50代半ばという年齢を考えると、年々タイムを落としていかないだけでも、頑張っている方なのかもしれない・・・」と思い直した。
 
 やがて下山の案内が流れた。下山は50名が一つのグループとなって下山ボランティアの先導によってゆっくりとしたペースで行われた。

 私は2番目にスタートしたグループの中に混じって下っていった。箱根ターンパイクを下ってい行くと、やがて小田原の海が見えてくる。下りの際の素晴らしい景観もこの大会の楽しさの一つであろう。

 「また来年も挑戦しよう・・・そして、あくまで自己ベスト更新を目指そう・・・」と思った。年齢を考えるとそれが極めて困難であることは自明ではあるが・・・ 

2018/10/23

4607:ゴール  

 「残り5km」の表示板を通り過ぎて、次の表示板である「残り4km」へ向かっている時であった。右足の太腿の裏側に痛みの小さな核が発生した。

 その痛みの核は、脚の筋肉が攣る前兆である。「まずいな・・・またか・・・」と思った。実は太腿の裏側は「Mt.富士ヒルクライム」でも「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」でも、後半で攣りそうな前兆が出た。

 いずれも出力を少し下げてやり過ごして、無事乗り切った。「大丈夫・・・今日もやり過ごせる・・・」そう自分に言い聞かせた。

 出力は220から230ワットの間で推移していたが、210台の数値まで下げて様子を見た。出力を上げるとその痛みの核は大きくなる。

 筋肉が攣ることを予防する「マグオン」は、スタート前に一袋飲んでいた。さらに今日は、今回の「箱根ヒルクライム」の参加賞の一つとして頂いた「リ・ソビームちっぷ」を太腿の裏側に1個づつ貼り付けていた。

 これは見た目はピップエレキバンのように小さく丸い。それを傷みがある場所などに貼ると「内側からリフレッシュし、生体バランスを整えて身体をラクにしてくれます・・・」という効果があるとのことである。

 その「リ・ソビームちっぷ」の効果もあったのかどうかは不明であるが、筋肉が攣る前兆と思われた痛みの核は、やがて引いていった。

 「残り4km」の表示板を通り過ぎた。もう少しでアップダウンコースに入っていく。踏ん張りどころである。

 どうにかこうにか出力を維持しながら上っていくと、斜度が緩やかになりやがて平行になりそして下り始めた。

 それに合わせて、フロントのギアをアウターに変更して、重くなったペダルをぐいぐいと押し込んでいった。

 スピードは徐々に上がっていった。サイコンのスピードの表示を見ながらクランクを回すペースを上げていった。

 やがてスピードは50km/hを超えていった。風は勢いよく体を通り抜けていく。しばし下ると道は反転するかのように上がっていく。

 道が上りに戻って最初のうちは下りの勢いを使って走っていったが、やがてペースは落ちてくる。ギアを軽いものに変えていき、次の下りに向かって走っていった。

 二番目の下りが道の先に見えてきた。その下りに入り込むと、先ほどと同じようにギアを重くしてスピードを上げていった。

 下りでスピードは上がる。サイコンのスピード表示が60km/hを超えた。しかし、2番目の下りもまっすぐに上がっていく道に変わった。

 上りに道が転じると視線をサイコンに戻し、パワー表示を230ワット以上に維持できるように脚を回し続けた。

 そして最後の下りが現れた。短い下りを下りきり、その勢いを活かしてゴールまで続いている上りをハイペースで走っていくと、ゴールが見えてきた。

 ダンシングに切り替えてラストスパートした。心の中で叫び声を上げながら、必死でクランクを回してゴールラインを通過した。

 その瞬間、忘れずにサイコンのストップボタンを押した。サイコンに表示されたタイムは「1:03:04」であった。

 昨年の「1:03:26」よりも良いタイムが出た。大幅な更新ではないが、自己ベストを更新することができた。

2018/10/22

4605:スタート  

 スタートまでのカウントダウンが開始された。「1分前」が「30秒前」になり、「10秒前」となり、そして号砲が鳴った。

 周囲で左足のクリートをペダルにはめ込む音が響いた。100台以上のロードバイクがゆったりと動き出した。

 スタートゲートを潜ると、すぐ計測開始ラインが横たわっていた。その上を通り過ぎた瞬間、サイコンのスタートボタンを押した。

 Kuota Khanのフォークには計測チップが取り付けられていて、それに反応してどこかからか音がしたような気がした。

 サイコンのタイマーはあわただしく時を刻み始めた。スタート直後、斜度の厳しい坂が真っすぐに続いている。

 その直線コースの向こう側には青い空が広がっていた。スタート直後はテンションが高いものである。脚も余力が十分ある。それゆえ、周囲のペースに合わせてしまうとペースを乱しがちである。

 スタート直後はやはり少しオーバーペースになっていた。サイコンの表示を見ながら、ペースを徐々に整えていった。

 斜度がきつめの坂なので、心拍数は走り始めるとすぐにぐんぐんと上がっていった。そして、心拍数は170を超えた。

 心拍数は体にかかる負荷を如実に示してくれる。170から175の範囲に心拍数が収まるように走るつもりであった。

 175を超えると1時間以上の時間厳しい坂を上り続けるスタミナが後半切れてしまう。170を下回ると自分の持てる能力を出し切れない・・・そんな風に思っていた。

 箱根ヒルクラムの斜度はそれほど大きく変化しない。概ね9%ぐらいの斜度の道が延々と続く。10kmを超えると、アップダウンが何度か繰り返される。

 箱根ターンパイクは、普段は自動車専用道路であるので、広く走りやすい。天気は最高で風もなく、コンディションとしてはこれ以上望むことはできない感じであった。

 私はヒルクライム中はどちらかというとうつむき加減に走ることが多い。サイコンの表示のある一つの数値に意識を集中させていると、精神状態を一定のテンションに保ちやすいところがあるのかもしれない。

 今日は心拍数の数値を見つめ続けた。その数値は「172」あるいは「173」を示し続けていた。もちろん常にうつむいていると前方確認がおろそかになるので、時折視線を前に戻し周囲の状況を確認した。

 体調は思いのほか良いようであった。調子が良くない時は、30分ほどヒルクライムしていると、体がずっしりと重くなり余力がなくなってくるが、今日は30分ほど走り続けていても、まだ余力が感じられた。

 箱根ターンパイクは、厳しい斜度の道が延々と続くが、稀に斜度が緩む所がある。するとサイコンに表示されるパワーの数値がすっと落ちる。

 疲れてきた脚を休ませたいところであるが、その気持ちをなんとか抑えて、すぐさまギアを上げて、出力を上げた。

 心拍数は予定どおりほぼ一定の範囲の数値を示し続けていた。一定の負荷を体にかけ続けて上っていくと、ようやく残りの距離が5kmになった。

 「残り5km」とはっきりと書かれた表示板が道の真ん中に置いてあった。その脇を通り過ぎて、「残り5kmが勝負・・・大丈夫、このペースを維持すれば、昨年並みのタイムで走れる・・・」そう自分に言い聞かせた。

 この辺りまで走ってくると厳しい坂に体力も気力も奪われてロードバイクを降りて押して歩いている参加者の姿を見かけた。

 「残り距離5kmか・・・あと2km程走れば、アップダウンエリアに入る・・・」それを心待ちにしながら、疲弊してきた脚に鞭を入れ続けた。 



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