2018/7/29

4520:一人娘  

 私は二人に説明を始めた。まず、遺産の明細を説明した。不動産は自宅のみで、預貯金、みなし相続財産となる生命保険金、そして、レコードとオーディオ機器についても、実際に売却できた金額で遺産分割協議書と相続税の申告書に記載した旨を話した。

 「寧々ちゃん」は、ちょうど50歳である。いわゆる「美魔女」に分類されるであろう彼女であるが、やはり容色の衰えは隠しようがない。

 彼女が若かりし頃は相当に魅力的であったであろうことは容易に想像できる。その一人娘の年齢は26歳である。

 不謹慎とは思いながらも、彼女の娘であれば、魅力的な容姿の持ち主かもしれないという期待感を抱いていたのは事実である。

 説明をしながら、二人の表情を時折見比べるようにした。娘の容姿は母親を若くしたものというわけではなかったが、魅力のあるものであった。

 自然派とでも評すべきであろうか、際立った美貌という表現はけっして当たらない。派手さはない。

 どことなく寂しげな表情をしていて、緩やかな雰囲気を常に身にまとっている。集団の中でも真ん中に位置することはなく、いつも隅に居て、言葉も少なげというイメージである。

 1時間ほど経過したであろうか、説明とそれぞれの書類への署名・押印が終わった。「自宅の相続登記は知り合いの司法書士に依頼しておきます。青梅税務署にはこちらで申告書を提出して、控えを後日郵送しますので、大切に保管しておいてください。これで、相続関連の手続きはすべて終わります。」私はそう言って、書類の全てを鞄に納めた。

 「あっ・・・そういえば、もう一つ見つかったんです・・・」彼女は、急に思い出したように、そう言った。

 「見つかった・・・?もしかしたらまだレコードがあったのか・・・」と思った。「となると、その分の処分金額を加算して書類を作成し直す必要があるかも・・・」ちょっと心がざわついた。

 「階段下の物入にあったんですけど、オーディオ機器のようなんです・・・相当昔に使っていたもののようで、てっきり捨てたものと思っていたんですが・・・」

 彼女はそう言って、リビングから一旦出た。そして、段ボールを両手で抱えて、持ってきた。その段ボールは古いものであった。



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