2018/7/20

4511:ICF-5300  

 猛暑に対してこの古いエアコンでは心もとない感じではあったが、喫茶店「Mimizuku」のエアコンは動作音を盛大にさせながら、冷却した空気を店内に吐き出していた。

 私はカウンター席の一番奥まった椅子に座りながら、珈琲を飲んでいた。「ゆみちゃん」が店に入ってきたのは午後7時ごろであった。既に辺りは暗くなっていたが、外の空気はまだまだ熱っぽかったのであろう、彼女の顔には汗が浮かんでいた。

 彼女は挨拶をしてカウンター席に座った。そして早速アイスコーヒーとナポリタンを頼んだ。話は最近の暑さのことから始まった。

 「ちょっと異常ですよね・・・」

 「この前自転車で走っていると、軽い熱中症になってしまって・・・」

 「この暑さでも走るんですか・・・?」

 「そうなんです・・・その時も100km以上の距離を走って・・・」

 「それは危ないですよ、私なんか、少し歩いただけで、最近の暑さだと息苦しい感じになって・・・」

 そんなとりとめのない話をしながら、しばしの時間を過ごした。お互いの近況を報告した。その中で彼女が最近入手したというものが面白かった。

 「ラジオなんです・・・」
 
 「ラジオ・・・ラジカセあるでしょう・・・」

 「ラジカセのラジオの受信状況があまり良くなくて・・・それにヤフオクで凄く安く入手できたんです・・・デザインもいいですよ・・・」

 そう言って彼女はスマホの画像を見せてくれた。

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 「これは・・・!」私はその写真を見て、少し絶句した。スマホの画面に映っていたのはSONY ICF-5300であった。1972年に発売された3バンドラジオであり、私が小学生5年生の頃に購入して使っていたラジオであった。

 「これ、小学生高学年の頃に使っていたものですよ・・・」

 「えっ・・・そうなんですか・・・大きくもなく小さくもなく、デザインも気にって・・・ヤフオクで2,000円くらいでした・・・」

 「ちゃんと鳴りました・・・?」

 「ええ、大丈夫でした・・・音もいいですよ・・・」

 彼女は少し変わっている。1970年代のものが好きなのである。彼女が生まれるはるか前の時代であるが、その時代のデザインが好きで、ちょっとしたコレクションを持っている。

 ラジカセにはSONY CF-1610を既に持っている。その横に新たな1970年代のコレクションが並べられたようである。

 その画像を見ながら、ついつい頬が緩んだ。フロントの左上にある赤い小さなボタンを押すと、暗闇でも周波数を合わせられるようにほのかなオレンジ色の灯りが光ったことを思い出した。



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