2018/5/17

4447:再会 5  

 私は「レコード部屋」のレコード棚に視線をもう一度這わせた。そして「GENESIS」と書かれた白い仕切板で区切られた空間に近づき、その中に納められていた何枚かのレコードの中から一枚を取り出した。

 そのLPは「Selling England By the Pound」であった。1973年に発表されたこのアルバムは、GENESISの最高傑作だと、個人的に思っている。

 それを手にして、彼女と一緒に1階のリビングに降りていった。リビングには、彼女のご主人が大事にしてきたオーディオシステムがセットされている。

 主を亡くし、ひっそりと静まり返っているだけであったオーディオ機器を改めて眺めた。そのいずれもがとても美しいデザインの機器である。

 そして電源が落とされていたオーディオ機器を順次立ち上げていった。

 まずは、OCTAVEのプリアンプHP-300の電源ボタンを押した。薄型のプリアンプで大きなボリュームノブが真ん中よりもやや右にあり、それ以外はセレクターノブが二つあるというシンプルな構成であり、飽きのこないデザインである。

 さらに同じOCTAVEのパワーアンプであるRE-280 MK2の電源を入れた。出力管が左右に2個づつ配置されていて、三つの初段管が真ん中に並んでいる。シンメトリックな配置がかちっとした清潔感をもたらしている。

 それらの真空管がオレンジ色に発色し始めた。これらのOCTAVEのアンプは色が精悍なブラックである。OCTAVEの製品は、シルバーのものを見かけることが多いが、ブラックも良い雰囲気を醸し出している。

 最後にORACLE Delphi5の「33」と先端部分に刻まれた細長い棒状のスイッチを下へ軽く押した。するとターンテーブルは、音もなく静かに回り始めた。そしてやがてその回転数は33 1/3rpmに達した。

 レコードジャケットからレコードを取り出して、ORACLE Delphi5のターンテーブルにセットした。

 Delphi5にはSME製のアームが取り付けられていて、そのアームをアームレストから外して盤面の上をずらしていき、A面3曲目の出だしにセットした。

 そしてアームリフトを下すと、針先はゆっくりと降りていき、やがて盤面に達した。「ボツッ・・・」と音がRaidoh Acousitics C-2からした。

 「サー・・・」とサーフェスノイズがした後に 、「Firth Of Fifth」の印象的なピアノのイントロが流れ出した。



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