2018/4/18

4418:東京文化会館  

 「シューベルトの数あるピアノ・ソナタの中で、僕が長いあいだ個人的にもっとも愛好している作品は、第十七番ニ長調D850である。自慢するのではないが、このソナタはとりわけ長く、けっこう退屈で、形式的にもまとまりがなく、技術的な聴かせどころもほとんど見当たらない。しかしそこには、そのような瑕疵を補ってあまりある、奥深い精神のほとばしりがある」

 そう村上春樹が評しているシューベルトのピアノソナタ17番がメインのプログラムとなっているコンサートを聴いてきた。

 場所は東京文化会館 小ホール。上野駅の公園口改札を出て横断歩道を渡るとすぐについた。開場は6時半であった。6時40分にホールに入っていた。

 ピアノのコンサートの場合、舞台に向かって左側の席から埋まっていく。ピアニストの指使いを視界に納めることが出来るからである。

 ちょうど真ん中の席を確保した。東京文化会館のホールは大ホールも小ホールも数年前にリニューアルされたとのことで、音響的にも改善されたようである。

 ピアノの後方には巨大な反射板が設置されていた。天井はとても高い。このホールは1961年の完成であるので、私よりも2歳上である。

 設計は前川國男。前川は、ル・コルビジェと親交が深く、その影響を強く受けた。彼の設計する建物は確かにル・コルビジェと共通する質感を感じさせた。

 今日の演奏者は佐藤卓史。2007年のシューベルト国際コンクールで第1位となった。2014年からシューベルトのピアノ関連器楽曲全曲演奏プロジェクト「佐藤卓史シューベルトツィクルス」を展開中で、今日の演奏会もその一環である。

 前半は「グラーツのギャロップ」「12のグラーツのワルツ」「ピアノソナタ第10番」の3曲が披露された。

 軽やかで繊細、重々しい重厚感よりも春のような季節感を感じる演奏である。音の響きがのびやかで心地いい。

 小ホールの、前後でも左右でもちょうど真ん中あたりの席で聴いたが、この辺りが音響的にもちょうど良いスウィートスポットだったのかもしれない。

 音が大きすぎず、小さすぎず、響きがすっと体内になじんでくる感覚がした。前半が終わって休憩時間は20分とアナウンスされた。

 トイレを済ませて、喉が渇いたので、ホットコーヒーを飲んだ。後半のプログラムはピアノソナタ第17番である。



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