2018/2/17

4358:検知機能  

 そのうえで、ほんの少し前に聴き、ORACLE Delphi6のターンテーブルに置かれたままになっていたレコードに再度ZYX OMEGAの針先を落とした。

 そのレコードはハイドンのチェロ協奏曲第1番である。チェロはミクローシュ・ペレーニ。彼は、ハンガリーのチェロ奏者である。

 レーベルはQualiton。ハンガリーの国営レーベルであり、1960年代半ばにその名前をHungarotonに変更した。1960年代初めの録音である。共産圏のレコードらしくレコードジャケットは薄くぺらっとしている。

 私と大川さんは神妙な面持ちで耳を傾けた。「確かに変わる・・・」私は心の中ですぐさま呟いた。

 リスニングポイントとスピーカーとの距離を部屋の狭さから十分に取れないために感じられる音の切迫感が薄らぎ、その結果として音楽がゆとりの表情を携えるようになった。

 それまでの余裕のない一生懸命さが和らぎ、サウンドステージが奥に下がる。杉並公会堂の大ホールは、そのエアボリュームからすると「中ホール」と称するのがふさわしいものであるが、その杉並公公会堂の大ホールから十分な広さの大ホールに移動したような感じであろうか・・・

 「なんだか部屋が全体として大きくななったように感じる・・・」そう心の中で独り言を言って、試しに目を閉じてみた。

 目を閉じて音だけを聴いていると、狭いはずのリスニングルームが広がったような錯覚に陥る。もちろん、目を開けるとリスニングルームは狭いままである。

 第1楽章が終わった。大川さんは「私には変わったように感じられました。次はレコードではなく、CDにしてもらえますか・・・先ほど聴いたショスタコービッチの交響曲第5番の第4楽章を聴かせてください・・・」と言った。

 ORACLE CD2000の円形の窪みには、CDが一枚据えられた。セミヨン・ビシュコフ指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の演奏で、レーベルはPHILIPS。ドイツが統一される前のCDであり、MADE IN WEST GERMANYの印字がある。

 より編成が大きくなったこの交響曲は、激しくうねるフォルテッシモと静かに潮が引くようなピアニッシモの対比により聴く者の心から高揚感を否応なく引き出す。

 その第4楽章が終わった。大川さんは「やはり違いますね・・・クリアでクリーンです・・・メルセデス・ベンツの新型A-CLASSのような変わりようですね・・・」と少し意味不明なことを言った。

 「先日新型A-Classが正式発表されたのですが、そのエクステリアデザインはクリアでクリーンなものに変わりました・・・現行のA-CLASSのフロントマスクはややもするとくどいところがありどこかしら威圧的な表情をも感じさせるのですが、新型は雰囲気を大きく変えてきました。」

 「その表情はクリア・アンド・クリーン・・・額縁を装着して聴くと、部屋の響きがそんな感じに変わります・・・」
 
 そして大川さんは、手許のiPhone 8 PLUSを操作して画面に表示された新型 A-CLASSの写真を見せてくれた。

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 確かに変わった。すっきりとクリアな外観である。私の部屋の響きも「額縁」により変わったようである。それは「クリア・アンド・クリーン」であると大川さんは表現した。私の耳にはリスニングルームの広さが一回り大きくなったように感じられた。
 
 それが事実であることを検証する術はないが、自分の聴覚中枢は確かにそのように検知した。大川さんの聴覚中枢も表現は違ったが似たような方向への変化を検知したようである。



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