2018/2/2

4343:ピアノブラック  

 引き戸式の玄関のすりガラスの向こう側に人影が近づいてきた。そしてガラッと乾いた音を発っしてその玄関は開いた。

 「どうぞどうぞ・・・ひさしぶり、1年ぶりくらいかな・・・まだ雪にはなってない・・・?」

 「ご無沙汰しています・・・ちょっと雪が混じり始めましたかね・・・それにしても寒いですね・・・明日の朝、あまり積もらないといいですね・・・」

 と差し障りのない挨拶を済ませて、家の中に入っていった。Paoさんの家は木造で築後50年以上が経過している。

 古い家独特の匂いがした。しばらくすると鼻が慣れて気にならなくなるが、その匂いはどこかしら懐かしいものであった。

 リスニングルームの様子は、1年前に訪問した時と変わってはいなかった。センターラック方式のセッティングで、その縦型の大きめのラックの最上段には、MarantzのCD34が鎮座していた。

 コンパクトな躯体で高級感はないが、アンプ製作で有名な工藤氏により徹底的なモディファイが施されたCDプレーヤーは、「羊の皮を被った狼」と言える。

 「その改良費用だけで100万円は払っているよ・・・4回ぐらいバージョンアップしたからな・・・」とPaoさんは語られていた。

 そのCD34は、どう見てもカッコいいとは思えない小さな座布団のようなインシュレーターの上に、言葉通り「鎮座」していた。

 この少々風変わりなインシュレーターも工藤氏製作のもののようであった。内心「もっとカッコいいものにすればいいのに・・・」と思うが、効果のほどは確かなようであった。

 その下にはMark LevinsonのNO.26Lが置かれていた。フロントパネルは曲線を上手く利用した素晴らしいデザインである。

 ブラックのフロンパネルに白いスイッチやノブ類が実に渋い。中古市場でも未だに人気が高くて、高値で取引されている。

 そのすぐ下にはNO.26Lの電源部が置かれていた。別躯体の電源装置がついていると、SN比の点から有利なようである。

 一番下にはMark LevinsonのNO.27.5の巨体が収まっていた。一番上から下まで、すべてブラックでまとめられていて、統一感がある。

 そして、その魅力的なオーディオ機器が詰まっているラックの左右には、やはり黒い色をした真新しいスピーカーがその威容を誇っていた。

 スピーカーはYAMAHA NS-5000。NS-5000は純正のスタンドの上に設置されてやや内振りがつけられて設置されていた。

 NS-5000のブラックは美しいピアノブラックである。YAMAHAのピアノ塗装の技術がそのまま活かされた塗装は実にゴージャス。

 Paoさんも「音も良かったけど、一番の決め手はこの塗装かな・・・上質なピアノ塗装の黒にはすっかりと魅了されたよ・・・」と話されていた。

 そしてこれらのオーディオ機器を繋ぎ合わせるケーブル類は以前と変わっていない。すべてMITの最初期のものが使われている。

 「CD34で世話になっている工藤氏からは、このケーブル以外使うなとの指示があってね・・・」Paoさんは数年前にそう説明した。

 MITの最初期のケーブルは、最近我が家のリスニングルームでも活躍している。肌色のような独特の色合いが特徴のケーブルである。

 リスニングルームの景色は1年前と変わりがなかったが、リスニングポイント左側の床には2台の黒く薄型のプリアンプがひっそりと置かれていた。

 その2台は、AurexのSY-Λ88UとYAMAHA C2aである。どちらもオーディオが隆盛を誇っていた1970年代から1980年代前半までの期間を代表する日本製のプリアンプである。



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