2017/11/16

4265:プリアンプ  

 その見慣れないものは銀色をしていた。比較的小ぶりな躯体である。四隅はややラウンドしていて、その素材はアルミのように思われた。

 スイッチ類はシンプルにまとまられている。左側にはセレクターのノブとSTEREROとMONOの切り替えノブが縦に並んでいる。

 真ん中にはトーンコントロールノブがあるが、その造形が変わっている。二つのノブが重なっていて下が低域、上が高域を調整する。この意匠は変わっていると感じた。

 そして右側にはボリュームノブとバランスノブが縦に並んでいた。電源スイッチはトルグスイッチになっていてその上にパイロットランプがあった。

 そのデザインはシンプルでモダンなものである。「これか・・・しかし、どこのメーカーのものだろう・・・初めて見るものだな・・・」と思いながら、ソファに座っていた。

 大川さんは珈琲を淹れて、テーブルに置いてくれた。珈琲の香りがすっと鼻孔に入り込んできた。その隣には私が国分寺の多根果実店で購入したチーズケーキが添えられた。

 「これですか・・・プリアンプ・・・初めて見るものですね・・・どこのメーカーにものですか・・・?」

 私はコーヒーカップの取っ手を人差し指と親指でつまむようにしながら訊いた。私は一口その黒い液体を口に含んだ。

 「これは是枝重治さん製作のプリアンプです。たまたま先日、オーディオショップ・グレンで見かけて、小暮さんに無理を言って自宅試聴させてもらっているんです・・・このデザイン、なかなか良いものですよね・・・」

 「この造形美はしっかりとした美意識を持った方がデザインしたものであるという感じがひしひしと伝わってきます。」大川さんはそう言って相好を崩した。

 「そうですね・・・良いデザインですね・・・なんだか、少し前のイギリス製の小型スポーツカーのような印象を受けます。手作り感が残っていて、それでいてモダンな意匠で上手く纏られている・・・」

 「私は是枝さんの製作されたパワーアンプは見たことはあるのですが、プリアンプは初めて見ました。パワーアンプもシャープでキレのあるデザインでしたが、やはり同じ方が作ったものなので、共通する意匠を感じますね・・・」

 私はチーズケーキをフォークで一切れすくいながらそう言った。そのチーズケーキは濃厚な味わいで、舌の上ですっと溶けていった。

 普段、大川さんは、COPLANDのプリアンプとパワーアンプを使われている。COPLANDのプリアンプと比べて、このプリアンプがどうなのか気になるところである。

 今日はとても珍しい経験ができそうであった。COPLANDのプリアンプと是枝さんが作製されたプリアンプとの比較試聴は、まず普通経験はできないであろう。

 この両者とても美しい。しかし、その受ける印象は全く違う。どちらもシンプルでモダンであるが、その色合いやスイッチ類の配置は全く異なっている。



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