2017/11/4

4254:ケーブルインシュレーター  

 高円寺に住む大川さんからメールがあったのは数日前のことであった。大川さんのオーディオシステムに最近とあるアイテムが加わったのである。

 それが大川さんに大きな影響を与えたようで、「ぜひともオーディオマニアの友人の方にもお知らせしたいと思いまして・・・」と私にも連絡をくれた。

 「しかし、なんというか、ちょっと変わったものですので、少し人を選ぶところがあるんです・・・」とも付け加えられていた。

 「まあ、平たく言うとケーブルインシュレーターのようなものなのですが・・・ぜひ一度聴きに来てください」とメールは締めくくられていた。

 「ケーブルインシュレーターなら幾つものメーカーからアクセサリーとして製品が出ている・・・そんなに変なものではないはず・・・」と思った。

 私もケーブルインシュレーターは、ハイエンドオーディオに嵌っていた頃に試したことがあった。それはAyreの木製のものであった。

 ケーブルインシュレーターは、床からスピーカーケーブルを浮かせ、振動による悪影響を避けるとともに、そのインシュレーター自体の持つ振動特性が音に良い効果をもたらすとされている。

 Ayreのものは1個数千円であったと記憶している。スピーカーケーブルを全て床から浮かすには当然1個では足りない。片チャンネル3個づつ合計6個使用した。購入額は数万円になった。

 そういったアクセサリーもハイエンド機器が古いヴィンテージオーディオ機器に変わっていく頃に私のリスニングルームから姿を消した。
 
 他のメーカーからも様々な素材や形状で同じようなケーブルインシュレーターが発売されていた記憶がある。その中のいくつかは現在も販売されているはずである。

 今日の午後、仕事を早目に切り上げて高円寺まで車で向かった。そして大川さんのお宅の前の私道に車を停めた。

 大川さんのリスニングルームは8畳ほど。我が家のリスニングルームとほぼ同じ広さである。リスニングルームに案内されて、リスニングポイントの美しいデンマーク製のソファに座った。

 COPLANDのパワーアンプから、Gershman Acoustics Grande Avant Gardeまでは、細いスピーカーケーブルで繋がれている。

 2本のスピーカーケーブルが二手に分かれる辺りに銀色をした物体がケーブルを束ねていた。それは私がイメージしていたケーブルインシュレーターではなかった。

 ケーブルインシュレーターは普通ケーブルを上に乗せる構造になっているが、それはケーブルを左右から押さえているというような構造をしていた。

 また複数個ではなく1個だけであった。「これです・・・」大川さんは断定的にそれを指さして言った。

 「これですか・・・ケーブルインシュレーターとは少し違いますね・・・ケーブルを束ねているような感じですね・・・」
 
 「そうなんです・・・でもこれがなんだか・・・あるとないとでは違いが出るんです・・・では、まず無い状態で聴いてみましょう・・・」そう言って、大川さんはその銀色の物体をスピーカーケーブルから取り外して、床に置いた。

 その状態で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第1楽章を聴いた。ピアノはリーリャ・ジルベルシュテイン。クラウディオ・アバド指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の演奏である。

 第1楽章を聴き終えた。そして、その銀色の物体をスピーカーケーブルを左右から挟み込むようにセットしたうえで、再度ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第1楽章を聴いた。

 「あれっ・・・随分変わりますね・・・」私は静かに言葉を漏らした。

 「音の実在感と言いますか、リアルさが出ます・・・オーディオの音から離れていって、作り物感がなくなりますね・・・」
 
 「そうなんですよ・・・私も驚きました。これはって思いまして・・・」

 「これはどこのメーカーのアクセサリーなんですか・・・?」

 「オーディオメーカーのものではないのです・・・実はこれは本来は水道に使うもので・・・家庭内の水道管やシャワーホースに結束バンドを使って取り付ける物なんです・・・」

 「えっ・・・水道ですか・・・」

 「水道管やシャワーホースに取り付けると水質が良くなるんですよ・・・」

 「本当ですか・・・それをスピーカーケーブルに使用すると・・・音に影響を与えるのですか・・・確かにちょっと不可解ですね・・・」

 その後、他のCDでも有り無し実験を行った。やはり結果は同じであった。やはり有りの方が印象が良い。

 「高いものですか・・・?」

 「いえ、それほどでもないんです・・・1万5千円ほどでした・・・高いと言えば高いのかな・・・」

 「オーディオアクセサリーとしてはそれほど高いという印象はないですね・・・」

 「まあ、そうですよね・・・」

 大川さんは、そう言って笑った。その不思議なものはインパクトがあった。大川さんに頼んで私も1個購入することにした。

 特定の通販サイトで売られているもののようであるが、月に1度くらいしか発売されないようで、しかも発売個数が少なくてすぐに売り切れになるそうである。

 その後はその銀色のケーブルインシュレーターのようなものを装着した状態で、数枚のCDを聴かせてもらった。

 日本ではほとんど無名と言っていいGrande Avant Gardeは、その提示する空間が広くそして高い。とても良いスピーカーである。

 そして、「ケーブルインシュレーター」の効果も加わって、その音色はリアルさが増したようであった。



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