2017/9/28

4217:ブーム  

 スターバックスやドトールに圧されて、昔ながらの喫茶店はその多くが青色吐息の状態である。オーナーの高齢化もあって「純喫茶」は減っている。

 しかし、最近そんな昭和の香りを色濃く残す「純喫茶」が、若い女性の間で静かなブームのようである。

 大手チェーン店のように画一化されていず、それぞれの店のオーナーの個性が色濃く反映されていて、昔懐かい雰囲気が溢れる様子に、その価値を再認識する人が増えたのであろうか。

 そんな「純喫茶ブーム」からもすっかりと取り残されたかのように、中野坂上にある喫茶店「Mimizuku」の店内はいたって静かであった。

 私が、午後7時ごろ「Mimizuku」に着いた時、店内には二人の客がいるだけであった。奥まったところにある二人掛けのテーブルに初老の男性が座っていたのと、カウンターに「ゆみちゃん」が座っていた。

 「Mimizuku」のような純喫茶で提供される軽食と言えば「スパゲティー」「ピラフ」「サンドイッチ」などが定番であるが、実際に「Mimizku」で提供されているのは「ナポリタン」と「ホットサンド」の二種類のみである。

 私は圧倒的に「ナポリタン」を頼むことが多い。カウンター席に先に座っていた「ゆみちゃん」もそうである。

 しかし、最近彼女には「ホットサンド」のブームが再来しているようであった。彼女に挨拶してカウンター席に座った。

 「またブームが来ているんです・・・ホットサンド・・・今日も、変なものを頼んでいるんですよ・・・」

 彼女は話の中でそう言った。そしてその視線は店の女主人が手にしている年季の入ったバウルーに向いていた。

 昔ながらのバウルーはちょうどコンロの火で熱せられていた。表と裏を満遍なく熱することによりその中でホットサンドはこんがりと焼き上がる。

 店のメニューである「ホットサンド」の中身はホットサンドの定番と言えるハム・アンド・チーズである。

 しかし、少し前彼女は変わり種のホットサンドに嵌ったようで、「Mimizuku」に来ても、その変わり種を自分で持参し、ホットサンドを作ってもらっていた。
 
 前のブームの時には、「肉じゃが」や「大福」といった普通ホットサンドの具材としては思い付かないものがホットサンドの中に入っていた。

 私は一度、荏原中延にあるホットサンド専門店に行ったことがある。そこには16種類ものホットサンドがあり、どれにするか悩んだ。

 その時は、「チキチキトマト」という名称で、トマト、ハーブグリルチキン、ブロッコリーとモッツァレラチーズの入ったものを選んだ。その味わいは「さすがに専門店・・・」と思えるクオリティーの高さであった。

 彼女のオリジナルと思われる「ホットサンド」が出来上がったようである。四角い状態で焼き上がったホットサンドは対角線上に半分に切り分けられた。二つの三角形になったホットサンドは白い皿に盛られて、カウンターに置かれた。



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