2017/9/11

4200:調子  

 箱根ヒルクライムの距離は13.8kmで平均勾配は7.2%である。「Mt.富士ヒルクライム」や「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」よりも距離は短いが、平均勾配はきつい。

 残り3kmあたりからアップダウンエリアに入りこむが、そこまでは延々と厳しい斜度の坂が続く。アップダウンエリアに入る前に脚を使い切ってしまうとタイムが伸びない。

 スタートゲートから見える道は真っ直ぐに上っている。その斜度は厳しい。きっと10%はあるであろう。

 私の属する「男子 50〜59歳グループ」のスタートカウントダウンが始まった。いよいよである。右足のクリートをペダルに差し込み、その時を待った。

 スタートの号砲が鳴った。先頭から順次スタートしていく。前の参加者に気をつけながらスタートした。

 スタートゲートの真下に計測ラインがあった。そこを越えた瞬間にサイコンのスタートボタンを押した。サイコンのタイマーはその数字を刻み始めた。

 不具合が生じて代理店に送ったパワーメーターは間に合わなかったので、サイコンにはパワーの数値は表示されない。

 サイコンには「心拍数」「タイム」「距離」「スピード」「ケイデンス」が表示されている。今日は心拍数にのみ注目して走る予定であった。

 前半は170〜173までの範囲でコントロールしようと心に決めていた。スタートして心拍数は順調に上がっていった。

 斜度がきついのでいつもよりも心拍数の上りが早い。私はいつも俯きがちに走る。サイコンの一つの数字にのみ視線をなるべく集める。

 そうすることによって集中力が途切れないところがあるようである。しかし、気をつけないと前を行く他の参加者に気付くのが遅れる。

 時折前を見て前方を確認しながら、走り続けた。集団はすぐにばらけ始める。なるべく左車線の真ん中あたりにコースを定めて、ほぼ一定のペースを保った。

 サイコンの心拍数は決めた数値を示し続けていた。脚の回りは悪くなかった。「出だしはまずまず・・・この調子で上りきれるであろうか・・・?」と心の中で呟いた。

 厳しい斜度の坂が続く。しかし、斜度の変化はそれほどない。斜度の変化がなければほぼ一定の負荷が体にかかる。

 サイコンに表示される走行距離は少しづつその数字を大きくしていった。唯一心拍数だけはほぼ同じ数字を維持していた。

 距離は4kmを超えた。同じペースで走っている参加者はほとんどいないが、1名だけずっと10〜20メートルぐらい前を走っている参加者がいた。

 そのゼッケン番号を覚え、時折その位置を目で確認していた。彼は「ペースメーカー」であり「即席ライバル」といったところか・・・

 そういった存在があると、心理的にたれそうになる時に気持ちを高いテンションのまま維持できることがあるのである。

 走行距離が6kmを超えた辺りから、サイコンの心拍数は「174」「175」を頻繁に表示し始めた。ペースが上がった訳ではないはずであるが、同じ5000番台のゼッケンを付けた参加者を追い抜いていくことが増えてきた。

 厳しい斜度の坂を走り続け皆スタミナが切れてきてペースが落ち始めたようである。私はほぼ同じペースで走り続けていた。

 「今日は大丈夫だ・・・このペースで走り切れる・・・」気持ちはしっかりとしていた。「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」の時とは大きく違う心理状態である。

 後半に入ってもペースは全く変わらなかった。そして、あのゼッケン番号の「彼」の背中が近づいてきた。

 「かなり疲れている・・・かわせるはず・・・」そう思い、じりじりとその右側を抜けようとした。

 私の呼吸音は大きい。きっとその音を背後にずっと感じていた「彼」は、その音がすぐ背後に近づいたのを感じたのか、ペースが上がった。

 しばし並走した。斜度が少し緩んだ。ここで「彼」は更にペースを上げて前に出た。またその背中は少し遠ざかった。

 しかし、斜度がまた厳しいものに変わると、「彼」のペースは落ち始めた。また並走状態に戻り、やがて私が前に出た。

 私が前に出る形で走っていくと「5km」と書かれた道路上の看板が目に入ってきた。ここから1kmごとにゴールまでの残り距離が書かれた看板が設置されていた。

 体は相当に疲労しているはずであるが、脚が緩む感じは全くなかった「行けそうだ・・・今日は調子が良い・・・」そう思えた。

 8月の「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」の後半では、全く感じることができなかった感覚である。



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