2017/8/9

4167:中野坂上  

 コインパーキングにVW POLOを停めて、徒歩で数分歩くと、白い外装の古い5階建てのビルがある。

 築40年以上が経過していると思われるそのビルの1階にあるのが、喫茶店「Mimizuku」である。この喫茶店もビル同様古い。

 大きな通りに面しているわけではないので、店の前はそれほど人通りがあるわけでもない。その喫茶店はひっそりと佇んでいる。

 木製の扉を開けた。扉の上部に取り付けられた鈴が乾いた音をたてた。店の内部には4人掛けのテーブルが二つと2人掛けのテーブルが一つあり、そしてカウンターには椅子が4つ並べられている。女主人が一人で切り盛りしている。

 私はいつもカウンター席に座る。カウンター席の一番奥の椅子に腰を掛けて、寡黙な女主人にナポリタンとアイスコーヒーを注文した。

 時刻は午後6時半になっていた。店内には私以外の客は1名のみであった。奥まったところにある2人掛けのテーブルに腰かけ、新聞を読んでいるその客は、白い髪を短く刈り込んだ初老の男性であった。

 「Mimizuku」が入っているビルの4階には「オーディオショップ・グレン」がある。「オーディオショップ・グレン」は、英国製のヴィンテージオーディオ機器を中心に扱っている。

 我が家のオーディオ機器の主要な製品はこの「オーディオショップ・グレン」から購入したものである。

 この店でTANNOY GRFを見かけたのは4年前のことであった。搭載されているユニットはモニターシルバーであった。

 さらにキャビネットはイギリスオリジナルであるので、その希少価値は相当高い。しかも1台でなく2台のペアであった。

 ペアと言っても、その2台は同じ時期に相前後して製造されたわけではない。TANNOY GRFにモニターシルバーが搭載されていた時代はまだモノラルの時代であるので、その当時のオーナーは1台を購入してモノラルレコードを聴いていた。

 その後ステレオ時代が到来すると、もう1台購入する必要があった。そういった事情を反映してか、その2台は明らかに製造された年が違うようで、取り付けられているエンブレムの形状が違っていた。

 この貴重なGRFを購入したのが「オーディオショップ・グレン」との付き合いはじめである。その後LEAKのPoint One StereoとTL-10、さらにはMarantzのModel7とModel2も「オーディオショップ・グレン」から購入した。

 そういった経緯で時折このビルを訪れるようになって、1階に入っているこの古い喫茶店にも時折足を運ぶようになった。

 足を運ぶ頻度は徐々に増えていった。やがて「常連」に近い存在となった。そういった「常連」は、何人かいるようであった。

 そのなかの一人が「ゆみちゃん」である。彼女は和歌山出身でこの店の近くで一人暮らしをしている。

 カウンター席で度々合うようになり、言葉を交わすようになった。平日のこの時間帯にこの店に来ると、彼女と遭遇する可能性が高かった。



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