2017/3/21

4026:ヤビツ峠  

 名古木交差点のセブンイレブンをスタートした。ここからだとヤビツ峠の頂上まで約12kmの距離がある。

 一団となって走った。先頭を引いてくれているメンバーの背中を見ながら進んで行くと、一つめの信号があった。その色は青であった。

 その信号を通過し、さらに淡々としたペースで先へ進むと、二つ目の信号が見えてきた。この交差点の左側にはサンクスがあったが、今はもうない。かってサンクスであった建物は残っていた。

 この二つ目の信号もその色は青であった。その青信号の下をくぐると同時にサイコンの小さなラップボタンを押した。

 ここからラップ計測を始めた。パワーをクランクに込めてスピードを上げた。ラップ計測区間は約10km。いつも上る峠よりも距離は長い。

 最初から無理をすると後半で脚が売り切れる。勢いだけで上り切れる距離では決してない。しかし、前半抑えすぎてしまうと、目標タイムである40分は切れない。

 そのあたりのさじ加減が難しいヒルクライムである。前半は「少々飛ばし気味かな・・・」というくらいのペースで走った。

 ラップパワーは250ワットを超えていた。平均出力250ワットで10kmのヒルクライムをこなすのは、私の実力では難しいはず。

 クランクに込めるパワーを微調整しながらヤビツ峠の前半部を走っていた。ついついサイコンが表示する数値が気になって視線を下に向けている時であった。

 私の右脇をすり抜けていった車が、対向車が来たためにスローダウンしていた。サイコンの数値に視線が向かっていた私は、その車の直前にくるまでその存在に気付かなかった。

 「うわっと・・・危ない・・・!」とかろうじて避けた。「駄目だ・・・ラップパワーばかり気にしていてもしょうがない・・・」と思い直して視線を前に向けた。

 半分くらい経過した頃合いであったであろうか、リーダーが「先に行きます・・・」とペースを上げていった。

 まだラップパワーの数値は250ワットを維持していた。「もしかして最後まで250ワットで行けるかも・・・」多少楽観的な憶測も脳内に浮かんできた。

 しかし、現実はそう甘くはなかった。6km、7kmと距離を経過していくにしたがって脚の筋肉には疲労感がずんずんと降り積もってきた。

 7kmを経過したあたりでもう一人メンバーがペースを上げて前に出ていった。その背中は徐々に小さくなっていく。

 斜度はそれほど厳しいものではないが、時折きつめの坂が出現する。ダンシングを交えながらどうにかこなしていった。

 残り2kmを切った辺りからラップパワーの数値が下がり始めた。斜度が厳しめのエリアでは出力は否応なく上がるが、斜度が緩むと250ワット以上の出力を維持することができない。

 脚の筋肉は防衛本能に従って、斜度が緩むと出力をぐっと下げたがる。気付くと200ワットを切った数値が瞬間パワーとして表示される。

 それを確認して「怠けるな・・・!」と自分を叱咤激励した。しかし、ラップパワーの数値は少しづつ下がっていく。

 その下がる数値との戦いで終盤は表情を歪めながら走った。ヤビツ峠は年に1回程度しか走らないので、コースの記憶は薄い。

 幾つかのカーブを曲がっていくと、不意にゴールが出現した。「ここか・・・」といった感じで急遽ペースを上げた。

 頂上に到達してラップボタンを押した。気になっていたラップパワーは246ワットで踏みとどまった。そしてタイムは39分3秒であった。サンクスがあった交差点からヤビツ峠の頂上までの距離は10.1kmであった。

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2017/3/20

4025:オギノパン  

 「今日はオギノパンに寄りましょう・・・」スタート前の雑談の中でそういう話になった。「オギノパン」には、私は行ったことはなかった。

 ロングライドで立ち寄るパン屋と言えば、「パン工房 シロクマ」が思い浮かぶ。白石峠に行く途中にあり、優しい味わいが嬉しい。

 到着するまで私は「オギノパン」に関して「パン工房 シロクマ」のようなパン屋を想像していた。

 道はやがて相模原市に入っていった。ヤビツ峠へのルートはいつものルートとは変えて、新たなルートを選択して走り続けた。圏央道ができたことにより新たな道も整備されたようである。

 幾つかのアップダウンを越えていった先に「オギノパン」はあった。そして、その様相は私がかってにイメージしていたものとは全く異なったものであった。

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 「オギノパン」は工場直販のパン屋さんであった。広い駐車場があるが、常に満車状態。ガードマンが車を誘導していた。

 すごい人である。ちょっとしたお祭り状態。「えっ・・・こんなに人気なの・・・それに広い・・・まるで観光スポットのよう・・・」と少々驚いた。

 三連休の中日の今日、きっと普段よりも混んでいるのであろうが、人の数がすごかった。パンの売り場は三つに分かれていた。

 「あげぱん」専門の売り場、「丹沢あんぱん」専門の売り場、そしてトレイでパンを選択する普通の売り場の三つである。どの売り場にも行列ができていた。

 「あげぱん」と「丹沢あんぱん」が有名なようである。私はいろいろ悩んだ挙句、「丹沢あんぱん」を2種類と、カツサンドさらにおやきぱんを選択した。

 これだけ食べれば、摂取カロリーは十分であろう。それぞれまずまずの美味しさ。飛び抜けて美味しいというわけではないが、なんだかほっとする味わいである。

 日差しはたっぷりと降り注いでいた。パンでお腹一杯になり、なんだか少し眠くなってきた。食べている間にも車はひっきりなしに駐車場に入ってくる。

 さらにローディーの姿も多く見かけた。サイクルラックが複数用意されていて、サイクリストにも大人気のようである。

 いつまでもここにいるとお尻から根が生えてきそうであったので、国道412号に戻った。途中で右折して県道へ入っていくとやがて宮ケ瀬湖が見えてくる。

 宮ケ瀬湖に沿うようにしてしばし走った。やがて国道246号にぶつかった。ここを右折して8km程走ると、「名古木」の交差点に達した。

 この交差点がヤビツ峠の上り口になる。その交差点にはセブンイレブンができていた。ここでコンビニ休憩をした。

 いつもはこの交差点を右折して2kmほど上った先にあるサンクスでコンビニ休憩をしたが、サンクスは潰れてしまったようである。

 ヤビツ峠のタイムアタックは、この名古木交差点からスタートするパターンと、この先には2つの信号があるので、サンクスがあった交差点からタイムアタックするパターンがある。

 サンクスがあった交差点を過ぎるともう信号はない。私は後者のパターンでタイムアタックしようと思っていた。

 その場合、タイムアタック区間の距離は約10kmである。目標タイムは40分。そしてラップパワーは240ワットを目標にしようと決めた。 

2017/3/19

4024:季節の変わり目  

 先週は寒の戻りであった。今日は天気予報では随分と暖かくなりそうである。季節の変わり目はサイクルウェア選びが難しい。
 
 「暑いかな・・・」と思いつつも、先週の寒さの記憶がまだ鮮明に残っていたので、冬用のサイクルウェアを選択した。

 朝の7時に自宅を後にして多摩湖の堤防から下る坂を走っている時には、冬用のサイクルウェアでちょうどいい感じであった。

 しかし、多摩湖サイクリングロードを走っていくと「やっぱりもう少し軽装にすべきであったか・・・」と思い始めた。

 集合場所であるバイクルプラザに到着した。今日は第三日曜日である。第三日曜日は普段よりも長い距離を走る。

 今日の目的地は予定通り「ヤビツ峠」に決まった。「ヤビツ峠」はローディーの間では有名な峠である。

 チームで行くのは年に1回程度。上り口までの距離が長いので普段でのロングではなかなか行けない。往復距離は150kmほどになる。

 今日の参加者は8名であった。そのロードバイクの内訳はRidleyが3台、ORBEAが2台、LOOK、FUJIそしてKuotaが1台づつであった。

 Ridleyの3台は全てHELIUM。2015年モデルから2017年モデルまでの3台が揃った。HELIUMはその名の通り軽量フレームでヒルクライムが得意なモデルである。

 8両編成のトレインは新小金井街道、小金井街道を通って府中競馬場まで走った。さらに多摩川に沿って走るサイクリングロードを進んだ。

 多摩川沿いのサイクリングロードは景色が広々としていて気分が良い。走りながらスマホのカメラで写真を一枚撮った。

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 撮り終えてスマホをサイクルジャージのポケットにしまおうとしたが、ウィンドブレーカーの端が引っかかってしまったようで手を放すと、スマホはポケットから飛び出てしまった。

 「ありゃ・・・」と思い、停止して道に転がったスマホを拾った。カバーをしていたので、本体には傷はつかなかった。

 「良かった・・・」カバーの角には然りとした傷がついていたが、一安心してリスタートした。しばしこのサイクリングロ―ドを走り続けた。

 サイクリングロードから離れると「野猿街道」に出た。この道は広い。ほぼまっすぐにつながっている。赤信号待ちでのストップアンドゴーを何度も繰り返しながら、この道を進んだ。

 冬用のサイクルウェアでは少々暑くなってきた。ウィンドブレーカーを脱ぎ、ネックウォーマを外し、さらに前を少し開けて風を中に通した。

 「来週からはもっと軽装にしよう・・・」そんなことを頭の中に思いながら、先を進んだ。「鑓水」の交差点が視界の先に入ってきた。

2017/3/18

4023:初ラウンド  

 3月15日で確定申告がようやく終わった。その翌日の3月16日にはゴルフの予定が入っていた。場所は東京国際ゴルフ倶楽部である。

 今年初のラウンドとなる。昨年の12月14日以来のゴルフであるので3ケ月ぶりである。その間練習場にも行っていないので、ゴルフクラブは一度も握っていない。

 確定申告業務で休みなく働いたので体は結構疲労していた。そこへもってきて3ケ月ぶりのゴルフということで、スコアの方は全く期待できない状況であった。

 午前中の天気は快晴であった。朝一のティーショットは思いのほか良かった。しかし、その後のアイアンがしっかりと当たらない。

 どうにか1番ホールはボギーであがったが、その後もアイアンがほとんど全て左に引っ掛けてしまい、さらにアプローチも距離感が合わずにダブルボギーを量産してしまった。

 2番、3番、4番と3連続ダブルボギー。「やはりだめか・・・100叩きになりそう・・・」とあきらめムードでホールを消化していった。

 5番、6番がボギーで、少し落ち着いてきたかと思ったが、7番のミドルホールでドライバーショットをOBしてしまった。このホールをトリプルボギーにしてしまった。続く8番はダブルボギーと散々であった。

 前半最後の9番ホール。距離のないミドルホールでようやくパーを奪った。しかし時遅しという感じで、前半のOUTは「50」ちょうどであった。

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 午後は雲が出てきて、太陽を遮るようになった。この時期としては暖かい日であったが、陽光がないと少し肌寒く感じた。

 INコースは、前半のOUTコースとは全く様相が違っていた。11番でパーを奪うと、14番、15番、16番と3連続でパーが来た。こんなことは滅多にないことである。

 16番を終えて、3オーバー。残り2ホールをボギーで上がれば「41」である。思わず「取らぬ狸のなんとか・・・」をしてしまった。

 17番ホールは494ヤードのロングホール。ティーショットはやや右に出たがまずまずの飛距が出た。

 セカンドショットはクリークで打った。芯はくったが、これもやや右に出た。しかし幸いにグリーンの右側にはバンカーはなく、パターでも打てるようなグリーン右脇に白いボールはあった。

 ここからパターで打った。カップまでの距離は15ヤードほどであった。このボールがするすると転がってカップの端に振れた。残念ながらカップに吸い込まれなかったが、バーディーは楽々奪えた。

 これで最終18番ホールを残して2オーバーという私としては信じがたい状況が生まれた。18番をボギーでしのげばスコアは「39」である。

 その18番ホール。かなりスコアを意識したのか、ティーショットが相当に右に出てしまった。斜面で止まり、さらに悪いことにすぐ前には低木があり、横に出すだけとなってしまった。

 続く第三打、これをグリーンオンすればツーパットでボギーでしのげる。そう思いながらアイアンを振った。

 無常にもボールはグリーンの左側に外れた。しかもボールは左足下がりの嫌な場所にあった。これは寄せるのは相当難しい。グリーンはこちら側からは下っていた。ダイレクトにグリーンにキャリーで運んでしまうと、カップのはるか向こうに行ってしまう。

 そう思って軽めに打ち出したボールは思ったよりもキャリーが出ずにグリーンエッジで止まった。ここからパターで寄せて、ダブルボギー。

 18番は滅多にない30台のスコアを意識してしてしまって自滅してしまった。しかし、後半のINコースは前半と打って変わって「40」の好スコアで上がれた。トータル「90」は3ケ月ぶりのゴルフとしてはまずまずと言えるであろう。

 ゴルフを終えて、自宅へ帰りついた。体には疲労感がずしっと覆いかぶさっていた。夕食後リスニングルームへ向かった。

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 Marantz Model7の左横には、つい最近我が家のオーディオシステムに加わったBOW TECHNOLOGIEのZZ-EIGHTが設置されている。

 そのどこかしら王冠のような優雅な形状をしたスタビライザーを外してCDをセットした。再度スタビライザーを乗せるとマグネットの力でカチッと安定する。

 そして、本体に比べややチープな作りのリモコンのPLAYボタンを押した。シベリウスのヴァイオリン協奏曲の第1楽章が流れ始めた。
 
 「オーディオショップ・グレン」でも聴いた、戸田弥生が1993年にエリザベート王妃国際音楽コンクールで第1位を受賞した際のライブ音源を収録したCDである。

 その深遠にして流麗な楽音にしばし身をゆだねていた。しかし、体の芯の奥まで達した感のある疲労感からか、10分もしないうちに私の首はゆっくりと前に垂れていき、やがて無我の領域に心地よく落ちていった。

2017/3/17

4022:260ワット  

 大垂水峠の頂上まで残り3kmほどの地点からラップ計測を始めた。和田峠のヒルクライムの時と同じように、ラップパワーを250ワット以上に保つように、サイコンにたびたび視線を移しながら走っていった。

 ただし、大垂水峠と和田峠ではその様相は大きく異なる。大垂水峠には激坂エリアは全くなくほぼ一定の斜度で淡々と上っている。

 斜度が緩い分、ほぼ同じパワーでもスピードが違う。和田峠では「駆け上る」といった表現は全く当たらないが、大垂水峠ではそれに近い感覚で走っていった。

 和田峠では重力の呪縛にとらわれ続けて苦しんだ。大垂水峠では、それを完全に打ち消すことはできないが、慣性の法則の手助けも借りて、ほぼ倍のスピードでヒルクライムを続けた。

 3kmはそれほど長い距離ではない。しかし、限界付近で走り続けていると「まだかな・・・もうそろそろかな・・・あと少しであろうか・・・」とゴールが待ち遠しい。

 ようやくゴールが見えてきた。最後はダンシングに切り替えてその丸い頂を越えた。頂から少し降りた地点で止まり脚を休ませた。

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 天気はすっかりと良くなり、気温も予報通り上がってきた。これで今日の二つのヒルクライムは終了した。

 大垂水峠の3km区間のラップパワーは260ワットであった。激坂の和田峠に比べると脚の筋肉の疲労度がひどくないので、パワーも最後まで絞り出せたようである。

 帰路は下りと平坦のみである。隊列をキープして心地よいペースで進んでいった。途中高尾山のそばを通った。

 ずいぶんとにぎわっていた。最近の高尾山人気はすごいとは聞いていたが、その人の数の多さに少々驚いた。

 パワースポットとしても有名なようで、厄除けや縁結びを願って訪れる人も多いようである。昔の寂れた感じを知っている者にとっては、隔世の感がある光景であった。

 高尾山から吹き降りてきているであろう神聖なパワーの風に押されるようにトレインは先に進んだ。

 そして往路でも走った浅川サイクリングロードに達した。今度は川の流れの通りに走っていった。

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 桜の木にはまだ花はない。もう少し経って桜の季節になったら、綺麗であろうと思いながら、サイクリングロードを抜けていった。

 多摩大橋通りに入り、最後のコンビニ休憩地点に到着した。私は今日も確定申告業務の追い込みのために事務所へ行かないといけなかったので、コンビニ休憩をパスして帰路を急いだ。

 自宅に帰り着くと手早くシャワーを浴びた。そしてあわただしく自宅を後にして車に乗り込んだ。

 自宅を後にする前、私は玄関の近くにあるリスニングルームの扉を開けた。三つ並んだヤマハのGTラックの一番左側の上段には、つい最近我が家にやってきたCDプレーヤーが置かれていた。

 電源が入っていることを示すインジケーターは赤く光っていた。「オーディオショップ・グレン」で聴いた例の3台のCDプレーヤーのうちの1台であった。その姿は場所を変えても美しく、柔らかく目に馴染んだ。

2017/3/16

4021:大垂水峠  

 Wadia23は、アメリカ製。T1i Signatureがフランス製、ZZ-EIGHTがデンマーク製であるので、「オーディオショプ・グレン」で聴いた例の3台のCDプレーヤーは、国際色豊かなラインナップであった。

 Wadia23は、パイオニア製のターンテーブル式ピックアプメカニズムを採用している。そのため、CDは普通の場合と上下逆で、印刷面を下にしてセットする。

 その音の印象は、どこかしらアメリカの西海岸の風を思わせるようなものであった。湿度は低く、暖かい。

 細かなことには拘泥せずに、つっきっていく。そんな感じであろうか・・・Wadia23に比べると他の2台は、どこかしらヨーロッパを感じさせるところがある。もう少し陰影感が暗めであった。

 和田峠の頂上で、先日「オーディオショップ・グレン」で試聴したWadia23のことをぼんやりと思いだしていた。

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 今日は和田峠を上り終えると、和田峠を神奈川県側へ下り、相模湖を横に見ながら走ってから大垂水峠を上って戻ってくるコースを選択した。

 和田峠で恒例の記念撮影を終えた。ヘルメットをかぶり、グローブを両手にはめた。サイクルラックからロードバイクを降ろし、リスタートした。

 和田峠の向こう側へ下るのはちょうど1年ぶりである。神奈川県側への下りは道が整備されていて、走りやすかった。

 下り切ってさらに走ると、相模湖が見えてきた。時間の関係で相模湖には立ち寄らずに相模湖を右側に見ながら快速ペースで走っていった。

 相模湖を通り過ぎて、しばし走ると道は徐々に上り始める。大垂水峠の斜度は緩め。道は広く走りやすい。

 上り始めてからの序盤は隊列をキープして巡航ペースで走っていった。「ワット教」の数少ない信者である私はとあるポイントが来るのを待っていた。

 頂上まで3kmほどのところに目印となる建物が、道の右側にある。そこを起点としてラップ計測をする予定であった。

 和田峠の上りで脚は疲労はしているが、大垂水峠は斜度がそれほど厳しくないので「平均ワット」を250ワット以上に保って上れるはずである。

 「和田峠も大垂水峠もどちらもラップパワー250ワット」を今日の目的とした。その目印としていた店の建物が道の右側に見えてきた。

 「これだ・・・この建物だ・・・ここから頂上までちょうど3km・・・」見覚えのある建物を確認して、私はサイコンのラップボタンを押した。そして、クランクを回すペースを上げた。

2017/3/15

4020:20:03  

 和田峠の序盤は決して激坂ではない。メンバーの多くはこのエリアは自重して、その後に続く厳しい斜度に備えて脚を温存する。

 私はラップパワーの数値をいち早く250ワット以上に持っていこうと、序盤から強めの負荷を脚にかけ続けた。

 サイコンのラップパワーの数値は順調に上がっていった。そして、和田峠の斜度もぐっと上がってきた。和田峠は一旦斜度が上がると、その後は緩むエリアがほとんどない。

 激坂を上る時にはなるべく峠道のはるか先を見ないようにする。ロードバイクの前輪の手前2,3メートルのあたりのところに視線を集中させるのである。

 そうするととりあえず心が折れない。体に大きな負荷をかけ続けるヒルクライムは、精神的な要素によっても結果が大きく異なってくる。

 もちろん筋力や心肺機能の強さが一番大切な要素であるが、メンタルの強さもかなり要求される。張り詰めた心の糸を緩めずに一定以上のテンションで保ち続けないと、辛さに負けてずるずるとペースが落ちていってしまう。

 私が信奉する「ワット教」では、その心の糸のテンションを保つ手法として「平均ワット数」を用いる。

 和田峠を上っていく際の目標平均ワット数は250であった。サイコンに表示されるラップパワーには、計測開始ポイントから現時点までの平均ワット数が表示される。

 その数値を250ワット以上に最後まで保ち続けることが今日の最重要課題である。和田峠の激坂はこれでもか、というくらいに連綿と続く。

 脚の力だけでは推進力がたりない場合には腕でハンドルを引き寄せる力も利用して厳しい斜度の坂を上り続けた。

 そして、15%を超えるような斜度になってくると、多少苦し紛れ気味であるが、ダンシングでやり過ごしていった。

 斜度が厳しくなると瞬間的なパワーは300ワットをゆうに超える。その斜度が少し緩むとパワー数値はすとんと落ちる。

 パワーが落ちると、クランクを回すペースをグイグイと上げた。「もっとパワーを・・・」ワット教の「マントラ」を唱えながら厳しい行程を進んだ。

 和田峠の峠道は何度も大きく曲がる。そのカーブは大半が圧倒的な斜度を有している。タイムを少しでも短縮させたいならばインコースを通るべきであるが、その厳しい斜度に脚の筋肉が疲弊しきってしまいそうで、思わずアウトコースを通ってしまう。
 
 後半に入ってくるとさすがに脚に踏ん張りが利かなくなってくる。先頭を行くリーダーの背中は視界から消えていた。
 
 その後に続く2名のメンバーの背中は辛うじて視界の中に納まっていた。追いつくことは現実味が薄い願望であったので、取り敢えずサイコンのラップパワーの数値のみに集中して気持ちを保った。

 和田峠は尻尾まであんこが詰まったたい焼きのように終盤まで厳しい斜度が続く。ゴール直前のみ斜度が緩む。

 そこまではひたすら我慢して上った。そして、その最後のエリアに差し掛かり、ダンシングに切り替えてスパート体勢をとった。

 しかし、疲弊した脚の筋肉からは思ったような力強い推進力は絞り出せなかった。ゴールしてサイコンのラップボタンを押した。

 タイムは「20:03」であった。平均ワット数は251ワット。平均ワット数は目標を達成したが、2度目の20分切りにはもう少しで手が届かなかった。

 峠の茶屋の前にあるサイクルラックにKuota Khanを掛けて、座った。激坂を上り切るのは辛い。しかし、上り切るとその辛さの反動であろうか、一種の爽快感が全身を駆け巡る。

 先程目の網膜にしっかりと焼き付けられた数字が再度脳内のスクリーンに投影された。「20:03」・・・「あと3秒か・・・ラストスパートでもっと針先が振り切れるまでに走るべきであったか・・・あの後半の激坂エリアでもう一歩踏ん張ってペースを上げるべきであったか・・・平均ワット数があと1ワット高ければ、20分を切れたのか・・・」そんなことをうつらうつらと思った。

 そして、その網膜に焼き付いたかのような数字からの連想であろうか「Wadia23」のことが思い起こされた。

 水曜日の夜「オーディオショプ・グレン」で最後に聴いたCDプレーヤーである。とてもコンパクトな形状のCDプレーヤーである。

 他の2台がトップローディング方式であったのに対してWadia23はオーソドックスなトレイ式であった。

 トレイ、ボタン、インジケーター、ディスプレイなどの配置が微妙なバランスで構成されている。その微妙さ加減がとても良い。

 ぱっと見は、ばらばらでバランスが悪いように見える。しかし、よく見るとバランスが取れている。その各要素がお互いに引っ張り合うようなテンションが見る者を惹きつける。Wadiaの一連のCDプレーヤのなかでも、このWadia23は特異な存在感を有してる。

2017/3/14

4019:ワット教  

 トレインは浅川サイクリングロードに入り、浅川の流れを遡るようにして走っていった。陽はうっすらと出てきた。気温も少しは上がってきてようであるが、体はそれほど暖まらなかった。

 浅川サイクリングロードは幾つかの橋の下を通り抜けながら続いている。所々で護岸工事か何かをしているようで川の水が途切れている所があった。

 大垂水峠に向かう場合には浅川サイクリングロードの終点まで走る。しかし、目的地は和田峠となったので、陣馬街道と交差する地点で浅川サイクリングロードから離れた。

 陣馬街道に入るとしばらくは市街地を走る。先へ向かうに従って風景は徐々に変わっていく。恩多あたりから道の周囲は相当鄙びてくる。

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 途中、圏央道の下をくぐり、さらに「夕やけ小やけふれあいの里」という名前の八王子市が運営している道の駅でもありキャンプ場でもある広い施設が左手に見えてくる。

 この施設をやり過ごしてだらだらと続く緩やかな上り基調の道を進むと、道はYの字に枝分かれしている。

 左斜めに向かって小さな橋を渡った。実にいい感じの里山的な風景のなかをトレインは順調に進んだ。

 ゆるやかであるが上り基調なのでペースに気をつけないと激坂を前に脚が消耗してしまう。この道は細い道であるが、バスが通る。
 
 バスの終着地点が和田峠の上り口にある。私たちが和田峠の上り口に到着した時、そのバス停にはちょうどバスが停まっていた。

 トレッキング姿の多くの人がバスから降りていた。このバス停の脇には公衆トイレがある。トイレを済ませて、小休止した。

 和田峠の上りは3.5kmほど。けっして長くはないが、その斜度は「これぞ激坂!」と評したくなるほどに厳しい。

 私が「ワット教」に入信したのは数ケ月前のことである。それ以来、その教義に従ってヒルクライムを行う。

 まずはヒルクライムを開始する前に目標とする「平均ワット数」を心に決める。スタートした後は、周囲の様子は気にせずに、サイコンに表示される「ワット」と対話し続ける。

 そして「もっとワットを・・・」と心の中で何度も呟きながら厳しい「修行」を黙々とこなしていくのである。

 今日も「ワット教」の教義に従って、難敵「和田峠」に挑む予定である。目標の平均ワット数は250ワット。激坂は大の苦手科目であるが、最後までたれずに走り切るつもりであった。

 いよいよスタートとなった。バス停の前を通り過ぎて、道路標識に従って右に折れるとすぐに小さな橋がある。ここがタイム計測開始ポイントである。

 この小さな橋から頂上までいつもタイム計測をする。目標タイムは20分。ただし、何度もチャレンジしているが、20分を切れたのは一度だけである。2度目の20分切りを目指してサイコンのラップボタンを押した。

2017/3/13

4018:グロスブラック  

 玉川上水に沿って続く道をしばらく西に向かって走っていった。太陽は雲間に隠れがちで顔を出さなかったので、肌寒さはあまり変わらず、体はなかなか暖まらなかった。

 天王橋の手前で左折して八王子方面へ南下していった。しばらく進むと多摩大橋が見えてくる。この橋は多摩川にかかるその名の通り大きな橋である。

 多摩大橋を渡って2度ほど緩やかな坂を上り切ったところにあるセブンイレブンでコンビニ休憩をした。

 ここで、1名のメンバーと合流した。セブンイレブンの店舗の前には9台のロードバイクがずらっと並んだ。

 補給食には、「濃厚チーズバーガー」を選択した。これは見るからにカロリーが高そうである。普段食べたなら健康に悪そうな印象を受けるが、この先ロードバイクでのヒルクライムをこなし相当量のカロリーを消費する予定なので、大丈夫であろう。

 これとホットコーヒーを胃袋に収めたが、その味わいは確かに濃厚であった。コンビニのバーガーはレンジでチンする。

 レンジでチンするとパンがしなっとなる。その食感がダメな人にとってはコンビニバーガーは「ありえない・・・!」となるが、そのしなっとしたパンの食感が受け入れられるい人にとっては「十分にあり得る・・・」となる。

 私の場合「まあ、パンは焼いたほうが美味しいはずであるが、これはこれでありかな・・・」といった感想である。

 補給食で胃袋を満たし、さらにKuota Khanに装着されているボトルから水分を補給した。ボトルを戻して、Kuota Khanを改めて眺めた。

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 グロスブラックの塗装は滑らかに光を反射させていた。派手な色合いではないが、どこかしら内に秘めた気合のようなものを感じさせる。

 そのグロスブラックの色合いを眺めていると、水曜日の夜に「オーディオショップ・グレン」で聴き比べた3台のCDプレーヤーの1台であるBOW TECHNOLOGIEのZZ-EIGHTの姿が思い浮かんできた。

 ZZ-EIGHTもKuota Khanと同じような艶やかな黒を身にまとっていた。そしてその独自の造形美からは、孤高の存在感が鮮やかに放たれていた。

 私は個人的には、このZZ-EIGHTを世界で最も美しいCDプレーヤーに推薦したいと思っている。もちろんデザインは個人的な好みの問題であり、その良さが全く分からない人がいてもおかしくはないが・・・

 ボウ・クリステンセンはこのZZ-EIGHT以外にも数台CDプレーヤーのデザインをしている。どれもセンスの良さを感じさせる製品となっている。

 その中でもこのZZ-EIGHTはずば抜けて素晴らしいデザインである。ZZ-EIGHTは、彼のその芸術的なセンスがピークを迎えた時期の作品であるのであろう。

 そして、聴かせてもらったその音質もその外観同様に滑らかな黒を思わせるものであった。オーディオ的な高性能感はT1i Signatureのほうが上である。ハイエンド系の音が好きな人にとってはZZ-EIGHTは、それほど魅力的には思えないかもしれない。

 しかし、その滑らかで硬質感の少ない音質は特別な魅力を持っている。「これは良い・・・滑らかである・・・」シベリウス、続いてマーラーを聴きながらそう思った。

 Kuota Khanも軽量で硬質なカーボンを素材として使用しているが、うまい具合にバランスをとっていて、体に堪えるような硬さをあまり感じさせない。

 快適性を最重要課題として開発されたモデルではないので、それなりの硬さはあるのであるが、不快感を感じさせないように上手くいなしている。

 Kuota KhanとZZ-EIGHTはその艶やかな黒の色合いだけでなく、「走り」と「音」という全く別の分野ではあるが、その「味わい」という点でも共通点があるような気がした。

 皆が補給食を食べ終えて、コンビニ休憩を切り上げることになった。朝出発する段階では決まっていなかった「大垂水峠」を越えるのか「和田峠」を越えるのかという選択については、話し合いの結果、「和田峠」が選択された。

 「和田峠」はチームで行く峠の中でも1,2位を争う激坂である。今日は刺激的なヒルクライムになりそうである。

 9両編成となったトレインは緩やかに走り出し、和田峠を目指した。まずは甲州街道まで達してから右折して大和田橋を渡った。橋を渡り終えるとすぐに左折して浅川沿いに続く浅川サイクリングロードに入った。

2017/3/12

4017:寒の戻り  

 ベッドから脱け出した時に、先週とは違う空気感を感じた。先週は春を思わせるような柔らかな空気であったが、今日は冬に戻ったような厳しさを感じた。

 冬から春へ向かうこの時期は、「三寒四温」である。今日は「三寒」の方に当たったようである。サイクルウェアに手早く着替えて、出発の準備をした。

 玄関でサイクルシューズに履き替える際に、シューズカバーをどうするか少し迷った。先週は装着しなかった。

 「今日はかなり寒そうだ・・・」と思い、装着することにした。それは結果的に正解であったようである。

 朝の空気は真冬の頃程には厳しくはないが、充分に「冬」の風格であった。いつも通り、多摩湖サイクリングロードを走っていき、集合場所であるバイクルプラザを目指した。

 多摩湖サイクリングロードはほぼまっすぐ続いている。ロードバイクで平たん路を淡々と走っていると、頭の中にはいろんな雑念やイメージが浮かんでは消えていく。

 水曜日の夜のことがふと浮かんできた。「オーディオショップ・グレン」で3台のCDプレーヤーの聴き比べを行った時のことである。

 それらの3台はとある方が長く使われいたもので、いずれも素晴らしいデザインのCDプレーヤーであった。

 最初に聴かせてもらったのは、METRONOME TECHNOLOGIEのT1i Signatureであった。ハイエンド系の高性能なCDプレーヤーであることは、その外観からもひしひしと感じられていたが、その音も外観同様ハイエンド系の高性能なものであった。

 ロードバイクもレーシーな性能を追求すると、パリッと乾いた硬質な走り味になる。クランクに込めたパワーを一滴も漏らさずに推進力に変えるような硬派なモデルといった印象を、T1i Signatureからは感じた。

 「これは相当に潜在能力の高いモデルである・・・どちらかというとハイエンド系のシステムでその本領を発揮するはず・・・」そんなことを思った。

 多摩湖サイクリングロードは最近綺麗に整備された。その整備された道の左脇に猫の姿が見えた。急遽、私の視線はその猫の挙動に集中した。

 私は一度「猫落車」をしたことがある。単独走で時坂峠に向かっていた時であった。橘橋のT字路交差点を右折して、鄙びた小さな集落を通り過ぎようとした時に、道路の右を歩いていた猫が急に方向を変えて左斜めに猛ダッシュした。

 そしてものの見事なタイミングで私のロードバイクの前輪の目の前に来た。避ける間もなく私は猫と接触して落車した。猫は「ギャ〜!」と悲鳴を上げて猛スピードで逃げていった。私はなすすべもなくアスファルトの上に転がった。

 「なんだよ・・・」と小さな声で悪態をついて、サイクウェアをチェックすると2箇所ほど破れていた。

 そんな経験があったので、道の脇の猫が気になった。少し大回りしてその猫の前を通り過ぎた。猫は目でロードバイクの動きを追うだけで微動だにしなかった。

 集合場所であるバイクルプラザに着いた。今日の参加者は8名であった。皆「寒いですね・・・」「寒の戻りですね・・・」と話していた。

 今日の目的地は「相模湖」に決まった。相模湖に行く場合、普段は大垂水峠を越えていく。しかし出発前に雑談していると「和田峠」の話が出た。

 「和田峠、しばらく行っていないね・・・」という話になった。大垂水峠と和田峠ではその様相はかなり違う。大垂水峠はやや緩めの斜度である。一方和田峠は激坂系の峠である。

 どちらも途中まではほぼ同じコースを走る。多摩大橋を越えたところのセブンイレブンでコンビニ休憩をした際にどちらの峠にするか決めることになった。

 そして8台のロードバイクは走り出した。8台の内訳はRidleyが3台、ORBEAが2台、BH、FUJI、そしてKuotaが1台づつであった。



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