2016/6/30

3761:半地下  

 家に帰りついたのは、2時40分であった。「時間がないな・・・急がなければ・・・」そう思いながら、Kuota Khanをサイクルラックに掛けた。

 急いでシャワーを浴びて汗を流し去った。ほぼ3時ちょうどにMercedes-Benz E350の硬めのシートに身を任せた。

 疲れた体にシートの硬さが心地よかった。フットブレーキを右足で踏んで、エンジンボタンを押した。勢いよく3Lのディーゼルエンジンは目覚めた。

 ハンドルの右側にあるATコラムを操作してDレンジに入れ、サイドブレーキを解除した。右足をブレーキからアクセルにそっと移すと車はゆっくりと走り始めた。

 「ペダルを漕がなくても前に進むってやっぱりいいな・・・こりゃ楽だ・・・」ロングライドの後に車に乗ると、そんな当たり前のことが妙に嬉しかったりする。

 車で1時間ほど走ると目的地であるAさんのお宅に着く予定である。Aさんのリスニングルームには月に1回お邪魔する。フランスや英国から定期的に送られてくるレコードの中から数枚を聴かせてもらうのである。

 青梅街道を延々と走り、杉並区に入ったある地点で脇道に入り込んだ。杉並区は幹線道路から一本入ると途端に道幅が狭くなる。一方通行の指定がある所はまだいいが、そうでない所では対向車が来ると、すれ違うのに一苦労する。

 大概は対向車が来ることなくAさんのお宅に辿り着くが、今日は運悪く真ん中あたりで対向車が来た。

 「どうするか・・・どう考えてもこのままではすれ違えない・・・下がるしかないか・・・」と判断して少しバックし始めた。

 すると対向車はある御宅の駐車スペースに入り込み始めた。「良かった・・・あそこの家の車だったのか・・・」と思い、車が駐車スペースに納まったのを確認して、前進した。

 Aさんのお宅に辿り着いた。どん詰まりの私道に車を止めてから降りた。Aさんのお宅はコンクリート打ちっぱなしの堅牢な建物である。

 チャイムを鳴らし、いつも通りの挨拶をしてから、半地下になっているリスニングルームに向かう階段を降りていった。そして、その扉を開けた。



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