2016/6/14

3745:ゴール  

 「山岳スプリント区間」に入ると、チームメンバーの背中はすぐ近くにあった。19kmを超えて20km地点が近づいてきた。

 20km地点の目標タイムは1時間13分。しばし、チームメンバーの後ろで控えていて、意を決してチームメンバーの前に出た。

 「○○さん・・・」その右脇を抜けていく際にチームメンバーに声をかけた。激しく余裕のない呼吸の隙間から言葉が漏れ出る感じであったので、完全にかすれ声となってしまった。

 その後は私が前に出て、そのすぐ後ろをチームメンバーが走るという形となって、「山岳スプリント区間」を上り切った。

 20Km地点を通過した際のサイコンのタイムは「1:11:50」であった。目標タイムよりも1分以上良いタイムであった。

 ここから長い平坦区間が続く。「山岳スプリント区間」で相当に足が疲弊していたが、歯を食いしばりながら、スピードに乗せていった。

 30km/h、35km/h、40km/hと徐々にスピードに乗っていった。しかし、それ以上スピードは出なかった。脚が限界点に達したようであった。

 すると私の右脇を「超高速トレイン」が走り抜けていった。45km/h以上のスピードが出ている。チームメンバーはそのトレインに乗った。

 「taoさん、乗りますよ・・・!行きましょう・・・!」と声をかけてくれた。すっと右脇を抜けていくトレインの最後尾、チームメンバーのすぐ後ろに乗り込もうとした。

 しかし、私の脚は40km/h以上のスピードで走る余力がもう残っていなかった。目の前で「列車」の扉は閉まった。

 「超高速トレイン」はチームメンバーとともにあっという間に小さくなっていった。一旦は追いついたチームメンバーの背中はまた100mほど遠くへ去ってしまった。

 平坦区間が終わると道は再び上昇に転じる。その上り道の先には「FINISH」と書かれた横断幕が視界に入ってくる。

 その横断幕を睨み付けるように見ながらダンシングでクランクを回した。脚は既に限界点を超えていた。鉛のように重い脚を回しているのは「気持ち」であったのであろうか。

 とにかくクランクを回し続けた。「FINISH」と書かれた横断幕は徐々に近づいてきた。そしてその下を潜り抜けた。

 緑色をした計測ラインを越えるとセンサーが「ピッ・・・」と小さな音を立てた。その音とほぼ同時にサイコンのSTOPボタンを押した。

 サイコンに表示されたタイムは「1:23:43」であった。ゴールラインを越えて少し行った先で先にゴールしていたチームメンバーは待っていてくれていた。

 チームメンバーとハイタッチして、互いの健闘を称えあった。最終盤で脚はほぼ売り切れたが、今日はいい走りが出来た。

 それは前を行くチームメンバーのチームジャージが視界の中にあったことが大きい。ヒルクライムは自分の弱い心との闘いに打ち勝っていかないといけない。

 視界の前にチームメンバーのチームジャージがあり続けたことは、折れそうになる心を支える確かな支柱であった。

 その後、預けていたリュックを受け取りにしばしロードバイクを押しながら歩いた。普段は駐車場となっている広い場所に向かった。5合目から見える富士山は穏やかな表情をしていた。

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