2015/12/15

3379:難敵  

 すっかりと山間の道となった陣馬街道を進んでいくと、やがて青地に白い矢印で「左に行くと陣馬高原」という表示が、道の右上に見えてくる。

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 これが目印で、ここをその矢印の指示通りに左に入っていった。そこからしばし続く緩やかな上り道をえっちらこっちらペダルを漕いで進んでいった。

 以前真冬の時期に来た時には、この道は霜が降りて真っ白であった。今日は12月としては比較的暖かいので、アスファルトはその本来の色を提示してくれていた。

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 川沿いに進むその道は、何度か左右にうねりながら「和田峠」の上り口に繋がっている。和田峠の上り口にはバス停がある。私のKuota Khanが上り口に着いた時、1台のバスがバス停に到着したばかりのところであった。

 バスからはトレッキング姿の中高年の方々が数名降りてきた。皆、きちんとした服装と装備を備えていて、スキーのスティックのようなものを両手に持っている人もいた。

 上り口には公衆トイレがある。時間を短縮するため、ここまでノンストップで走ってきたので、私は急いでトイレに向かった。

 トイレを済ませすっきりとしたところで、いよいよ「難敵」に立ち向かうこととなった。和田峠は上り口から頂上まで3.5kmほど・・・上る距離はたいしたことはないのであるが、その斜度が極めて厳しい。一番きついところではもしかしたら20%に達するのではないかといぶかしく思うほど急な坂が待ち構えている。

 上り口には鄙びた感じの小さな食料品店があり、「右に行け・・・和田峠はその先にある・・・」と読み取れるような標識が道の右上に掲げられていた。

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 覚悟を決めて上り始めた。一人での行軍である。チームで上るのとはまた別の感覚である。孤独な行軍は始まった。

 導入部は比較的穏やかである。上りに入ると道は全体的に濡れていた。少し前に雨が降ったのであろうか・・・

 やがて、斜度は「これぞ和田峠・・・」といったものに変わってくる。時折ダンシングでないと、とても上がっていけないような斜度の坂が出現する。斜度にそうように、心拍数は上がり、呼吸も激しいものに変わっていった。

 路面が濡れている時にとても嫌なのが、排水溝の網状の蓋である。道路を真一文字に横たわるその蓋の上を通行するときは、ダンシングでトルクをかけてはいけない。後輪のタイヤがするっと空転して、肝を冷やす。

 和田峠は中盤以降、厳しい斜度で波状攻撃をしかけてくる。少し緩んだかなと見せかけて、すぐに「残念でした・・・!」とあっかんべーをするかのように、厳しい斜度が復活する。「またか・・・くそっ・・・上りますよ・・・劇坂を・・・」とひとりぶつぶつ言いながら腰を上げてダンシングする。

 トレッキングをしている中高年の方々は、激しい呼吸音を発しながら、その脇を通り抜けていく私を見て、少々呆れ顔であった。

 「ここを自転車で上っていく人がいるのね・・・まったく物好き・・・!」といった、感嘆とも唖然とも言えない表情で、ゆっくりと上っていく私を見送った。

 単独ヒルクライムは孤独である。この劇坂に一人で立ち向かわないといけない。「少し緩めようよ・・・バトルしているわけでもないんだし・・・」とささやく自分に、もう一人の自分が「これはトレーニング・・・苦しくないとトレーニングにはならないでしょう・・・緩めちゃだめ!」と嗜める。そんな二人の自分の葛藤の狭間で重いクランクをまわし続けた。

 ヘアピンカーブを曲がるとき、その内側は距離が短いが斜度がきつい。そして、外側は距離が長くなるが、斜度は緩む。和田峠では迷うことなく外側のコースを選択する。

 チームで上るときには先行するメンバーの背中が、脚を緩めてしまおうとする弱い心を引き上げてくれるのであるが、今日はそれがない。自分自身の心の糸の張りだけを頼りに、脚を緩めることなくどうにか最後まで上りきった。

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