2015/12/11

3375:エンジンマウント  

 ディーゼルエンジンの長所は、湧き上がるトルクと燃費の良さであろう。C220dのカタログ上の燃費も20km/lを超える。

 さらに軽油は安い。現在、セルフ給油の店であれば90円代半ばといったところか。走行距離が長い人にとってはバカにならない差となる可能性がある。

 C220dには、最近の車には必要条件となっている様々な自動安全装備もほぼすべて揃っているし、燃費を改善するアイドリングストップももちろん付いている。

 信号待ちなどで車が停まると、C220dのエンジンはすっと止まる。その挙動は自然で違和感はない。右足をブレーキからアクセルに移すと、ブルルと軽く身を震わせてエンジンが再始動・・・私のE350は付いていない機能であるので、最初のうちは慣れなかったが、これで消費するガソリンが減ると思えばちょっと得したような気にもなれた。

 少し気になったのは、段差などを乗り越えた時の振動・・・ちょっと角がある堅さを感じた。この車は「アバンギャルド」という仕様。足回りがスポーティーに仕上げられているのかもしれない。

 E350の定期点検は夕方には終わったようである。私の携帯に連絡が入った。仕事を終えてから、ディーラーに向かった。

 お借りしていたC220dをディーラーの駐車場に滑りこませて、バックで停めた。駐車場の脇には私のE350が静かに佇んでいるのが見えた。

 ディーラーの建物に入っていくと、担当した整備員がいろいろと説明してくれた。その説明の中で気になることがあった。

 それはエンジンマウントの交換を検討すべきであるという点であった。ディーゼルエンジンは振動が比較的大きい。絶えず揺さぶられるエンジンを支えているのが、エンジンマウントというゴムのパーツである。

 走行距離は100,000kmを超えている。振動や熱のストレスを受け続けたエンジンマウントは疲弊して、その本来の性能を発揮できなくなっている可能性が高いようだ。 確かに、車内に侵入してくる振動や音は最近大きくなってきたように感じていた。

 「エンジンマウントですか・・・それで、交換にはどのくらいの費用が掛かるのですか・・・?」

 と恐る恐る訊くと、その担当者は「10万円くらいです・・・」とさらっと答えた。「10万円か・・・」と心の中でやや暗いトーンでを呟いた。

 「来年には車を買い替えたいと思っているところだけど・・・どうするか・・・」しばし、考えてから「では、頼む時はまた連絡します。」と一言言ってからディーラーを後にした。

 E350に乗り込んで、フットブレーキを右足で踏んでからエンジンボタンを押した。ブルッと大きめの振動を発してエンジンが始動した。その音と振動は、先ほどまで乗っていたC220dよりも明らかに大きなものであった。

2015/12/10

3374:C220d  

 Mercedes-Benz E350 BLUETECの走行距離は100,000kmを超えて103,000km程になった。少し前から「メンテナンスを受けてください」との警告サインが出ていたので、ディーラーへ持っていった。

 定期的なメンテナンスは半日ほどかかる。その間、代車としてディーラーが用意してくれていたのが、C220dである。

 Cクラスのラインナップに最近新たに加わったC220dは、直列4気筒2.2リッターのクリーンディーゼルエンジンを搭載する。

 フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンが排出ガス規制をクリアする時に不正なソフトウェアを使ったとされる問題で、ディーゼルエンジンにとっては現在少し逆風が吹いている。

 しかし、Mercedes-Benzはそんなことを気にする風ではなく、クリーンディーゼルエンジンを搭載さたモデルを拡充している。

 私のE350 BLUETECもクリーンディーゼルジンである。排気量は3.Oリッター。5年前のモデルであるので、最新のクリーンディーゼルエンジンの出来は少々気になるところである。

 C220dのディーゼルエンジンは2基のターボチャージャーを装着していて、排気量こそ小さいが、幅広い回転域で十分な動力性能を確保するようである。

 最新式のディーゼルエンジンも、有害な窒素酸化物の低減には尿素を使う方式である。これは私のE350に搭載されているエンジンと同じ仕組みである。

 ただし、私のE350では荷室床下に設置されていた尿素のタンクに荷室の床を上げて注入口から注入していたが、最新式はスマートになった。C220dでは軽油の給油口の左脇に、尿素水溶液の注入口が設けられていた。

 さて、気になるのは最新式のディーゼルエンジンの音と振動である。私のE350は結構はっきりとディーゼルエンジンであるということを主張する音と振動がする。

 特に走行距離が伸びていくに従って、エンジンを支える振動吸収機構が少しくたびれてきているのであろう、その音と振動の気になり具合が、最近上昇していた。

 C220dのエンジンボタンを押した。耳を澄ました。エンジン音は紛れもないディーゼルエンジンのそれであった。

 ただし、E350に比べると明らかに静かである。振動も少ない。まあ、ガソリンエンジン並みとはいかないが・・・

 ゴロゴロとした乾いた独特の目の粗い音もしっかりと聞こえる。「やっぱりな・・・最新式と言えどもディーゼルはディーゼル。音の質感で言えば一歩劣るのは、間違いない・・・」と思った。

 アクセルを軽く踏んで走り出した。走行を始めると、ガソリンエンジンとの差はすっと縮まっていく。速度が時速50km程度になると、タイヤノイズも間に割り込んでくるので、エンジンノイズはほとんど気にならなくなる。そうなると、ガソリンエンジンとの差は感じなくなる。

 C220dのATは最新式の9速である。9速らしくキメ細かな変速が行われるので、エンジン回転数を示す針は躾良く低い位置で維持される。

 回転数は上がらなくても、ディーゼルエンジンらしいたくましい駆動力はしっかりと感じられる。アクセルをぐっと踏み込めば、回転数を示す針は「よっこらしょ!」という感じで上がり、トルクもぐわんと上がる。この湧き上がるトルク感はさすがにディーゼルである。

2015/12/9

3373:とうげ  

 東峠を下りきって県道をしばし走ると、山王峠の上り口に達する。「間に挟まれ・・・次男・・・次男・・・」の出番である。

 東峠でのフルバトル走行の疲れがほとんど取れていない状態であったが、次男の山王峠にも、がぶりと噛みつくことにした。

 緩やかに上り始め、やがて斜度が峠道としての本領を発揮するあたりからクランクを回すペースを上げ始めた。しかし、脚は重い。なかなかペースを上げられずにいた。

 すると2台のORBEA ORCA OMRが連なって先頭に出た。2台は共に最新の2015年モデル。1台はブラックもう1台はカーボンレッド。当然、今年になってから新調されたフレームである。

 そのきらびやかで高雅な2台が連なって先頭を行っていた。その後ろ姿を眺めながら、2015年になって私も新調したKuota Khanに鞭を入れたが、肝心の2本の脚には敏感に反応する気配はなかった。

 「やはり、私もORBEA ORCA OMRのホワイトレッドでも発注すべきであったか・・・」と後悔したが、後悔先に立たずである。というか、ORCA OMRのホワイトレッドを選択したからといって、先頭の2台に追い付けるわけではないのであるが・・・

 なかなか先を行く2台のORCA OMRとの差を詰められずにいた。山王峠は最後まで斜度が緩まない。脚に余裕がないまま、ゴールが間近に迫ってきた。

 すると、すぐ背後から妙な気配が・・・後方にいたメンバーがスパートして私の横に並んだ。「まずい・・・東峠の二の舞を踏んでしまう・・・」と咄嗟に思って、素早く対応した。腰を上げ、私もスパートした。どうにかこうにか今回は抜かれずに済んだ。

 「ゴール直前で背後からスパートするのは止めてほしいものだ・・・」と、常日頃の自分の行動をすっかりと棚に上げて、そう思った。

 次男は次男なりにしっかりとした食べ応えと歯応えを有していた。東峠、山王峠と越えてきた。疲労度は「団子」二つ分、しっかりと脚に蓄積された。しかし、串にはもう一つ「団子」が残っている。なんせ、三兄弟である。

 「♪ 串に刺さって だんご だんご・・・3つならんんで だんご だんご・・・汗水たらして とうげ とうげ・・・とうげ三兄弟・・・♪」と鼻歌を歌ってしばし平坦路を走っていると、やがて三男の「笹仁田峠」が近づいてきた。
 
 三男は「峠」と名がつくわりには、なよっとしている。「丘陵」といった表現の方が適正と思われる。しかし、ゆっくりと越える分には「丘陵」であるが、高速でクランクを回して越える分には、やはり「峠」である。

 緩やかな上りが始まった。それが真っ直ぐに続いている。ペースも緩やかに上がっていった。2名のメンバーが先頭を引いてくれていた。

 私はそのすぐ後ろの休める3番手ポジションに、ちゃっかりと居座らせてもらった。3台はぴたりと連結して走った。

 後方から猛烈な勢いでアタックを仕掛けてくるメンバーが来るのかと予想していたが、その気配がないので、左手にゴルフ練習場が見えてきたポイントで、Kuota Khanに2度3度と鞭を入れた。

 緩い斜度が幸いして、Kuota Khanはぐんとスピードを増した。引いてくれていた2台を抜き去って、猛烈に逃げた。

 最後で斜度がすっと上がる。その先がゴールである。ここから腰を上げてスパート。込められるだけのエネルギーをクランクに伝えて、坂を駆け上っていった。

 頂上に達して、重力の呪詛から逃れた瞬間、三つ目の「団子」は胃の中に落ちていった。そして私も反転した重力の力に任せて落ちていった。

 「とうげ とうげ とうげ とうげ・・・とうげ三兄弟 とうげ三兄弟 とうげ三兄弟・・・とうげ!」と力無く、あの「名曲」の最後の部分を口ずさみながら・・・

2015/12/8

3372:三兄弟  

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 顔振峠からの眺望は素晴らしいものであった。山並みは伸びやかに水平に続き、色合いは青く一種幻想的であった。

 顔振峠で恒例の記念撮影を終えて、吾野方面へ下っていった。下り終えて少し走って、西武池袋線の「東吾野駅」に立ち寄った。

 東吾野駅に立ち寄った際、ちょうど特急列車のレッドアロー号が通り過ぎていった。グレーの車体に赤いラインが細く入った列車は精悍な姿であった。

 駅前にあるトイレでトイレ休憩を済ませた。これから、三つの峠を越える。それぞれはそれほどの距離を上る峠ではないが、連続するバトルエリアとなる。どれも棄権せずにバトルに参加すると、かなりの負荷が脚と体にかかる。

 「帰路の峠三兄弟」とでも命名したいような、三つの連続する峠は、負荷の高いインターバルトレーニングになるのかもしれない。

 奥武蔵グリーンラインでも、インターバルトレーニングのようなアップダウンを越えてきた。今日はそういう日なのであろう。

 「一番上は長男・・・長男・・・」という感じで「東峠」に向かった。上る距離は2kmと少しぐらい。くねくねと何度も曲がり、終わりそうでなかなかゴールが見えてこない峠である。

 序盤からペースを少しづつ上げていき、ぎりぎり巡行できる負荷まで上げた。その負荷で固定して、東峠のカーブを何度もやり過ごした。

 ペースは落ちることも上がることもなく一定で、しばし先頭を引いていた。後半、リーダーがケイデンスをすいすいと上げて前に出ていった。
 
 その離れた背中を視界に入れながらクランクを回すが、今以上にペースを上げてその背中に迫ることは難しかった。

 前を走るリーダーの背中は40メートルほど前にあった。その間隔はそれ以上広がるでもなく狭まるでもなく、終盤へ向かった。「東峠」の終着地点は少々分かりづらい。「もうそろそろのはず・・・」と思っていた時であった。

 すぐ後ろを走っていたメンバーがスパート。さっと右を抜いていった。「しまった・・・お株を奪われてしまった・・・」と遅れて反応したが、間に合わなかった。

 「長男」を食した。結構な食べ応えであった。奥武蔵グリーンラインでの「トレーニングモード」ではなく「バトルモード」で走ったので、その負荷はガツンとくる。

 上り終えると後続のメンバーが揃うまで、ハンドルにもたれかかる有様であった。「あとは、次男と三男か・・・脚がもつかな・・・」そんなことをぼっと考えていた。

2015/12/7

3371:インターバルトレーニング  

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 鎌北湖はひっそりと佇んでいた。周囲の木々の葉は茶色やオレンジに色づき、湖面は波立つこともなく、穏やかな表情であった。

 ここでしばし休憩した。釣り人が何人か釣り糸を垂れていた。「何が釣れるのであろうか・・・?鮒か・・・あるいは鯉であろうか・・・?」そんなことを思いながらその様子を眺めていた。

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 鎌北湖をくるっと半周するような感じで走ってから、いよいよ奥武蔵グリーンラインを走り始めた。

 奥武蔵グリーンラインは鎌北湖から走ると上り基調となる。上り「7」に対して下りや平坦が「3」ぐらいであろうか・・・

 鎌北湖を通り過ぎるとやや長めの上りが続いた。斜度もしっかりとあり、いきなり脚を結構使わされる。

 やや下るとまた上り・・・そんな感じで延々と続いている。インターバルトレーニングのようである。

 上りでしっかりと脚を使い、間に挟まる下りや平坦路で脚を休ませる。そして、また上る。じわじわと脚には疲れが蓄積されていく。

 奥武蔵グリーンラインは大半が木々に覆われている。夏場であれば涼しく快適なコースである。

 時折開けたところに出る。そういうところでは、ぱっと視界が開け、気分も晴れやかになる。空には淡く白い雲が広がり、青い空を背景にふわっとした質感で漂っていた。

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 インターバルトレーニングは続いた。どのくらいの距離を走ったのであろう・・・ようやく顔振峠に繋がる分岐点に到着した。

 顔振峠は国道299号から上って来ると厳しい斜度に脚が悲鳴をあげる峠であるが、この分岐点からは斜度が緩む最終盤の上りとなるので、厳しい斜度に表情を歪めることはない。

 最後のインターバルトレーニングは、緩い斜度をスパートする走りとなった。しばしスパートして、頂上に着いた。峠の頂上には「平九郎茶屋」がある。いつものように鄙びた風情で我々を出迎えてくれた。

2015/12/6

3370:FUJI  

 これからの季節、日曜日の朝早くベッドから抜け出すのは一種の踏ん切りが必要になってくる。ベッドの中にいればぬくぬくとした天国のような状態・・・それを振り切らなければならないからである。

 朝の6時に目覚まし時計が鳴っても、もう少し、もう少し、という感じでぐずぐずしていた。ようやく起き出すと、手早くサイクルウェアに着替え、準備を整えた。

 いつものように自宅を朝の7時に出た。少々寒いことは寒いが、それほどではなく、「これなら、快適に走れそうだ・・・」と思った。

 集合場所であるバイクルプラザに着いた時、店内にはチームメンバーの一人が発注していたフレームが置かれていた。

 そのフレームはFUJI SL 1.1。FUJIは名前からすると日本のメーカーのようであるが、現在はアメリカのメーカーである。

 SL 1.1は超軽量フレームである。試しに持たせてもらったが、気が抜けるくらいに軽い。チームで初のFUJI。組みあがりが楽しみである。

 今日のロングライドはは「鎌北湖」まで行ってから、奥武蔵グリーンラインをしばし走って顔振峠まで行って、帰りは「東峠」「山王峠」「笹仁田峠」を越えるというコースに決まった。

 参加者は7名。ORBEAが4台と圧倒的に多い。残りはBHが1台、RIDLEYが1台、そして私のKuotaが1台である。

 多摩湖サイクリングロードを通って、多摩湖の堤防まで行って、堤防を越えた。多摩湖の堤防から見える景色は実に壮観であった。雲が横に長く幾筋も連なっていて、太陽によって淡く染められていた。

 今日は所沢シティーマラソンが行われる日であったようで、ところどころ警察官や警備員がいて、もうすぐ始まる大会に備えて、交通規制を始めようとしていた。

 飯能方面へ走っていき、飯能駅にほど近い「セブンイレブン」で休憩をした。トイレを済ませ、補給食を摂った。

 補給食には「ビーフカレーまん」とバナナを選択。「ビーフカレーまん」には「NEW」と書かれたシールが貼られていた。

 どうやら新商品のようである。カレーまんらしくがわはうっすらとした黄色。そして中に入っていたビーフカレーは濃厚な味わい。なかなか美味であった。

 リスタートして「鎌北湖」を目指した。「鎌北湖」までの道程は地味に上りが続く。決してきつい上りではないのであるが、じわじわと疲労感が脚に溜まっていく感じである。そんな道を進んでいくとようやく「鎌北湖」に着いた。
 
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2015/12/5

3369:3分の1  

 組み上がったレコードプレーヤーは真っ黒なGTラックの上に唯一存在するオーディオ機器として君臨した。その独立した電源部はGTラックの下部に据え置かれた。

 ここ数ケ月の間、三つ並んだ黒いGTラックは虚無のみが支配していたが、今日になってようやく右側のGTラックから虚無を追い出して、その3分の1の空間を新たな機器が占有することになった。

 しかし、残念ながらこの美しいレコードプレーヤーの所有権を得たわけではない。しばしお借りするだけであって、永遠に我が物とすることを決心したわけではない。

 まあ決心を迫られても、Marantz#7と#2が不在ではその音を確認できないので、心を決める事はできない相談である。

 小暮さんは、そのレコードプレーヤが鎮座している様を眺めながら「やっぱり絵になるレコードプレーヤだね・・・機能がデザインとして見事に昇華されている。でも、Marantz #7が戻ってきたら個性がぶつかりすぎてしまうかもね・・・時代的な整合性も取れないし・・・やっぱり、Marantz #7の脇にはTHORENSなんかがしっくりくるよね・・・」と話した。

 さらに続けて「真ん中のGTラックの上には、MARANTZ #7を置く。真ん中の下と左側の下にはMARANTZ #2が・・・すると左側の上が空くね・・・」とGTラックの左上部に視線を移した。

 「ええ、そこにはフルレストアが完了したTHORENS TD-124を置こうかと・・・」私はまだそこにはないTD-124の姿を思い浮かべるようにして、答えた。

 「するとMarantz #7を真ん中に挟んで、新旧のレコードプレーヤが相対する格好になるわけだ・・・なかなかない取り合わせだねそれは・・・見た目だけでも興味が沸くよ。」

 小暮さんは笑顔になった。

 「まあ、年内にMarantzが戻ってくれば、ちょっと楽しい正月休みになりそうです・・・でも、どうなることやら・・・Yさんは全然商売っ気が無いから・・・年を越すことになる可能性も高いですよ・・・」

 「そうそう、ああいった古い機器をフルレストアする人間って、かなり変わったところがあるからね・・・世間的な一般常識からかけ離れているというか、浮世離れしているというか、夢の世界に住んでいるようなところがあるから・・・トーレンスのフルレストアも時間がかかっているんだろ・・・?」

 「ええ、とても・・・Marantzと良い勝負ですよ・・・Marantzも揃い、THORENSも揃い、一時的かもしれないけどこの美しいレコードプレーヤもリスニングルームにあれば、結構楽しめますよね・・・」

 私はここには無い機器たちの残像のようなものを、思い描きながら、にたにたしていた。小暮さんもにたにたしていた。なんだか小暮さんの顔が猫のように見えた。小暮さんの目に写る私の顔ももしかしたら猫のように映っているのかもしれないと漠然と思った。

2015/12/4

3368:組み立て  

 ベースプレートやサブシャーシ、プラッターなどの大きな部品や、その他の小さな部品が段ボールから取り出されて、順次組み立てられていった。

 建築物が構築されていくように、そのレコードプレーヤーは下から出来上がっていく。一つ一つのステップにチェックポイントがあり、それを慎重にチェックしながら、その構築物は出来上がっていった。

 アームは一目でSME製と分かる現代的な造形美を誇るもので、真黒な色は艶消しで渋い。プレーヤー本体がどちらかというとキラキラした質感であるのに対抗するかのようで、その色合いは全体の雰囲気を引き締める効果があるようである。

 3つあるスプリングでフローティングする構造となっているこのレコードプレーヤーの調整の肝はそのスプリング式のサペンションの微調整。

 スプリングにはその上部に色が付けられていて、その色によって柔らかさが異なる。黄・赤・緑・青の順番に柔らかい。左手前に緑、左後方に黄、そして右のアーム側に赤というのが標準的な組み合わせである。

 青は相当重量のあるアームを選択した場合に出番があるようであるが、付属のSME製のアームの場合、標準的な組み合わせが良い。

 それぞれスプリングの色を確認しながら所定の位置に組み入れる。そしてサスペンション調整を行う。

 サスペンション調整は下ろす場合と上げる場合とではやり方が異なる。不用意に調整するとトラブルの原因ともなるので、慎重に調整する。

 サスペンション調整のためのゲージが付属していて、それでベース部とハウジングの下端との間隔が所定の長さになっているか確認する。

 面倒なのは、そのゲージの高さにちょうど合わせると高すぎてベルトが外れやすいということ。実際にはそのゲージよりも少し低めになるように調整しなければならない。「なぜ、ちゃんとしたゲージになっていないのか・・・?」と疑問に思いながら、その様子を見守っていた。

 「ハウジングの下端がゲージに少し組み込むぐらいがちょうどいい・・・」そういった微妙なところがアナログらしいといえばアナログらしいのであるが・・・

 サスペンション調整を終えると、次はトーンアームの微調整である。オーバーハング調整は付属のキャリブレーターを用いて行う。真上から見てさらに正面から見て、微調整していく。位置がピタッと決まったら、アームベース部のボルトを締めてしっかりと固定する。

 次はアームの高さ調整である。基本は水平。付属しているSME製のトーンアームにはパイプ中心部の横にラインが真っ直ぐに入っている。そのラインがあるので目視での水平確認がしやすい。

 続いて電源を投入して回転数の確認をした。ストロボスコープがプリントされた付属のキャリブレーターで確認できる。モーターユニットの後部に装備された微調整用の穴に精密ドライバーを入れて、何度か調整を繰り返した。

 作業は比較的順調に進んだ。それでも2時間以上の時間を要してたであろうか・・・ほぼ完成形となり、そのレコードプレーヤーはラックの上部を占有した。 

2015/12/3

3367:940 Estate  

 Volvo 940 Estateは、角ばったごついデザインの時代のVolvoである。かつては「走る弁当箱」と揶揄されたVolvoも今は随分と流麗なデザインの車となった。

 その古い時代のVolvoの代表格の一つであるVolvo 940 Estateの容姿は、北欧の広い平原などを背景にすると実に様になる感じである。

 間近に見るVolvo 940 Estateは、どこもかしこも直線で造形されていて、ごつい感じであった。その荷室の広さはここに住み込めるのではないかと思える広さである。

 Volvo 940 Estateは1990年の発売だから、25年も前に設計・製造された車である。1998年まで製造されていた。

 小暮さんのVolvo 940 Estateは1994年モデルとのこと。何度か深刻なトラブルに見舞われたが、その都度粘り強く修理をして、今現在まで乗り継いでいる。

 小暮さんのVolvo 940 Estateの巨大な荷室には、一つの段ボール箱が置かれていた。その段ボール箱自体はそれなりの大きさがあるのであるが、その荷室があまりに巨大な空間を有しているので、それほど大きく感じられななかった。

 小暮さんはその段ボールを広大な荷室から降ろそうとしたので、私も手伝って、自宅に持って入った。そして、その段ボールを玄関を入ってすぐ左側にあるリスニングルームに運び入れた。

 リスニングルームは現在少々閑散としている。何故なら、Marantz #7と#2が現在フルレストア中でラックには存在していないからである。

 駆動するアンプが不在のためTANNOY GRFは手持無沙汰に静かに佇んでいる。真黒なGTラックはぽっかりと空いた空間のみが占有していた。

 小暮さんはその様子を眺めて「Marantz、時間かかっているね・・・」と言った。「そうなんです。思っていた以上に難航しているようで・・・でも、どうにか年内には終わりそうです・・・」私はそう答えた。

 「俺も何度か連絡してみたんだけど、#7でトラブルが発生したみたいで・・・でも年内に何とかなるということなら、#7は完了したんだ・・・?」

 小暮さんは段ボールの梱包を解きながらそう言った。

 「ええ、一昨日連絡した時に、#7がようやく終わって、これから#2に取り掛かると言ってました。#2でもトラブルが発生するとまだ分かりませんが、トラブルがなければ、年内には終わりそうです、とのことでした。」

 私は段ボールの中身を覗き込むようにしていた。

 「でも、#2でも何かしら問題が出るかもしれないよね・・・まあ、最悪年越しの可能性も覚悟していた方がいいんじゃない・・・急にがっかりしないためにも・・・」

 「まあ、#7も#2も古い機械ですからね・・・ノントラブルということは無いと思っていたほうがいいでしょうね・・・あのVolvoも結構トラブルがあるでしょう・・・?」

 「ああ、940ね・・・あれはトラブルがぎっしり詰まった弁当箱のようなものだよ・・・見た目は頑丈そうなんだけど、それなりに手をかけないとね・・・まあ、メーカーもこんなに長く乗ることは想定していないからね・・・」

 「ディーラーが修理してくれるんですか・・・?」

 「ああ、まだ取り合ってくれているよ・・・半分呆れ顔だけどね・・・ここまで来たら意地のようなものだね・・・走っていて途中で止まったくらいじゃ諦めないぞって感じだよ・・・」

 段ボールの中からは、先日「オーディオショップ・グレン」で見かけた、レコードプレーヤーが各部品に分かれて取り出された。

 「この組み上げがね、なんというかワクワク感があってね・・・結構楽しんだよ・・・微調整は少し時間がかかるけど・・・」

 段ボールからはすっかりとその部品たちが取り出された。精密に加工されたそれらの構成部品は、丁寧に作られたことが一目で見て取れた。

2015/12/2

3366:小樽 あんかけ焼きそば  

 「都民の森」の駐車場を後にして、20km以上続く下りを走った。重力に任せて下っていくと、強い風が体を襲ってくる。その風は冷たく、体から否応なく熱を奪っていく。

 寒さに体を強張らせながら下っていくと、逆方向から上ってくるローディー数名とすれ違った。皆一様に苦しそうな表情をしていた。

 ほんの少し前には、私も同様に苦し気な表情で上ってきたはずである。しかし、それは随分と前だったような気がしてしまった。

 幾つかのカーブをやり過ごしながら下っていくと、徐々に標高も下がってくる。強く体を襲ってくる風の冷たさは、標高が下がるに従って、緩んでくる。

 「上川乗」を過ぎると、下り一辺倒から、時折上りも入るので、体も少し暖まる。ようやく6両編成のトレインは「橘橋」の交差点まで達した。

 その交差点を右折して、檜原街道を走った。下り基調なので、「快速」状態でどんどんと距離を稼いでいった。

 武蔵五日市駅にまでたどり着き、その前の交差点を右折して睦橋通りに入っていく頃には、気温は随分と穏やかなものになっていた。

 少し前に胃袋に納めたはずの団子はすっかりとエネルギーとして消化されたのか、お腹が空いていた。

 睦橋通りを制覇すれば、その先にあるファミリーマートで昼食休憩である。今日は何を選択すべきか・・・スパゲティー、カレーライス、カップヌードル・・・頭の中にはいくつかの候補が浮かんできた。

 そして、ようやく睦橋通りを走り終え、国道16号線の下を潜っている地下道を通って、ファミリーマートに着いた。

 ペンギン歩きをしながらファミリーマートに入り、店内でしばし迷った。何種類かあるスパゲティを眺めていたところ、同じ棚にあった「小樽 あんかけ焼きそば」が目についた。B-1グランプリで有名になったご当地グルメである。

 「これにしてみるか・・・」と手にしてレジへ・・・電子レンジで温められたものを早速食した。

 味はパッと見た瞬間に想像したより薄味ですっきり、油っぽさもそれほどではない。麺はモチチモチ感があり、ボリュームに不足はない。紅ショウガが入っていて良いアクセントになっていた。

 値段は498円(税込)。おそらく期間限定の商品であろう。ロングライドでの補給食や昼食はコンビニで購入する。そのため、コンビニの商品にも詳しくなった。

 コンビニでの休憩はほとんど例外なくトイレ休憩も兼ねている。そのためであろうか、普段何気にコンビニに入った時も、ついついトイレに行きたくなってしまう。条件反射とでも言うべきか・・・「パブロフの犬」の気持ちが分かるような気がする。

 「小樽 あんかけ焼きそば」でエネルギーを十分に補給して、自宅まで走った。今日のロングライドはパンクも落車も通行止めもなく、穏やかなものであった。 



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