2015/9/23

3295:大弛峠  

 琴川ダムから大弛峠へ向けてリスタートしてしばらくは斜度は緩むことなく厳しいままであった。後半の平均斜度は前半よりも緩むと聞いていたので少し期待していたのであるが、まだまだ続く厳しい斜度に体も心も追い詰められていった。

 3kmほど上ると斜度がすっと緩んだ。厳しい斜度に苦しめられていた脚はよみがえった。クランクは勢いよく回り始めた。

 斜度は3%程度であろうか・・・なんだか平坦路を走っているような気になってくる。8台のロードバイクはピタッと寄り添い風を切るようにして走った。

 「このまま緩い斜度のまま頂上まで行ければ良いのであるが・・・」

 そんな都合の良い考えがちらりと頭をかすめたが、現実はそんなには甘くなかった。斜度が緩かったのは4km程・・・残り8kmぐらいからまた斜度はしっかりとしたものに変わっていった。

 斜度が上がってからはまた苦悶の表情が顔に張り付いた。斜度が厳しくなると隊列は縦に長く広がっていった。私の脚の筋肉は強張って滑らかさをすっかりと失っていった。

 太腿の内側には時折鋭い痛みが走った。筋肉が攣る前兆のような不吉で鋭い痛みである。「ここで太腿が攣ったら地獄行きだな・・・」そんなことを思いながら、クランクを回し続けた。

 1kmごとに大弛峠の頂上までの残り距離が道の左端の簡素な道標によって表示されている。ようやく「残り3km」の表示までたどり着いた。

 「のこり3km〜!」

 前を行くメンバーがそう告げた。心が少しほっこりとした。もうすぐ頂上である。脚も体もほぼ限界地点でうろついていた。ゴールが確実に近づいていることが心の支えとなった。

 しかし、その3kmは長かった。脚はどうにか回り続けていた。脳の指令で回っているのではなく、自動機械のように回っていた。脳は苦痛を必要以上に感じないために、思考停止状態になっているかのようであった。

 急激に曲がるヘアピンカーブを通った。その急激な曲がり部分には何本もの白いラインが道を斜め横にスライスするように入れられていた。その様子がなんだか美しく感じられた。

 標高は2,000mを超えているはず。冷えた空気を体から発する熱で幾分暖めながら大弛峠の終盤を上っていった。

 すると道の脇に停まっている車が数台見えた。「あそこか・・・?頂上か・・・?」体からすっと緊張感が引いていくような解放感があった。

 頂上に達して、左のペダルからクリートを外し、左足を地面に着けた。続いて右足のかかとをくいっと外側にねじってクリートをペダルから解放した。サドルからお尻をずらして、右足も地面に着けた。

 大弛峠の頂上は霧で少しもやっていた。頂上には登山客など想像以上に多くの人がいた。テントを張ってその前で缶ビールを飲んでいる人もいた。

 KUOTA KHANを木の柵に立て掛けて、私もその柵にもたれて休んだ。標高は2,365mである。頂上には冷ややかな空気がゆっくりと流れていた。私はしばし柵にもたれたままであった。

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