2015/8/30

3271:本番当日  

 6人部屋としては、それほど広くない和室に、目一杯に六つの蒲団を敷いて、部屋の明かりを消したのは10時を過ぎた頃であった。

 本番当日の起床時間は4時半。皆、スマホでアラームを設定した。そのスマホのアラームが一斉に鳴り出す前の4時ごろに目が覚めた。

 屋根を叩く雨の音で目が覚めたようであった。その音は決して穏やかなものではなかった。この宿が古い木造で遮音がしっかりとなされていなかったからか、その音はすさまじく、朝一番の気分を大きく落ち込ませた。

 「雨か・・・これはどう考えても小雨ではないな・・・本降り、いやどしゃ降りに近い感じだな・・・」

 トイレに起き出して、小さな廊下の窓を半分ほど開けて外を眺めた。どしゃ降りの様子が目に飛び込んできた。

 「これは、予報よりもひどいことになっているな・・・」

 改めて、持ち出したスマホの天気予報のサイトを確認してみると、昨日の予報とは違い、傘マークがずらっと並んでいた。

 「距離が短縮されないといいけど・・・」

 そう思いながら、朝の5時に用意してもらっている朝食をメンバー全員で食した。思いのほかに強い雨に、メンバーのテンションは下がりがちであった。

 食事を済ませ、準備を完了したところで、車に分乗してスタート会場近くへ移動した。雨は降り続いていた。防寒着などを入れたリュックをスタート会場そばに停車しているバスに預ける必要があるので、リュックを担いで、傘をさして歩いた。

 すると、開催については本部で検討中との情報が入ってきた。上のほうは相当な雨になっているようである。レースの開催そのものが中止となる可能性もあるようであった。

 とりあえず、指定された番号のバスにリュックを預けた。そして、ロードバイクの準備をするために、車に戻るために歩いて戻っている時であった。距離を20.5kmから7kmに短縮して開催することが決定されたとの、情報が入った。

 「7km・・・」

 その距離の短さに皆唖然とした。

 「たった7kmか・・・この雨の中、ずぶ濡れになりながら走る価値があるのか・・・?」

 皆の表情が曇った。

 「どうします・・・?」

 「どうしよう・・・走る意味があるのか・・・?」

 「撤退しますか・・・?」

 しばし、11名のメンバーの間で話し合った。結論は「撤退」。雨は止みそうにもない。7kmであれば、普段のロングで上る峠とたいして変わらない。路面は相当濡れているし、パンクや落車のリスクも高くなる。もちろん体もロードバイクもびしょ濡れとなる。

 バスに預けたリュックを取りにUターンした。リュックを担いで、車に戻った。気持ちはすとんと落ちた。昨日からの緊張感は軽い虚脱感にすり替わった。



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