2015/7/18
3408:ゴルフスクール
「コツコツコツ・・・」と硬質な音がした。その音を認識したが、何の音なのか分からなかった。もう一度「コツコツコツ・・・」と同様の音がした。
それが車のウィンドウガラスを指で叩く音だと気付いて、目を開けた。運転席側の窓には中を覗き込んでいる「寧々ちゃん」の笑顔が・・・
状況がすぐには飲み込めなかったが、電動シートをスイッチを押しながら元の位置に戻しているわずかな時間のうちに、状況をしっかりと把握できた。シートが元の位置になってから、パワーウィンドウのスイッチを押して窓ガラスを開けた。
「お疲れ・・・?」
彼女は笑顔のまま訊いた。
「ちょっとね・・・5時間以上走ったからね・・・」
私は、目を瞬かせながら答えた。
今日はこれから彼女とゴルフ練習所へ行く予定であった。彼女の Alfa Romeo Mitoからゴルフバッグを降ろして、私の車に移した。
助手席に置いてあった書類カバンを後部座席へ移して、彼女を助手席に座らせた。ここから昭和の森ゴルフ練習場までは車で10分ほど・・・
雨はほとんど止んでいたが、時折思いだしたようにざっと降ってきたりもした。昭和の森ゴルフ練習場の駐車場は空いていた。
入口に近い位置に車を停めて、ゴルフバッグを手に中に入って受付を済ませた。この練習場のスクールにかって二人は通っていた。
そこで彼女と出会った。週に一度のスクールや年に数回行われるラウンドレッスンを経て、プライベートでも彼女のゴルフ仲間と一緒にラウンドするようになったのである。
その後レッスンプロが体調を崩してスクールが閉鎖された。それ以来スクールには通っていない。別のレッスンプロのスクールに移ってもよかったのであるが、しばし休憩という感じであった。
「またどこかのスクールに通おうかな・・・」
彼女は何度かそう話していた。
二つ連なった打席に着いて、それぞれ練習を始めた。気温はそれほど高くはなかったが、湿度は猛烈に高かった。空気はもわっとしていて、淀んでいるような感じであった。
アプローチショットから初めて、徐々に番手を上げていく。30分ほど打って休憩をした。自販機でポカリスウェットを2本買ってきて、1本を彼女の打席に付属している椅子の肘掛けに置いた。
そして、後ろから彼女のスウィングをチェックした。ボールはどちらかというと右に出ていた。いわゆる「スライス」である。
「右に出てるね・・・アウトサイド・インになっている・・・」
私がそう言うと、彼女はボールと打ちながら、時折こちらをふり向いて言った。
「最近、こんな感じ・・・先週もラウンドしたんだけど、まっすぐに行かないし、距離も足りなくて、110も打っちゃった・・・」
彼女はまだ100を切ったことがない。ゴルフ歴は10年ほどになるはずである。ボールのつかまりが今一つであるのと、バンカーに入るとトラブルになることが多いのが足を引っ張っているようである。
1時間ほどの練習を終えて、クラブハウス内の休憩コーナーでアイスコーヒーを飲んだ。私はスクールのパンフレットを貰ってきた。
それを彼女に見せながら、「また始める・・・スクール・・・?今は3人のレッスンプロがそれぞれスクールを開講しているようだね・・・」と言った。
彼女はそれを手にして熱心に見入っていた。
「そうね・・・スクールに行かないと100を切れないような気がする・・・」
「無料体験レッスンがあるから、一度一緒に受けてみるか・・・」
お互いのスケジュールを確認して、フロントで無料体験レッスンを申し込んだ。3名のレッスンプロのなかからもっとも若いプロのスクールを選択した。時間は火曜日の夜の7時からである。
私もゴルフの方は随分と回数も減り、月に1回程度になってしまった。練習場にもほとんど行かなくなっていた。当然の結果としてスコアも振るわない。
スクールに行けば、とりあえず週に一度はゴルフクラブを握ることになる。それにレッスンプロのアドバイスも加われば、スコアがアップする可能性は高い。
「またゴルフにもちゃんと向き合うかな・・・」
そう独り言のように呟いた。台風11号はどうやら遠ざかったのであろう・・・雨も風もほとんど気にならない程度のものに変わっていた。あの激しい雨のなか中央道を走っていたことが遠い日の出来事のように思われた。
それが車のウィンドウガラスを指で叩く音だと気付いて、目を開けた。運転席側の窓には中を覗き込んでいる「寧々ちゃん」の笑顔が・・・
状況がすぐには飲み込めなかったが、電動シートをスイッチを押しながら元の位置に戻しているわずかな時間のうちに、状況をしっかりと把握できた。シートが元の位置になってから、パワーウィンドウのスイッチを押して窓ガラスを開けた。
「お疲れ・・・?」
彼女は笑顔のまま訊いた。
「ちょっとね・・・5時間以上走ったからね・・・」
私は、目を瞬かせながら答えた。
今日はこれから彼女とゴルフ練習所へ行く予定であった。彼女の Alfa Romeo Mitoからゴルフバッグを降ろして、私の車に移した。
助手席に置いてあった書類カバンを後部座席へ移して、彼女を助手席に座らせた。ここから昭和の森ゴルフ練習場までは車で10分ほど・・・
雨はほとんど止んでいたが、時折思いだしたようにざっと降ってきたりもした。昭和の森ゴルフ練習場の駐車場は空いていた。
入口に近い位置に車を停めて、ゴルフバッグを手に中に入って受付を済ませた。この練習場のスクールにかって二人は通っていた。
そこで彼女と出会った。週に一度のスクールや年に数回行われるラウンドレッスンを経て、プライベートでも彼女のゴルフ仲間と一緒にラウンドするようになったのである。
その後レッスンプロが体調を崩してスクールが閉鎖された。それ以来スクールには通っていない。別のレッスンプロのスクールに移ってもよかったのであるが、しばし休憩という感じであった。
「またどこかのスクールに通おうかな・・・」
彼女は何度かそう話していた。
二つ連なった打席に着いて、それぞれ練習を始めた。気温はそれほど高くはなかったが、湿度は猛烈に高かった。空気はもわっとしていて、淀んでいるような感じであった。
アプローチショットから初めて、徐々に番手を上げていく。30分ほど打って休憩をした。自販機でポカリスウェットを2本買ってきて、1本を彼女の打席に付属している椅子の肘掛けに置いた。
そして、後ろから彼女のスウィングをチェックした。ボールはどちらかというと右に出ていた。いわゆる「スライス」である。
「右に出てるね・・・アウトサイド・インになっている・・・」
私がそう言うと、彼女はボールと打ちながら、時折こちらをふり向いて言った。
「最近、こんな感じ・・・先週もラウンドしたんだけど、まっすぐに行かないし、距離も足りなくて、110も打っちゃった・・・」
彼女はまだ100を切ったことがない。ゴルフ歴は10年ほどになるはずである。ボールのつかまりが今一つであるのと、バンカーに入るとトラブルになることが多いのが足を引っ張っているようである。
1時間ほどの練習を終えて、クラブハウス内の休憩コーナーでアイスコーヒーを飲んだ。私はスクールのパンフレットを貰ってきた。
それを彼女に見せながら、「また始める・・・スクール・・・?今は3人のレッスンプロがそれぞれスクールを開講しているようだね・・・」と言った。
彼女はそれを手にして熱心に見入っていた。
「そうね・・・スクールに行かないと100を切れないような気がする・・・」
「無料体験レッスンがあるから、一度一緒に受けてみるか・・・」
お互いのスケジュールを確認して、フロントで無料体験レッスンを申し込んだ。3名のレッスンプロのなかからもっとも若いプロのスクールを選択した。時間は火曜日の夜の7時からである。
私もゴルフの方は随分と回数も減り、月に1回程度になってしまった。練習場にもほとんど行かなくなっていた。当然の結果としてスコアも振るわない。
スクールに行けば、とりあえず週に一度はゴルフクラブを握ることになる。それにレッスンプロのアドバイスも加われば、スコアがアップする可能性は高い。
「またゴルフにもちゃんと向き合うかな・・・」
そう独り言のように呟いた。台風11号はどうやら遠ざかったのであろう・・・雨も風もほとんど気にならない程度のものに変わっていた。あの激しい雨のなか中央道を走っていたことが遠い日の出来事のように思われた。