2015/7/4

3394:立ちくらみ  

 その後も、何枚かのレコードがTD124とLP12のターンテーブルの上を往復した。TD124の容姿はいわゆる「ヴィンテージ」といった雰囲気を纏ったもので、どちらかというと高性能というよりも温和で滋味深いものを感じさせる。

 しかし、その能力は想像していたよりも大きなものであった。特に音楽の肝のようなものをしっかりとつかみ出すことにかけては、一段優れたものを感じた。

 一般的に出回っているTD124はモーターがくたびれてしまっていてその本来の能力を発揮できていないものが多いようである。

 しかし、専門家による徹底的なフルレストアが行われたTD124はすっかり蘇り、その製造された当初持っていたであろう能力を回復している。

 私はレコードプレーヤーが好きである。その形が好きなのかもしれない。最初に手にしたレコードプレーヤーはROKSAN XERXES 20であった。

 残念ながら、現在ROKSANは正式に日本に輸入されていない。輸入代理店がなくなってしまったからである。

 ROKSAN XERXES 20のデザインは素晴らしく、純正のアームと組み合わせると得も言われぬバランスを得て、実に様になった。

 その次はLINN LP12を迎え入れた。こちらは「シンプル・イズ・ベスト」をそのまま形にしたようなレコードプレーヤーである。LP12は、ターンテーブルとアームボードが一つのサブシャーシに固定され、3本のスプリングによって吊り下げられている。その構造により外部振動から隔絶される仕組みになっていて、指でターンテーブルを押すと両者はしばらく連動して揺れている。

 内部を見てみると、思っていたよりも簡素な構造であるが、そのシンプルな構造が功を奏しているのか、発売以来改良が加えられ続け、現在でももっとも人気のあるレコードプレーヤーの一つとなっている。

 TD124にも強く心惹かれるものを感じた。しかし「当分の間はLP12でいいであろう・・・比較するとかなり違う音世界を感じさせてくれるが、LP12のみを聴いている分には不満もないであろう・・・」と自分を納得させていた。

 腕時計を確認した。もうそろそろショップを出るべき時間になっていた。「今日はありがとうございました・・・」と挨拶して、ソファから立ち上がった。

 立ち上がった瞬間、すっと頭から血の気が引くような感じがあった。意識がうっすらと薄らいでいく。慌ててまた黒い革製のソファに腰を下ろした。「立ちくらみ」である。最近時々起る。



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