2015/7/2

3392:RMG-212i  

 オーナーはレコード棚からレコードを取り出した。ローラ・ボベスコのヴァイオリンによる「フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番」であった。10インチのかわいらしいレコードである。

 その小さなレコードは、まずLINN LP12のターンテーブルに置かれた。そして、SME 3009Uの先端部分に取り付けられたSPUの針先がゆっくりと盤面に下ろされた。

 ピアノの序奏に続き、フォーレらしい流動的で印象的なメロディーが流れ出して来る。音楽は千変万化する自然そのもののように形を変えていきながら速くなったり遅くなったりを繰り返していた。

 LINN LP12は反応の速いレコードプレイヤーである。しっかりと音楽の変化に追従し、サスペンションが極めて繊細かつ敏捷に動き路面の状況に対応する車のように、音楽の姿形の細かな凹凸をなぞった。

 第1楽章と第2楽章が納められているA面を聴き終えた。オーナーはその同じレコードを今度はTHORENS TD124MkUのターンテーブルに移した。

 THORENS TD124MkUにはOrtofonのRMG-212iが装着されていた。これはSPU専用のアームである。オリジナルであるRMG-212は、カウンターウエイトの結合部にあるウエイトシャフトが樹脂製のため、年数が経過すると破損等のトラブルを抱えているものが多くなる。その改良型である212iは金属製の軸を採用しているので、耐久性という点において安心感がある。

 その見かけは実にそっけない。「そっけないですけど、なにか・・・?」といった少し開き直ったような容姿ですらある。SME3009Uに比べるとメカニカルな美しさは低減するが、その潔さは気持良くもある。

 そして、その比較的単調とも思われるアームの姿形はTD124MkUに装着されると不思議な一体感が生まれる。音楽を再創出するために気持ちを一つに整えているような、そんな印象を受ける。

 TD124MkUのキャビネットは木製で、微妙にラウンドしている。そのキャビネットは、豊かな音楽の響きを醸成してくれそうな気になる。

 このキャビネットの材質は当然音に影響が出るであろう。ここにあるものは無垢の木製のようである。LINN LP12のキャビネットは割と質素というか、かなり頼りなげな軽量級であるが、TD124MkUのキャビネットは、どしっと腰の据わった感のあるしっかりとしたものである。

 10インチのレコードの上にSPUの針先は下ろされた。RMG-212iにはリフターがない。オーナーはSPUの指かけに人差し指と親指を軽く添えて、 盤面の上まで移動させてゆき、ゆっくりと下げた。

 そして、先ほどと同じくフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番第1楽章が始まった。



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