2015/7/1

3391:TD124  

 「ちょっと変わった人だったでしょう・・・?」

 「オーディオショップ・グレン」のオーナーの小暮さんは、淹れてくれたコーヒーの入った白いコーヒーカップをソファーテーブルの上に置きながら、そう言った。

 「確かに変わっていましたね・・・エキセントリックというのでしょうか・・・浮世離れしている感じで、ウェスタンの真空管の話だけで2時間は聞かされました。まあ、それにしてもすごい知識でしたけど・・・」

 「2時間で済んだならいい方だよ・・・平気で4,5時間語っちゃうときもあるからね・・・でも、レストアに関しては一番信頼できるんだ・・・技術もとてもしっかりとしている。ハンダ付けも全てやり直してくれるし、取り換えるコンデンサーなどの部品の選択眼も素晴らしい。このコンデンサーならこんな音になるといった、一定の方向性も良く分かっているから・・・」

 「そう言えば好きな音の傾向も訊かれました。アメリカ系の音か・・・ヨーロッパ系の音か・・・ってね。ヨーロッパ系の音でお願いします、と言っておきました。」

 コーヒーを飲みながら、私たちは先日フルレストアをお願いしたYさんの話をしていた。Yさんは小暮さんから紹介された。Yさんと小暮さんは随分昔からの知り合いのようである。

 「ヴィンテージ製品はメンテナンスが生命線だから・・・なんせ60年前のだからね・・・普通じゃ考えられないでしょう・・・そんな古い電気製品を今も使うって・・・あっ、もう一杯コーヒー飲む・・・?」

 「ええ、いただきます・・・」

 オーナーは一旦3人掛けのソファの脇に置いてある椅子から立ち上がった。

 オーディオショップ・グレンには、TANNOY CANTERBURYがセットされていた。リスニングポイントから見て右側のラックにはレコードプレーヤーが二つセットされていた。

 一つはLINN LP12。SME 3009Uが装着されていた。カートリッジがSPUである。もう一つはThorenz TD124 MkU。こちらにはRMG-212iが装着されている。カートリッジは当然SPUである。この店でTD124を見かけるのは初めてのことである。

 アンプはLEAKのみが並んでいた。Point One StereoとTL-10のセットであった。とても綺麗な躯体でその独特の色合いを艶やかに表出していた。

 「珍しいですね・・・Thorens TD124・・・」

 そう問いかけると、オーナーは再度コーヒーカップにコーヒを注ぎながら、言った。

 「これはね・・・銚子のグレイでフルメンテナンスを受けたもので、とても良い状態なんだ・・・ほとんどのTD124はその本来の能力を発揮できていないからね・・・こういったしっかりと調整されたものを聴くと全然別物だって分かるよ・・・」

 「グレイは聞いたことがあります。知り合いでもそこでフルメンテナンスを受けてらっしゃる方がいます。値段はそれなりに高価なようですが、TD124に関しては抜群だって・・・確かほとんどTD124しかやってないんじゃなかったでしたっけ・・・」

 「専門店だよね・・・今日は聴き比べができるよ・・・ちょうどカートリッジも同じだし・・・」

 「そうですね・・・LP12とTD124ですか・・・」



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ