2015/6/28

3388:フルレストア  

 その4階建ての古い賃貸マンションには、階段はなかった。「となると、4階までの階段を3往復する必要があるのか・・・」そう思って、少々意気消沈した。

 「これから持って上がります・・・」と電話連絡をして、まずはModel2をMercedes-Benz E350から持ち出して、その階段を上り始めた。

 MODEL2は両手で持つにはサイズ的にはちょうどいいぐらいの大きさであるが、重さは結構ある。ずしっとした重みをその両手に感じながら、階段を上りようやく4階まで持って上がった。そしてそれをYさんの工房へ運び込んだ。

 MODEL2はモノラルアンプなので2個ある。もう一度その重みを手に感じながら4階までの階段を上った。2個目を運び込んで少しほっとした。あとはMODEL7である。こちらは軽い。

 MODEL7を手にするとその軽さに頬が緩んだ。こちらは軽いステップを踏んで4階まで上ることが出来た。

 中野坂上のある「オーディオショップ・グレン」から預かっていたこれらのアンプについては、その代金を払った。なので、その所有権は前のオーナーから私に移っている。

 「オーディオショップ・グレン」は私が払った代金から15%の手数料を差し引いて、残額を前のオーナーに支払ったはずである。

 これらのアンプは一応完動品である。音は出る。しかし、コンディションが素晴らしいかというと、それはこういった古いオーディオ機器の場合常に疑問符がまとわりつく。

 MODEL2は1956年。MODEL7は1958年の発売である。60年ほどの時間の経過の間にこれらの機器は何人かのオーナーの手を渡ったはず。その間に何度かのメンテナンスを受けている。

 その際の交換された部品などの選定によって、見かけは同じでも音は相当変わってくるのである。さらに交換された真空管の質によっても音が変わる。

 なので、信頼できる工房でフルレストアする必要がある。つまりこういったヴィンテージ製品は機器の購入代金にプラスしてフルレストア費用がかかるのである。

 Yさんは工房に持ち込まれたそれらの機器の天板を外して早速中身をチェックしていた。その表情はあまり芳しいものではなかった。

 そして、その中のいくつかの部品を指さしながら、「このコンデンサーはダメ・・・これは交換しないと・・・」と独り言のように呟いていた。

 それからしばらくの間、古い時代の真空管やコンデンサーの話をお伺いした。私はその方面の知識は乏しいので、興味深く聞いていた。

 その雑然とした工房の中には様々な貴重な真空管が・・・その道に精通した真空管マニアが見たなら陶然とした表情になるような貴重なものを幾つか見せてもらった。

 何十年もかけて集められたそれらの貴重品は、どれも高価なものである。市場では数十万円で取引されるものもある。少々緊張しながら、それらの真空管を手に取ってしげしげと眺めた。



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