2015/6/3

3363:SHOP  

 「小暮さんは、なんでこの店を始めようと思ったんですか・・・?商社マンなら年収も良かったでしょう・・・?」

 「まあね・・・でも大きな商社じゃなかったから・・・それに55歳になって役職定年になって、年収も減ってね・・・一人娘も独立して扶養する家族もいなくなったし、嫁さんは自分で働いてるから、収入が減っても大丈夫って感じだったんだ・・・」

 「そうだったんですか・・・イギリスには何年ぐらい駐在していたんですか?」

 「9年ほどかな・・・行くときには娘は中学生だったから、ずっと単身赴任でね・・・休日はやることがないから、あっちこっちの骨董品の蚤の市なんかに出かけてた・・・向こうは実に古いものを大切にするんだよね・・・ちょっとびっくりするくらい・・・それも老人ばかりでなく、結構若い人も来てるんだ・・・」

 「そこで古いオーディオに出会ったのですか・・・?」

 「そう、もともとオーディオは好きだったんだけどね・・・古いものではなくて結構新しいものを日本では使っていたんだ。」

 「オーディオショップ・グレン」に立ち寄ったのは夜の7時を過ぎている頃であった。古いビルの4階にショップはある。そのビルの1階には、ビル同様古い喫茶店がある。店名は「Mimizuku」。

 階段を登る前に「Mimizuku」の店内をガラス越しに覗いた。店はいつものよにがらんとしていた。カウンター席には人影はなかった。二つある4人掛けのテーブル席にも客の姿はなく、奥まったところにある二人掛けのテーブル席に男性が一人ぽつねんと座っているだけであった。

 階段を登って4階まで行き「オーディオショップ・グレン」に入った。リスニングポイントに置かれている3人掛けの革製のソファに座ると、皮の匂いがかすかに鼻孔に入り込んでくる。黒い革製のソファは少しくたびれかけていて、座ると適度に沈み込む。

 オーナーが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、雑談を交わした。部屋の両コーナーにはTANNOY Canterburyがひっそりと佇んでいた。12インチのモニターシルバーが入ったCanterburyはGRFを見慣れている私の目には、かわいらしく感じられる。

 そして右手のラックには・・・LEAKのPoint One StereroとTL-10とは別にMARANTZの7と2の姿があった。

 「7」はウッドケースに入った優雅な姿である。隣のPoint One Stereoと比べると随分と大きく感じられる。まあ、LEAKが小さすぎるのであろうか・・・

 2台の「2」はTL10よりは大きいが、真空管式のモノラルパワーアンプとしては標準的と言える大きさであろう。立ち並ぶ真空管にはすでにオレンジ色に染まっていた。



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