2015/6/20

3380:Diamond  

 久しぶりにOFF会でオーディオマニアの方のお宅を訪れると、前回との変更点が目につくものである。

 「あっ・・・あれは前回なかったな・・・」とか「あれは前は、違っていたはず・・・」などとちらちらと無意識にチェックしてしまう。

 今日はPontaさんと一緒にDolonさんのお宅を訪問した。3年前に新築されたご自宅を訪問するのは確か3度目である。前回の訪問から1年以上の時間が経過している。

 2階の実に広々としたLDKにオーディオシステムは設置されている。ゆうに20畳以上はあるその空間に鎮座するのはAVALON DIAMOND。鮮やかなメープルの色合いのDIAMONDはAVALON独特のカットがその各所に施されいて、その精緻な存在感を静かに主張していた。 

 最初に目についたのは、MITのスピーカーケーブルであった。太くしっかりとしたそのケーブルの色合いはクリーム色。

 「スピーカーケーブルがMITに変わっている・・・しかもクリーム色時代のMITだ・・・」

 そのクリーム色は、MITのある一定の時代に使われていた。その時代のMITは人気があるようで、中古市場でも稀に出るとすぐに売却済みになるようである。

 そのクリーム色のケーブルはJEFF ROWLANDのパワーアンプとAVALON DIAMONDを繋いでいた。さらにJEFF ROWLANDのパワーアンプにはパープルの色合いのXLRケーブルが繋がれていた。

 「これも前回にはなかったはず・・・」

 こちらはNBSのXLRケーブルである。こちらもロスなく音楽信号を送り込む姿勢を鮮明に表しているかのように凛としている。

 これらのケーブルは最近導入されたようで、その鮮烈なサウンドに大きく貢献することとなった。

 さらにケーブル類だけでなく、前回と大きく変わったのが、ラックの後方、あまり目につかない場所に設置されいた黒い大きな物体の存在である。

 その正体はパワーアンプの電源環境を飛躍的に改善するために導入されたノイズカットトランスである。

 医療機器用に開発されたノイズカットトランスで、物量がしっかりと投入されたことが窺える。その効果のほどは、MITやNBSのケーブル導入に勝るとも劣らないほどに影響力があったようである。

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 音が出る前、オーディオシステムの設置されている風景を愛でながら、それらのケーブルやトランス導入の経緯などをDolonさんからお伺いした。

 この広い部屋と超高性能なオーディオ機器たち・・・相当な試行錯誤の結果たどり着いたことを窺わせるセッティングの煮詰め具合など・・・音の出る前の無音の状態であっても、これから奏でられるであろう音楽の姿形がふっと淡く浮かび上がってくるようであった。

 最初にdcsの美しいトランスポートのトレイにセットされたのはベートーベンの弦楽三重奏曲であった。SACDである。音楽が流れ始めた。

 DIAMONDの後方に広く展開するサウンドステージには、俊敏で若々しい躍動感にあふれた音像が縦横無尽に駆け回る。
 
 そこに溢れる生命感は実にエネルギッシュで、生命そのもの、躍動することそのものの悦楽を全身で享受するような屈託のなさが感じられる。「純粋な躍動感」・・・そんな言葉が脳裏に浮かぶような音の表情である。

 実はリスニングルームに入る前に驚くことが一つあった。ご自宅のガレージに真新しいVOLVO V40が停まっていたのであった。

 鮮やかな赤のV40からは鮮烈な印象を受けた。従前のVOLVOとは全く異なった造形美を有している。深くねかされたAピラーや後方へ行くにしたがって弧を描いてせりあがっていくサイドウィンドウ下端のラインなど・・・実用性よりもダイナミックで流麗な造形美が随所に取り入れられていて、5ドアハッチバックでありながらスポーツカー的な雰囲気を醸していた。

 AVALON DIAMONDを中心としたシステムが今奏でている音の風情は、見事にV40の持つスタイリッシュでかつ躍動感ある造形美と一致しているような気がした。

 その後、CDは歌ものへ・・・ソプラノやテノールの立ち姿が瞼の裏のスクリーンに映り込むようなリアリティーのある音風景であった。

 この広く美しい部屋では時間はするすると滑るように流れていくようである。時折休憩をはさみながら、聴き進んでいった密度感溢れる音楽は、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンによるシベリウスの協奏曲で締めくくられた。

 ダイアモンドの光沢を決めるのはそのカットのできである。ヒラリー・ハーンの手にするジャン=バティスト・ヴィヨームが放つ音の輝きは、Dolonさんのシステムによって、美しいラウンド・ブリリアント・カットが施され、妖しくも美しい煌めきをその広い空間に咲かせているようであった。 

2015/6/19

3379:人となり  

 Marantz Model2には電源スイッチがない。コンセントの抜き差しでON・OFFするという手もあるが、プリンプを経由して電源を受け、プリアンプの電源スイッチと連動してON・OFFするのがメーカーの意図であろうし、スマートである。

 電源ケーブルやその他何種類かのケーブルの接続を完了して、Model7の電源スイッチをONにした。林立している真空管のオレンジ色が徐々に濃いものに変わっていくに従って、TANNOY GRFからは「ザ〜」という残留ノイズが漏れ出てくる。

 モニターシルバーは感度がとても高い。音楽信号が流れていない状態での残留ノイズは結構耳につく。スピーカーとリスニングポイントの間に広い空間を確保できない我が家のリスニングルームの場合、少々気になるところである。

 早速レコードをかけ始めた。まずはチィコフスキー交響曲第6番のレコードを取り出した。第1楽章を通しで聴いてみた。

 序盤はSPUの針先が暖まっていないので、しっかりとグリップしていなかったが、やがて針先は落ち着き、その音溝に刻まれた複雑な情報をしっかりと拾い始めた。

 懐が深く感じられる。ほんの少し前に我が家のリスニングルームに移動させられたばかりだというのに、何かしら慣れた芸を見せるかのような、こなれた雰囲気を感じる。

 まだ、その真価を発揮しているとは言える状態ではないが、TANNOY GRFとの相性の良さといったものを十分に感じさせる第一印象である。

 Model2のダンピングファクターは、1.3ほどの低い値に調整している。「オーディオショップ・グレン」で、モニターシルバーが搭載されたCANTERBURYでいろいろ試した結果、1.2〜1.4ぐらいがスウィートスポットであった。

 「レッドやゴールドなら、こんな低い値ではどうしようもないけど、シルバーの場合これくらい低い値でないと、上手く鳴らなくてね・・・」

 小暮さんはそう言った。

 「まだ、第一印象にすぎないけど、相性は良いようだね・・・1週間ほど聴いてみる・・・?セッティングを含めて、しっかりと馴染むまで時間がかかるだろうからね・・・」

 「そうですね・・・相性は良さそうですね・・・なんだかすんなりとパズルのピースが入ったような・・・そんな感じでしょうか・・・ぜひ、もう少し時間をかけて聴いてみたいですね・・・」

 2枚目のレコードを取り出した。ヘンデルのヴァイオリンソナタ第4番のレコードである。針先を綺麗にしてから、再度SPUの針先をレコードに降ろした。

 Marantz Model7とMarantz Model2により奏でられるその音の感触は滑らかで幽玄である。舌の上ですっと溶けていくアイスクリームのようにひんやりとして甘い。その味わいをゆっくりと吟味しながら、設計者であるソウル・B・マランツの人となりを想像していた。Model2とModel7には彼の人となりが色濃く投影されているような気がしたのである。

2015/6/18

3378:VOLVO V60  

 中野坂上にある「オーディオショプ・グレン」のオーナー小暮さんが、その愛車VOLVOで我が家に着いたのは午後6時ごろであった。

 まだ辺りは明るかった。今日は時折雨が降っていたが、その時にはピタッと止んでいた。気温は20度前後で涼しかった。

 小暮さのVOLVOは最近変わった。いかにも古い時代のVOLVOらしく角ばったごついデザインの「850」から、昨年マイナーチェンジされた「V60」に・・・

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 色は鮮やかな青。青というよりも水色に近い。印象的な色合いである。ドアミラーの色はメタリックシルバーでボディーと違う色に・・・全体的に締まった体つきをしている。

 850の時代のVOLVOとは全く異なった滑らかなラインで構成された車体は実にオーソドックにまとまっている。 

 「1年落ちの中古を買ったんだ。さすがに850はもうハード的に限界でね・・・VOLVOらしさは薄れたかもしれないけど、実直で堅実・・・良い車だよ。仕事車としても、プライベートの相棒としても、十分に使える。」

 自宅の前の道に停まったVOLVO V60のリアゲートが大きく開いた。その荷室にはエアパッキンでくるまれた物体が三つ置かれていた。

 その三つの物体は、MARANTZ MODEL7と2躯体に分かれたMARANTZ MODEL2である。その三つの物体を小暮さんと私で手分けしてリスニングルームに運んだ。

 オーディオショップ・グレンで預かっているこれらのヴィンテージ・アンプをわが家で試聴してみることとなったのである。

 現オーナーはこれらの機器の売却を小暮さんに依頼している。条件はプリアンプとパワーアンプのセット販売。どちらか一方のみを購入することはできない。

 リスニングルームに持ち込まれたそれらの三つの物体にはすでに置くべき空間が確保されている。従前その空間を享受していたLEAK Point One StereoとLEAK TL-10は部屋の片隅の床に置かれていた。

 エアパッキンから解放されたそれらの三つの物体は昔からそこにあるかのような表情でその空間に納まった。

2015/6/17

3377:紅富士の湯  

 チームメンバー全員が揃ったところで、下山を始めた。数多くの参加者が下山するので、誘導に従って何度か立ち止まって時間調整をしながら下っていった。

 肌寒い空気がウィンドブレーカーを突き抜けて進入してくる。ブレーキペダルを握り続けている指はフルフィンガータイプのグローブをしていても、凍えてくる。

 下り終えると、「ご褒美」が待っている。それは参加者全員に無料で振る舞われる「吉田のうどん」である。コシのしっかりとしたうどんはどことなく「武蔵野うどん」を思わせる。鄙びた風情がほっとさせてくれる。

 うどんを堪能した後、宿を目指して走った。そして宿の駐車場でロードバイクを車に収納して着替えた。その後疲れ切った体を労り癒すために恒例の「紅富士の湯」へ向かった。

 そこでぬるめの露天風呂にゆっくりと浸かった。一つの大きなイベントが終わった。参加した15名のチームメンバーは皆トラブルなく無事に完走した。

 富士スバルラインを上ってくる24kmの行程の中では、バンクしてロードバイクを押して下りてくる人や足が攣ったか痙攣したかで苦悶の表情で道路脇に座り込んでいる人も見かけた。そういったトラブルがなくて良かった。

 体温に近いようなぬるめのお湯にのんびり浸かっていると、つい先ほどまでの厳しいヒルクライムのことが遠い世界のことのように思えてくる。

 湯に浸かっていると頭の中はぼうっとしてくる。そんな状況であっても、脳内の灰色の細胞はゆっくりとではあるが活動している。

 「一つの大きな目標は達成できた・・・では、これで手綱を緩めるべきか・・・1年半継続してきた『1日置き作戦』は終焉すべきか・・・」

 「今回のタイムは1時間26分23秒・・・昨年のタイムを5分ほど縮めた。さらにこれを更新するのは52歳という年齢を考えると容易くはない・・・」

 「でも、もう少し強くなれるような気がする・・・もう少しは・・・」

 「そう、出来る事なら1時間25分を切ってみたい・・・」

 そんなことが頭の中に浮かんでは消えていった。そうしているうちに脳内の白いスクリーンには「1時間25分」という文字が鮮明に浮かび上がってきた。

 そして、露天風呂を出る頃にはある一つのことを自身の心に刻みつけていた。

 「モチベーションを維持するためには明確な目標が必要である。その目標は明確に数値化され達成までの期限が設定されていなければならない・・・」20年ほど前、独立開業寸前にセミナーを受講した「ナポレオン・ヒルの成功哲学」の一節が思い出されていた。

 「来年のMt.富士ヒルクライムで1時間25分を切る・・・」それが次なる明確な目標となった。

2015/6/16

3376:FINISH  

 Mt.富士ヒルクライムは終盤を迎えていた。体の疲労感は相当な指数を示していたが、ペースが大きく落ちるということはなかった。

 サイコンに表示される心拍数は175前後で安定していた。斜度が厳しくなるエリアはダンシングでやり過ごしながら、平坦区間が現れるのを持った。

 ようやく平坦区間に・・・フロントのギアをアウターに入れるかどうか少し迷った。平坦区間の前に斜度が上がる区間があり、そこをダンシングで上っていた時両足の太ももの裏側に違和感を感じた。

 筋肉が攣る前兆のようなものであった。ゴールを目前として筋肉が攣るかもしれないという恐怖感が私の脳裏をかすめた。

 平坦区間で一気にスピードアップを図りたいところであるが、フロントギアはインナーのまま、リアのギアをSHIMANO ULTEGRAのレバーを数回クリックしてトップに入れた。

 急激に脚に負荷をかけずに、徐々にクランクの回転スピードを上げていった。スピードは30kmを超えた。やがて35kmまでスピードは上がった。

 近くを走るトレインがないか探したが、高速で走っているトレインは見当たらなかった。残念ながら単独走行で走り続けるしかなかった。

 平坦区間を勢いよく駆け抜けていくと、道はやがて緩やかに上昇に転じていく。その斜度が上がっていくに従って、リアのギアを軽いものに変えていった。

 ゴール前500mほど・・・ラストスパートをしたい気持ちはあるが、体が言うことをきかない。ダンシングでTIMEのペダルに体重を乗せて、左右に体を揺らす。その揺れに合わせて体から軋む音が聞こえてきそうであった。

 最後の坂道を上っていくと「FINISH」と書かれた横断幕が見えてきた。その「FINISH」の文字を睨み付けるようにして、歯を食いしばった。

 ゴールラインを越えた。そのラインを越えた瞬間にサイコンのタイマーのスイッチを押した。そこに表示されたタイムは「1:26:23」であった。

 「立ち止まらないでください・・・次々にゴールしてきますので・・・前に進んでください・・・」

 スタッフのアナウンスに促され、KUOTA KHANから降りてふらふらしながら歩いた。預けた荷物を受け取るために広い駐車場までの長い道程を、その労苦を共にした数多くのローディーと一緒に列を作ってゆっくり進んだ。

 ゼッケン番号ごとに置かれている荷物からようやく自分の荷物を見つけ、それを背負ってチームメンバーが集まっている地点へ向かった。富士山は白いもやに覆われていて、見ることはできなかった。

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 初めて参加した一昨年が1時間34分36秒、2回目の昨年が1時間31分27秒と2年続けて跳ね返されてしまい、越えることができなかった「90分の壁」・・・3度目となる今年、ようやく越えることができた。

2015/6/15

3375:トレイン  

 やや高回転気味に回るエンジンをなだめながら、ちょうどいいペースで走っているトレインを探した。

 5kmを経過した辺りであった。3両編成のトレインが私の右脇を通り過ぎて行った。ややスピードが速いかもと思ったが、その列車の最後尾に飛び乗ってみた。

 序盤、170台の後半で頑張っていた心拍数は175ほどで落ち着いていた。そのトレインに乗りはじめて、また心拍数は170の後半へ向けて上がり始めた。

 このトレインは協調体制がしっかりと取られているわけではなく、先頭交代は全くなく、淡々と引く先頭の車両に他の3両はただただ付いているだけであった。

 トレインに乗り続けて10km地点を経過した。今日はあまりタイマーの数字を気にしないで心拍数のみを見るようにしていたが、さすがに気になってタイムを確認した。36分30秒ほどであった。

 「いける・・・90分は間違いなく切れる・・・」

 そう思った。心配なのは前半結構良いペースで走ってきたので、後半でペースがガクンと落ちないか、ということである。
 
 10kmを過ぎたあたりから、私のすぐ前3両目のロードバイクが遅れ始めた。そしてやがて切り離されていった。私はその彼に替わり、3両目の位置に付いた。

 3両編成となったトレインは相変わらず少し速いスピードを維持しながら走り続けていた。15kmを経過した。

 呼吸も脚も余裕はない状態である。コースの斜度は一定ではなく。上がったり、緩やかになったりを繰り返す。
 
 15kmを経過してから、斜度が上がるとトレインのペースについていけなくなり、その間隔が10〜20mほど開く。そして斜度が緩むとペースを上げて2両目のロードバイクの背後にくっつくということを何度か繰り返していた。

 富士スバルラインには5合目までの距離が道標となって規則的に並んでいる。「5合目まで残り6km」あたりのところであった。前2両のペースが上がった。

 私はそのペースについていける脚の状態ではなく。前2両と私の間の空隙はぐんぐんと大きくなっていって、その隙間にあっという間に多くのロードバイクが入り込んできた。

 やがて、2両編成となって身軽となったトレインは数多くのロディー達の様々な色合いのサイクルジャージの中に紛れ込んでいき、識別できなくなってしまった。

 残り6km・・・ここからが真の試練である。先導役を失った。他者の助けはない。自力で勢いを増す乳酸と戦い、弱い自分の心を克服していかなければならない。

 心拍数は175で貼りついていた。心拍数は正直である。疲れ切ってだれてしまうと、数値は下がってくる。これからは、その数値の導きに従って無心でクランクを回すしかない。

2015/6/14

3374:スタート  

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 天気予報は当たった。朝の4時に起き出し、早めの朝食を済ませて身支度を整えてから5時過ぎに宿の外に出た時、空は淡い灰色の雲に覆いつくされていて、空からは小さめな雨粒が落ちてきていた。

 しかし、雨はそれほど強い降りではなく、天気予報では朝のうちに止むとのことであった。ウィンドブレーカーを羽織ってロードバイクに跨り、スタート会場へチームメンバーとともに向かった。

 防寒着等の入った指定の袋をスタッフに方に預けてから、ウォーミングアップを行った。雨はまだ止んではいなかったが、もうすぐ止むであろう感じであった。

 チームメンバーとともに会場の外の道を何度か往復した。ちょうどいい具合の坂があり、そこを上ってはUターンして下り、また上がった。

 最初は軽めに、後半は3度ほど心拍数をぐっと上げて上った。ウォームアップで一度心拍数を上げておくと、本番で負荷をかけるとエンジンの吹け上がりが滑らかになるのである。

 私のスタートは第9ウェーブ。7時50分の予定である。ウォームアップを終えてからスタートするまで時間があるので、待機場所に行ってじっと待った。その待っている間に雨は止んだ。

 やがてスタートの時間がきた。スタート会場を出てから1.5kmほど走ったところに計測開始ポイントがある。

 そこに達するまではゆったりとしたペースで走る。参加人数が多いので道は多数のローディーで埋め尽くされていた。

 様々なロードバイク、様々なサイクルウェア、様々な年代の人々が入り乱れていた。ゆっくりと計測開始地点までのアプロ―チを進んでいくと、やがて前方に計測開始地点が見えてきた。

 そこに向けて徐々にペースを上げていった。計測開始地点を越えると、KUOTA KHANのスポークに取り付けられたセンサーに反応して計測が開始される。そのタイミングに合わせてサイコンのタイマーのスタートボタンを押した。するとタイマーは勢いよく時間を刻み始めた。

 ちょうど1ケ月前に料金所を過ぎたあたりから5合目までの23.5kmのタイムトライアルを行った。その時のタイムは1時間24分50秒であった。

 本番は料金所手前500m程から計測が始まる。5合目のゴールまで24kmの道程である。タイムトライアルの時間に500mを上る時間を約2分と仮定して、距離が増える分の2分を加算した1時間26分50秒が今日の予定タイムと言える。

 体調も調子もタイムトライアルの時と大差はない。まずまずである。トラブルがなければ、「90分切り」は十二分に可能である。

 スタートしてからしばらくはペースを上げすぎないように注意しようと思っていた。しかし、蓋を開けてみると2kmぐらい上ったところですでに心拍数は「178」と表示されていた。

 少しレースの雰囲気に呑まれてしまっていたのかもしれない。「あれ、なんでこんなに高いのだろう・・・少し上げすぎか・・・ペースを抑えないと」そう思ってクランクを回すペースを少し抑える。

 しかし、気づくとまた心拍数は予定値よりも高い値を表示する。「それなら、それでこのペースで行ってみるか・・・」と、多少開き直り気味に走り続けた。心の片隅では「後半失速しないであろうか・・・」と不安に思いながら・・・

2015/6/13

3373:30%  

 中央高速は混んでいた。国立・府中インターから高速に乗ったのであるが、高速に入ってすぐにペースはゆっくりに・・・八王子ジャンクション前あたりからは相当なスローペースに陥った。

 原因は事故であった。小仏トンネルに入ってすぐのところで事故が発生していたのであった。3車線から2車線に車線が減って小仏トンネルに入っていくのであるが、そのトンネルに入ってすぐのところが事故現場であった。これでは渋滞になるのも当然である。

 事故の当事者は気の毒であるが、「よりによってこんなところで・・・もう少し手前ならよかったのに・・・」と心の中で思ってしまった。

 事故現場を過ぎると急に流れ始めた。河口湖インターで降りて受付会場そばの駐車場へ・・・まだ受付は始まっていないが、駐車場はすでに満車に近い状態になっていた。

 車からロードバイクを降ろして、サイクルウェアに着替えた。いつものように受付前に軽めの試走を行うのである。

 昨年、一昨年と富士スバルラインを5合目まで上ったが、今回は半分ほど上って引き返す予定である。

 料金所を過ぎて、ゆっくりとしたペースで上り始めた。天気はまずまず、結構蒸し暑く感じた。ゆっくりとしたペースであるので心拍数は上がらない。125から130ほどの数値がサイコンに表示され続けていた。

 体調はまずまず・・・体に違和感を感じることろはなかった。しかし、大丈夫だと思っていた明日の天気が、不安要因となることに・・・

 天気予報が変わったようで、「明日の朝は雨が降る可能性が高く、気温も低めに推移します・・・」と会場内で何度かアナウンスされていた。

 「雨か・・・ひどくないと良いけど・・・」

 少々顔色が曇った。上り始めてしまえば、多少の雨であれば、それほど気にならないであろうが、スタートまでの待ち時間に体が濡れてしまうと冷えてしまう可能性が高い。さらに当然下りは辛いものになるであろう。数日前の天気予報からすると大丈夫と安心していたのであるが、少しがっかりである。

 1時間ほどゆっくと上って、展望台で少し休憩した。そして一気に下った。受付会場には数多くのブースが出ている。

 それらのブースを眺めながら受付を済ませた。ブースには真新しいロードバイク関連の製品が並んでいた。

 ついつい視線はそういった魅力的な製品に向かう。特にカーボン・ホイールがあるとふらふらとそちらに吸い付けられていった。

 来年はコンポーネントを新調する予定であるが、「ついでにカーボン・ホイールもいっちゃうか・・・」という気にもなってしまう。

 受付会場を後にして宿へ向かった。空には灰色の雲が広がり始めた。「本番が今日であればよかったのに・・・明日はやはり雨か・・・」その空を覆い尽くし始めた雲を見ているとそう思わざる得なかった。

 「雨であろうが、曇りであろうが、とにかく90分切りを達成しなければ・・・」そんなことを思いながら宿の部屋へ入った。

 受付会場で行われていたトークイベントで「一つの目安とされる90分切りを達成できるのは参加者の約30%ほどです・・・」と話されていた。

 昨年も一昨年もその30%には入れず、多数派の70%に分類されてしまった。今年こそは少数派の30%の仲間入りを果たしたいものである。

2015/6/12

3372:パン断ち  

 ほぼ2ケ月に1回の頻度で整体の施術を受けている。場所は杉並区下井草にある「PRO・FIT」。特に腰痛や四十肩などの痛みを伴う症状に苦しめられているわけではない。

 ロードバイクやテニス、さらにはゴルフ等のスポーツや、日常生活における一定の癖などにより、体には疲労感や歪みが生じてきてしまうので、定期的にニュートラルな状態に戻すためである。

 私の場合、2ケ月ほどすると背筋に張りを感じるようになる。特にロードバイクは深い前傾姿勢を長時間続けたりする。疲れは背中や腰の筋肉に溜まりやすいようである。

 今日は早めに仕事を切り上げて、「PRO・FIT」に向かった。予約の時間は午後6時である。明後日はMt.富士クライムの本番・・・それに合わせて今日予約を入れておいた。

 背筋に張りが出ると、姿勢が悪くなる。猫背気味になるのである。それが1時間半の施術を受けると、背筋の張りは見事に解消して、姿勢がずいぶんと良くなる。

 まっすぐ上に上がりづらかった右肩も具合がよくなり、すっと腕をまっすぐ真上に上げることができるようになる。また、脚の筋肉も緩やかな状態になり、リラックスした感じになる。

 前回の施術から経過した月日のうちに体にこびりついた様々なものが、削げ落ちていくような感じである。

 「いろんなものを背負っていたんだな・・・」

 と、施術後すっきりとすると、しみじみ感じたりする。

 1時間半の施術を受けている間、チューバホーンさんから「痩せました・・・?」と訊かれた。「ええ、70kgを切ることがなかった体重が69kgほどになりました・・・」と答えた。

 特に無理なダイエットをしているわけではないが、Mt.富士ヒルクライムが近づいてきたので、食事には少し気を使うようになった。

 最近では完全に悪者扱いの「炭水化物」の摂取量を減らすよう心掛けたのである。私はもともと「パン党」である。

 朝食は決まってパン。おやつもパン。「パン、パ、パン・・・!」という感じの日常を送っていたのであるが、ここ数ケ月は「パン断ち」をしている。
 
 かわりに口にするのは「シリアル」。しかもご丁寧に牛乳ではなく豆乳をかけて食している。その効果は徐々に出てきた。

 70kgを切ることがほとんどなかった体重は、おおむね69kg前後で推移している。これは30年ほど前、私が大学生であった頃の体重である。極端な減量ではないが、ヒルクライムにおいてこの差は大きいのかもしれない。

 フレームを新調して軽量化・・・「パン断ち」して減量化・・・整体で体の歪みを除去・・・いよいよ準備は整った。明日はチームメンバーと一緒に現地入りである。

2015/6/11

3371:天気予報  

 週間天気予報を見る限り、Mt.富士ヒルクライムが行われる14日の日曜日に雨が降ることはなさそうである。梅雨入りが発表された後だけにやはり天気は気になっていた。

 初めて参加した一昨年も2度目である昨年も幸いに雨に降られることはなかった。3度目となる今年も今のところ大丈夫そうである。

 普段のロングライドの際、雨が降っているときは中止になる。なので、レインジャケットは持っていなかった。

 少し前までは「やはり、梅雨時期だから買っておいた方がいいか・・・本番で降られる可能性が相当あるからな・・・」と思っていた。しかし、どうやら買ってもレインジャケットの出番はなさそうである。

 Mt.富士ヒルクライムの受付は前日の13日。前日に数台の車に分乗して、現地に向かい、受付を済ませてから、チームメンバーとともに走る。昨年も一昨年も富士スバルラインをゆっくりとしたペースで5合目まで走った。

 ゆっくりとしたペースでも24kmの道程を上るわけであるから、それなりに疲れる。今年は疲れを翌日に残さないため、途中まで上って引き返そうかという話になっている。

 今週は体に疲労感を蓄積させないために、ジムでのトレーニングも軽めで済ませている。まずは時間を短めに・・・普段は1時間であるが45分で切り上げる。

 そして、強度も軽め・・・普段は200ワット以上のパワーを維持して重いペダルを漕ぐが、それを半分以下に下げている。

 軽めに設定したペダルをくるくると回す。心拍数も110〜115ほどの範囲に納める。「軽い負荷の有酸素運動」という感じのトレーニングである。

 体から流れ去る汗の量も控えめ。それでも45分間漕ぎつづけるとそれなりの汗は流れるものである。

 シャワーでさっぱりした後、普段のトレーニング後に感じる脚の筋肉が軽く痺れるような疲労感はない。少々物足りなさのようなものを感じないわけではないが、本番当日に向けて疲労感から調子が下降しないように慎重に調整している。

 天気は大丈夫そう・・・体の疲労感も大丈夫そう・・・あとは結果のみである。トラブルさえなければ「三度目の正直」を達成できるはずである。

 もしも、先日のロングライドでの時のように上っている途中でタイヤがパンクするようなことが起こったならば、空から雨が降らなくとも、私の顔は溢れる涙で濡れるであろう・・・



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