2015/5/19

3348:タイム  

 斜度の緩い高速走行エリアを過ぎると、また道は上へ向かって傾斜し、その度合いを強めた。重いギアではしっかりとクランクを回せなくなるので、レバーを操作してギアを軽いものへ素早く切り替えていった。

 最終盤となるこの地点までくると、2本の脚には相当な疲労が蓄積している。鉛のように脚は重い。その重い脚に鞭を入れるのは、気力である。気力を文字どおり振り絞るようにして、この最後の難関を越えるべく走った。
 
 「もう少し・・・速く・・・もう少し・・・力強く・・・」

 なかなか思い通りに動いてくれない体に向かって、そんなことを念じながら、しっかりとした斜度となった舗装道路を走っていった。

 左手には大型バスの駐車場がある。運悪くバスが出たりする時に出くわしたりすると立ち往生しかねない。今日は幸い行く手を遮られることはなかった。

 やがてゴール地点が目に入ってきた。ゴール地点には先に到着したメンバー2名とサポートしてくれたリーダーの奥さんと娘さんがいて、声援を送ってくれた。

 その声に押されるようにして、ゴール地点を通過した。サイコンのタイマーを止めるためにPOLAR CS500の赤いボタンを押した。

 その小さな画面に無表情に表示されたタイムは、「1:24:50」であった。私はその数字を確認してから、ロードバイクを止めた。左足のクリートをビンディングペダルから外し、左足を地面に着けた。

 呼吸を整えるためにハンドルに上半身をもたれさせるようにした。激しい呼吸は徐々に納まってきた。しかし、時折咳きこんだ。過酷な燃焼を続けたエンジンから有毒な排気ガスが噴き出るかのように、その後もしばらく咳が続いた。

 目標としていた1時間30分を余裕で切るタイムである。本番では料金所手前が計測開始ポイントとなるので、今日走った距離よりも500mほど長くなる。500mの坂は2分で上り切れるであろう。今日のタイムに2分を加算しても、1時間30分は余裕で切れる。

 当日、身体やロードバイクにトラブルが発生しない限り、「3度目の正直」を達成するのはほぼ確実であろう。ほっとした・・・そして、1年半ほどの間、執拗にそして諦めることなく継続してきた「一日置き作戦」の成果に少しばかり嬉しさを感じた。
 
 私の年齢は52歳である。50歳でMt.富士ヒルクライムに初参加した。そして51歳の昨年が2度目・・・一昨年より昨年の方が3分ほどタイムは良くなった。しかし、目標であった1時間30分を切るにはあと1分半ほど足りなかった。そして、今年が3回目の参加となる予定である。

 50歳を過ぎると、何もしなければ体力も気力も時間の経過とともに下降線を描く。その自然な下降線を平行にするだけでなく、持ち上げようというのであるから、それなりの覚悟と努力は必要なわけである。

 タイムトライアルに参加したチームメンバーが順次ゴール地点を通過していった。皆一様に疲れた表情をしていたが、その表情の裏側にはなにかしら輝いたものが見え隠れしていた。

 走っている最中に流れ落ちていった汗が一瞬太陽の光に反射して輝くように、瞳の奥にはキラキラとした光が宿っている・・・そんな印象を受けた。

 5合目は多くの観光客で大賑わいであった。やはりそのほとんどは中国人観光客であった。皆大きな声で喋っていた。

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