2015/5/15

3344:カセットデッキ  

 「雰囲気、確かに似ていますね・・・」

 「ゆみちゃん」はそう呟くように言った。

 「このバンドは1980年代にイギリスで活躍したんだ。活動期間は5年ほどと短かかったんだけど、結構影響力があって・・・」

 私は出来上がったばかりのナポリタンを食べながら、彼女と話した。「ゆみちゃん」は何も注文はしなかったが、女主人は当然のことのように、彼女のためのナポリタンを作りはじめていた。

 「今聴いても全然古く感じないですね・・・」

 「もしかしたら『ねこ』のメンバーも影響を受けたのかもしれないと思って・・・」

 「作詞・作曲を担当しているメンバーは依然Twitterで、一番好きなアルバムはデビッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』だって言ってた・・・」

 「ジギー・スターダスト・・・随分古いアルバムだね・・・でも名作だよ。全く隙のない完全ともいえる作品かもしれない・・・そのメンバーはセンス良いね・・・」

 それからしばしの間、彼女は贔屓にしているインディーズバンドである「ねこ」のことを熱心に話し始めた。

 私は、うなずきながらその話を聞き続けた。7月には東京の下北沢のライブハウスで「ねこ」のライブが3日間あるそうである。そのすべてを観に行くといって興奮していた。

 「3日連続で・・・?」

 「そう・・・金、土、日の3日連続・・・」

 「体力持つの・・・?」

 「結構、しんどそう・・・でも、アドレナリン出るから・・・きっと大丈夫。」

 そうこうするうちに、彼女のナポリタンも出来上がり、彼女の前のカウンターに置かれた。そして、いつもセットで頼むアイスコーヒーもその脇に添えられた。
 
 彼女はアイスコーヒーをブラックで飲む。しかし、ナポリタンと一緒に飲むときだけブラックで、アイスコーヒーを単独で飲むときにはミルクもガムシロップも入れるようである。

 The SmithsのファーストアルバムのA面は終わった。カセットテープは回り続けていた。「サ〜・・・」というかすかなノイズがSONY製のラジカセのスピーカーから漏れ出ていた。

 「このカセット借りていいですか・・・?」

 「もちろん・・・もし興味があるのなら、残りの3枚のアルバムのカセットテープも今度持って来るよ・・・全部で4枚のLPを残しているんだ・・・ネットでもCDが1枚1,000円ぐらいで売ってるから、そっちの方が音が良いかも・・・カセットは30年前に録音したものだから・・・」

 「カセットデッキ持っていたんですか・・・?」

 「持ってたよ・・・カセットデッキ・・・SONYだったな・・・見たことないでしょう・・・?」

 「実物は見たことない・・・」

 「もう壊れて随分と前に捨ててしまったけど・・・」



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