2015/5/9

3338:大蛇  

 私は彼女にMitoのイグニッションキーを見せながら言った。イグニッションキーはベッドの脇のテーブルの上に置かれていた。

 「このAlfa Romeoのマークってどういう意味があるんだろう。この蛇と十字架って・・・」

 彼女もテーブルのキーの存在に目をやってから、少し得意げに話した。

 「このマークでしょう。これはね・・・知ってるの。左側の赤い十字架はミラノ市の市章だったはず。Alfa Romeoの創業地がミラノだから・・・それから右側の蛇は、かってミラノを支配したヴィスコンティ家の家紋なの・・・」

 「家紋か・・・この蛇って舌を出しているのか、火を吹いているのか、それとも人を飲み込んでいるのか・・・良く分からないよね・・・この赤いところ・・・」

 私は手を伸ばしてキーを取った。それを彼女に見せながら言った。

 「それはね・・・実は人を飲みこんでいるところなの・・・」

 「やっぱり・・・そうなんだ・・・人だったんだ・・・蛇に飲み込まれて断末魔の叫びを上げているような・・・」

 Alfa Romeoのマークの由来を知って、さらに感慨深げにその絵柄を眺めた。

 「Mitoって新型出ないのかな・・・もうだいぶ経つよね・・・」

 「発表されたのが2008年だから・・・何年・・・?7年・・・?」

 「Alfa Romeoは経営状況が厳しそうだから・・・しばらくは無理か・・・」

 私は上半身を起こしてベッドから両足を床に下ろした。ベッドに腰掛けるようにして話を続けた。

 「Alfa Romeoって少し前は147とか159とか、車名が数字だったけど、最近はMitoにGiulietta・・・名前がつくようになったよね。」

 「Giuliettaって実は3代目なの・・・連続してなくて飛び飛びなんだけど・・・初代は相当古い車で1950年代・・・その後2代目が70年代後半に復活して、そしてまた2010年なって3代目が復活・・・リバイバルのリバイバルって感じなの・・・」

 「それだけ、気合を入れて投入したんだろうね・・・でも、Giuliettaはそれほど売れてはいない・・・やっぱりMitoの新型はしばらくでないだろうね・・・」

 私はシャワーを浴びるためにバスルームへ向かった。勢いよくシャワーヘッドから暖かいお湯が流れ出した。それを頭から浴びた。

 ホテルのバスルームには鏡が取り付けてあった。シャワーのお湯でその若干湯気で曇った鏡を綺麗にした。

 そこに映った自分の体を見た。上半身はかなりほっそりとしている。太ももは若干太い。膝から先はほっそりとしている。

 「やっぱりあれは人だったんだ・・・人を飲み込んだ大蛇か・・・なんだか意味深だな・・・そしてエロティックでもある。」

 そんなことをぼんやりとした頭で考えていた。

 バスルームの扉が開いて彼女が入ってきた。私はシャワーヘッドを元の位置に納めた。彼女は私の背後にいた。

 「どうする・・・?また会う・・・?」

 彼女は唐突な感じで訊いてきた。



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