2015/3/17

3285:脇道  

 狭山湖運動公園を左手にやり過ごした先にある駐車場の手前を左に折れた。道幅の狭い脇道に入っていくと、狭山湖周囲の鬱蒼とした木々がこの脇道を囲んでいた。

 この細い道に沿って数件のホテルが並んでいる。そのうちの1件の駐車場にVW POLOを滑りこませた。

 ホテルの入り口の脇にある大きなパネルで部屋を選択して、その番号のボタンを押した。番号を押すとその部屋番号が印字された紙がパネルの下からするすると出てくる。その紙を手にエレベーターに向かった。

 「307号室」と印字された紙を手にエレベーターで3階に移動し、部屋に入った。部屋はそれほど広いわけではないが、清潔に清掃されている。

 ここへ来る少し前、近くのイタリアンレストランで二人でランチをとった。その約1時間ほどの食事の間、お互いの子供の話などをしていた。

 彼女には一人娘がいる。私の上の娘と同じ年である。大学4年生で来月4月からは社会人。その就職活動の時の話で盛り上がった。二人ともどうにか内定を獲得して、就職浪人はしないで済みそうである。

 「ちょっと、肩の荷が下りた感じがする・・・」

 彼女は微笑みながらそう言った。

 「うちはまだもう一人残っているけど・・・大学を卒業して社会人になれば、とりあえず親としてのやるべき義務は果たせたかなって気がするね・・・あとは自分でやれって感じ・・・」

 「年月って気づくともうこんなに経ってしまったんだ・・・とちょっと驚くというか寂しい気もするけど・・・」

 「自分自身はそれほど変わっていない気がするけど、子供の成長で確かに時間が経過したということが分かるよね・・・それだけの時間が経過して、自分自身もその分ちゃんと歳をとっている・・・」

 「そうね・・・自分の時計は止まっているかのように感じているけど、本当はちゃんと進んでいるのよね・・・自分が歳をとっていくのが嫌だから、あえて時計を見ないようにしていただけなのかも・・・今年誕生日が来たら47歳・・・それが現実よね・・・」

 彼女は「広島産大粒牡蠣のペペロンチーノ・カラスミ仕立て」を食べていた。私は「ヤリイカとチェリートマトのペペロンチーノ」を頼んでいた。プリッとしたヤリイカが美味しい一品である。

 そんなふうに子供の成長の話や自分達の年齢の話をしながら、大きな窓から緩やかな陽が差し込む窓際のテーブルで穏やかな時間を過ごした。

 「そろそろ、この関係も終わらせる頃かもね・・・お互い壊すことのできないものがあるから・・・」

 私はそう彼女に言った。彼女はコップの水を口に持って行った。

 「もうどのくらい・・・5年・・・6年・・・それくらい続いたのかな・・・」

 「6年ほどだね・・・」

 私はあと2つ残っているヤリイカのうちどちらにしようかと少し悩んで大きいほうへフォークを刺した。それをゆっくりと口に運んだ。

 「もう、6年か・・・」

 彼女は私の目をじっと見た。その目の色合いの中にはつかみどころのない感情がゆっくりと渦巻いているように感じた。悲しいわけでもうれしいわけでもない、穏やかでも激しいわけでもない、今日の空模様のようにつかみどころない感じであった。



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