2015/3/5

3273:ヌンチャク  

 ブルース・リーが爆発的人気を博したのは1970年代前半。1971年に「ドラゴン危機一発」が大ヒット。ブルース・リーはトップスターに躍り出た。

 ブルース・リーは俳優のみでなく、1972年の「ドラゴン怒りの鉄拳」では主演と武術指導を担当し、同じ年に制作された「ドラゴンへの道」では、監督・脚本・主演もこなした。

 この3作は日本でも受けた。そのころ、小学生低学年であった私は、「ブルース・リーごっこ」で友人たちと騒いでいた記憶が残っている。

 ブルース・リーで印象的なのはその叫び声と、ヌンチャクである。「アッチョ〜アチョ!アチョ〜・・・」というあの独特な叫び声は怪鳥音と呼ばれているようであるが、強烈なインパクトがあった。

 そして、ヌンチャク。超高速で繰り返される、見事なヌンチャクさばきを見ていると、テンションが上がったものである。

 ヌンチャクが猛烈なスピードで風を切り裂く「ビュン!ビュン!」という風切音が映画では誇張気味に録音されていて、右わきでヌンチャクを挟み込んで、左手を前に突き出して例の怪鳥音を発してきめのポーズをとると、「絶対にブルース・リーは負けない・・・」と小学生であった私は思ったものである。

 最近は寝る前にレコード片面のみを聴く習慣が身についた。お疲れ様傾向が続いているので、長い時間聴いている集中力がないのである。

 レコード片面だけと思うと、レコード選択する際にもちょっとした緊張感をもって臨むことになる。「今日はどれにするか・・・」しばし、インデックスを眺める。

 今日、目が留まったインデックスには「EKATERINA NOVITZKAYA」と書かれていた。そのインデックスが区切るエリアには現在1枚のレコードしか保管されていない。

 そのレコードのA面に針を落とすことにした。ハイドンのピアノソナタが流れ出した。その流れは清澄で軽やか、そして何かしら聴く者の心をきゅっと引き締めるような効果をもたらしてくれる。

 私は、そのピアノソナタの淀みなく流れていく姿形に、ブルース・リーのヌンチャクさばきに心ときめいた小学生低学年の頃のことを思いだした。

 ピアノソナタとヌンチャク・・・交わるはずもないものであるが、何故かしら心のなかでは「ビュン!ビュン!」と猛烈なスピードで空を切る風切音がし、きめのポーズで突き出した左手が見えた。

 その左手は手のひらをこちらに向けてまっすぐに伸ばされていた。それを凝視していると、その左手はくるっと反転し手の甲をこちらに向けた。そして、やや間があって人差し指から小指の4本の指が綺麗な隊列を作って、ひょいひょいと3度ほど動いた。「こい・・・こい・・・」という合図である。

 私はEKATERINAのピアノの音のなかに埋没することにした。



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