2015/3/31

3299:烏の濡羽色  

 「午後からは天気が崩れる・・・」というのが今日の天気予報であった。時坂峠を上り終えると、空には灰色の雲が・・・

 「ちょっと雲行きが怪しくなってきたな・・・」

 記念撮影を終えて、上ってきた峠道を下り始めた。下り終えたところにある有名な豆腐屋さん「ちとせ屋」で「うの花ドーナツ」と豆乳をいただいた。ここの「うの花ドーナツ」は実に美味。お土産に箱入りでたくさん買っていく人もいる。

 しっかりとエネルギーを充填したからか、灰色の雲の威圧感に圧されたのか、帰り道を行く7両編成のトレインは特急で走った。

 平坦路をスピードに乗って走るのは気持の良いもの。身長が高く70kgの体重がある私にとって平地を高速巡航するのは比較的楽である。慣性の法則にのって風を切って走っていくと脳内には麻薬成分が染みだしてくる。

 檜原街道、睦橋通りを高速で走り抜けて、拝島駅そばのファミリーマートで休憩をとった。空は薄い灰色の雲に覆い尽くされていたが、雨がすぐ降りだしそうな気配はなかった。

 「きっと夕方から降りだすのであろう・・・」

 曇っていても気温は高く空気は相変わらず柔らかであった。休憩を済ませて残り少なくなった道を走り終えた。どうにか雨に降られることはなくロングライドを終えた。

 フレームを新調したばかりであった。「雨にはふられたくないな・・・」という気持ちが心の奥底に堆積していたのでほっとした。

 自宅に帰りつくとさっそくロードバイクの清掃に取りかかった。WAKOSの「VARIOUS COAT」を取り出し、付属しているマイクロファイバークロスに吹き付ける。そしてフレームを拭きあげた。

 「黒は良いな・・・艶あり黒は・・・」

 事務所の営業車として使っているVW POLOも色は黒。黒は汚れが目立つという欠点がある。特に春のこの時期は大変である。スギ花粉や黄砂やらPM2.5などが大挙して訪れるからである。せっかく洗車しても数日もすると「汚れてるな・・・」って感じに成り果ててしまう。しかし、綺麗に洗車した直後の黒はとても気持ちが良い。

 ロードバイクの黒もワックスでピカピカに磨き上げると「気持ち良いな・・・これ・・・この烏の濡羽色のような艶・・・良い・・・実に良い・・・」という感じなる。

 KUOTA KHANをサイクルスタンドに掛けた。黒く光るKHANは静かに眠りについた。その眠りから覚めるのは1週間後の予定である。

2015/3/30

3298:2度目  

 「時坂峠」と書いて「とっさかとうげ」と読む。私が4年前初めてヒルクライムに挑戦したのは、この峠道であった。

 その時は、どうにかこうにか足を着かずに上れたが、グダグダに疲れ切った記憶がある。もちろんバトルなんて論外で、斜度のきついところではフラフラしながらどうにか倒れないで上るのが精一杯であった。

 「それから何回この峠道を上ったのであろうか・・・」そんなことをぼうっと考えたりしながら、ヒルクライムを開始した。

 ゆっくりと入って、徐々に巡航ペースに持って行く。ここはいわゆる「激坂」ではないが、斜度はしっかりとあり、脚と心臓に負荷はそれなりにかかる。

 1kmほど上ると、心拍数は170〜175の間を行ったり来たりする。このくらいであればそれほど消耗しないはず・・・後半もペースを維持できる。

 1km程上ったあたりから、4名のメンバーがペースを上げていく。4台のロードバイクは縦に綺麗に連なって前をすいすいと上っていった。

 私はペースを上げることなく、巡航ペースを守った。時坂峠は中盤が厳しい。終盤は少し斜度が緩む。

 「中盤を巡航ペースでやり過ごし、終盤になったらペースを上げる・・・」そんなことを疲労のため少しぼんやりしてくる頭の中で考えていた。

 上り続けるうちに、前の4台のロードバイクは縦に長くなり、視界には2名のメンバーの背中しか入ってこなくなった。

 見晴らしの良いところに達すると残りは1kmほど・・・そこからペースを少し上げた。心拍数は180・・・呼吸はより一層激しいものになる。

 すぐ前を走るメンバーの背中が近づいてきた。どうにかかわせた。心拍数が180を超えると時間の経過とともに体の消耗度はぐんぐん上がってくる。脚に溜まる乳酸もその存在を強烈に主張し始める。

 3番手のメンバーの背中は30mほど前に見えていた。ペースはそれほど上がっていないようであった。

 「追いつける・・・」そう感じて、ペースをさらに少し上げた。徐々に間合いは詰まってきた。ゴールが近づいてきた。

 前を走るロードバイクの後輪が少し大きく見えてきた。15m・・・10m・・・もう少しでぴたりと背後に付ける・・・

 しかし、ぴったりとはりつくことはできずにゴールを迎えた。ゴール後は皆一様に「きつかった・・・」と呼吸の合間から言葉を漏らす。

 私は両足をペダルから外して、ハンドルにもたれるようにして呼吸が静まるのを待った。7台のロードバイクが揃ったところで少し先にある峠の茶屋まで走り、見晴らしの良いところで休憩した。

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 KUOTA KHANを丸太のベンチに立て掛けた。メリハリのあるプロポーションが美しいロードバイクである。KHANとは今日で2度目のロングライドとヒルクライムである。今後少しづつ一緒に多くの経験を積んでいくのであろう。心の中で「よろしく・・・」と軽く頭を下げた。

2015/3/29

3297:時坂峠  

 WAKOSのVARIOUS COATはスプレーして拭き取るだけのガラス系コーティング剤。車、バイク、自転車、ヘルメットから、ゴルフクラブ、釣りロッド、換気扇やクリア塗装の家具まで使えて、便利な優れものである。

 VARIOUS COATによってさらに艶々になったKUOTA KHANに跨って朝の7時に家を出た。TIMEのペダルにクリートを差し込む。

 SHIMANOの時は「バコ・・・」という感じの鈍い音がした。TIMEの場合は「カチャ・・・」と少し甲高い音がする。

 今日は昨日に続き暖かい一日になる予定であるが、心配されるのが午後の天気。午前中は大丈夫、しかし午後からは天気が崩れるというのが今日の天気予報である。

 そこで、今日の目的地は「時坂峠」に決まった。往復距離が80kmと短く、上りも時坂峠のみであるので、帰り道を高速走行すれば比較的早い時間に戻ってこれる。雨が降りだす前に戻ってくる目論見である。

 今日のロングライドの参加者は7名。ORBEA2台、RIDLEY2台、BH1台、MR1台、そして私のKUOTA1台という内訳である。

 朝のうちはウィンドブレーカーを着用していたが、走り出してしばらくすると暑くなってきた。今日も昨日の土曜日同様、気温は昼に向かってぐっと上がっていく予定である。

 空気は春らしく柔らかく感じられた。玉川上水沿いの道には桜の木が多い。昨日一日で桜の開花具合は進んだようである。4分咲きから6分咲きといった具合である。今日と明日も暖かい。満開は明後日3月31日ぐらいか・・・

 拝島駅そばのファミリマートで休憩を済ませ、国道16号をくぐって睦橋通りに出た。ここは広い道路。多少のアップダウンはあるがほぼフラット。

 睦橋通りは信号が多い。タイミングが悪いと信号にことごとく捕まる。今日も何故かしら毎回のように赤信号で捕まった。

 途中メンバーの一人がパンク・・・歩道でバンク修理を済ませて、武蔵五日市駅を目指した。駅前の交差点を左折して緩やかな上りが続く檜原街道を進む。

 檜原街道に入ると風景は徐々に変わっていく。人家が少なくなっていく。木々に覆われた場所を通ると空気が変わる。すっと気温が下がる。マイナスイオンが充満しているかのような爽やかな空気感である。

 檜原村役場を右手に見てやり過ごすとやがてT字路が出現。ここを左折すると「都民の森」に続く。右折するとやがて時坂峠の上り口に着く。

 今日は右折した。少し走ると有名な豆腐屋さん「ちとせ屋」が見えてきた。この「ちとせ屋」のすぐ手前を左折していくと時坂峠の上り口に到着した。

 時坂峠の上りは3kmと少し。距離は短いが斜度はしっかりとある。上り口には右側に駐車場があり、ハイキングに来た人々の車が結構な台数停まっていた。

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2015/3/28

3296:Super3  

 前面上部にはスラントした部分があり、また下部にも斜めにカットされたような造形を見せる。この形状はモダンであり、このそれほど大きくはないスピーカーの押しつけがましさのない良識ある美意識をしっかりと感じさせる。

 そしてその上部、いわゆる天板部分にはネットの向こう側にユニットの存在が分かる。これが斜め上やまっすぐ上に向けて取り付けられたミッドとハイを受け持つユニットである。ウーファーは前面を向いてる。担当する音域のユニットごとに向いている方向がまちまちなのである。

 これは緻密な設計があってのことであろう。単なる思い付きによるものではないはずである。音響学というものがあった時代・・・1950年代後半の設計である。

 英国の名門スピーカーメーカー、Wharfedaleの代表作は「Airdale」。そのエッセンスをよりコンパクトな形状で取りまとめたのが「W3」と言っていいであろう。

 「W3」はその名のとおり3ウェイスピーカー。ウーファーは12インチ。スコ―カーは7インチ。ツイーターのユニットは「Super3」というかっこいい名前の付いた3インチのユニットである。それぞれ、その時代を代表する貴重なユニットである。

 オーディオショップ・グレンの室内には、このW3のペアのみが置かれていた。アンプはLEAKのアンプがラックに数種類並んでいた。

 モノラルプリアンプのVarislope。ステレオプリアンプのPOINT ONE STEREO。パワーアンプはモノラルタイプのTL-10とステレオタイプのSTEREO50。

 W3を駆動するのはモノラル構成であった。VarislopeとTL-10にオレンジ色の灯りがついていた。送り出しは前回と同様LINN LP12。アームはSME 3009R。カートリッジはオルトフォンMC20。

 マラーの交響曲第4番第1楽章と第2楽章。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番、そしてチャイコフスキーの交響曲第6番第1楽章を聴いた。

 W3は音の出方が柔らかい。金属質の硬質感を感じさせことなく、高く広い空間表現をする。厳しく刺すような視線を感じさせることはなく、手を広げ天を仰ぐ女性のような受容性を感じさせてくれる。

 「良いですね・・・このスピーカー・・・部屋があまり広くなくてもしっかりとホール感を感じさせてくれそうですね・・・例えば6畳の和室で聴いても、それなりにワープ感を感じさせてくれそうな気がします。」

 私はコーヒーカップの取っ手を右手で持って、左手を丸く窪ませてソーサー代わりにしていた。カップの中のコーヒーはもう入っていなかった。底に残ったわずかな黒い液体が少しいびつな円環を描いていた。

 「Super3が良いんだよ・・・きっと・・・小さなユニットにこれでもかというほど立派なアルニコがついているんだ。贅沢なつくりだよね・・・良識と良心、それと美意識の勝利って感じのスピーカーだね・・・」
 
 オーナーはそう言って、特殊な表面処理をした布でW3を磨き上げるように拭いていた。W3のキャビネットは鈍く深い光を放っていた。

2015/3/27

3295:W3  

 中野坂上にあるオーディオショップ・グレンに着いたのは午後7時半ごろであった。オーディオショップ・グレンは古いビルの4階にある。そのビルの1階には喫茶店がある。店名は「Mimizuku」・・・時代に取り残されたような古い喫茶店である。

 Mimizukuの店内をガラス越しに覗いてみた。カウンター席には人影はなかった。二つある四人掛けのテーブルにも客の姿はなく、唯一やや奥まったところにある二人掛けのテーブル席に男性客の姿があった。

 私はMimizukuに寄ることはなく、階段を登った。2階には「光通商」という名前の会社が入っている。3階はずっと空いたままのようであるが、「テナント募集」の張り紙は見かけたことがない。

 ようやく4階についた。金属製のドアをノックした。少し甲高い音が響いた。「どうぞ・・・」というオーナーのいつもの返答がドア越しに聞こえてきた。

 オーナーから電話があったのは2日前。「どう、もう暇になった。また面白いスピーカーがイギリスから入ってきたよ・・・WharfedaleのW3・・・WharfedaleというとAirdaleが有名だけど、W3もWharfedaleらしく、ユニットの取り付けが独特でね・・・面白いスピーカーだよ・・・」

 仕事も一段落したので今日ショプに寄ってみた。ドアを開けていつものようにコーヒーの香りがする室内に入った。黒い革製の3人掛けのソファに陣取った。リスニングポジションから4メートルほど前には想像以上に小さな可愛いスピーカーが設置されていた。

 Wharfedale W3は1950年代に作製されたモデル。ウーファーは正面を向いているが、ミッドとツイーターが上向きに設置されている。

 Wharfedaleは音響学者のブリックス博士が設計・製作に携わっていたためか、結構斬新なユニット配置を採用していることがある。

 その斬新なユニット配置はオーディ装置が置かれた室内でいかにコンサートホールのようなサウンドステージを再生することが出来るのかという点に配慮されたもの。そのため独特の音空間が表出されるようである。

 オーナーはいつものようにマンデリンを淹れてくれた。心地よい深い香りが鼻孔をくすぐる。ソーサーに乗せられたカップになみなみと注がれたコーヒーがソファテーブルに置かれた。黒い液体の表面には緩やかな波紋が広がっていた。

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2015/3/26

3294:広告  

 オーディオを趣味とするようになった頃には、3ケ月に1回発売される「Stereo Sound」を楽しみにしていた。毎号購入して、読んでいた。

 しかし、オーディオ機器がどんどん古いものに変わっていく頃合いから、購入することはなくなった。最近では、たまに本屋さんで見かけるとパラパラとめくる程度の立ち読みする。

 先日も、本屋さんで最新号を見かけた。「ちょっと覗いてみるか・・・」という程度の低い関心度のもと、いつものようにパラパラしていた。

 すると、とあるページ・・・見開き1ページを使った広告の左半分に目が釘付けになった。それは銀座にあるお洒落なオーディオショップ「SOUNDCREATE」の広告であった。

 普段は単なる広告であるので、さっと過ぎ去る性質のものであるが、そこにはショップのスタッフの自宅でのプライベートなシステムの写真とその本人が書いた最近導入したオーディオ機器の紹介文が載っていた。

 「いつの間にかヴィンテージ一色になった部屋には、スピーカーが2 機種。ワーフェデールの3 ウェイスピーカーW70C、そして一度耳にしてから思い焦がれて頼み込んで探してもらったTANNOY コーナーカンタベリー DECCA仕様。これらで鳴らすLP12 の音は予想を遥かに超えて、より深い音楽の喜びを私にもたらしました。」

 紹介文の一番下には「竹田」と記入されていた。ということはあの「竹田響子」さん・・・私がLINN LP12の中古をSOUNDCREATEで購入したのはもう7年か8年ほど前のこと・・・その時対応してくれたのが竹田響子さん・・・その美しさは「前職はモデル?」と思えるほどであった。

 その思い出がふっと蘇った。そして私の視線をさらに集めたのが、そのシステムの写真・・・紹介文にあるようにワーフェデールとTANNOYのスピーカーが置かれていて、なんとそれらのスピーカーを駆動するアンプがLEAKであった。

 「プリアンプはPOINT ONE STEREOのように見える・・・パワーアンプはSTEREO50か・・・なんだか、システム構成が我が家と似ている・・・うれしい・・・」

 と、妙に心ときめかせたのであった。

 最近はオーディオショップに足を運ぶこともなくなった。「久しぶりに行ってみようかな・・・」そんなことすら思った。

 もちろんショップに置いてある最新の製品には、ほとんど興味はないが、運良く竹田響子さんに会えたなら「私もLP12、LEAKの真空管アンプ、そしてTANNOYの古いスピーカーを使っているんです・・・」とでも話しかけてみたいと感じた。

2015/3/25

3293:ミニバトル  

 右脚の太ももには鈍い痛みの芯のようなものが沈殿していた。「踏ん張るとまた攣りそうだな・・・」不安も心に沈殿した。

 帰路には二つのミニバトルエリアが待ち構えている。よほど体調が悪くない限り、参戦する方針であるが、先ほどの鋭い痛みが頭をよぎった。

 正丸峠での記念撮影を終えて、下り始めた。路面が乾いているので下りも不安感なく走れる。ウィンドブレーカーが強い風を受けてバタバタと音を立てる。すれ違いに上ってくるローディー数名とすれ違った。暖かくなった天候に誘われたのか、今日は多くのローディーを見かける。

 名栗川の流れに沿って下り基調の道を走っていった。やがて小沢峠へ向かうため右折した。名栗と成木を繋ぐのが小沢峠。上る距離はそれほど長くはないが、疲れた脚には十二分に上り応えのある峠である。

 脚に不安を抱えながら、少しづつペースを上げていく。山伏峠の上り同様ペースはそれほど上がらないが、心拍数はすぐさま限界値近くに達する。

 終盤までだれることなくペースを維持することはできた。心配された右脚太ももは攣ることはなかった。「良かった・・・」ほっとした。

 小沢峠を下り、しばらくは平坦な道を進む。風が出始めた。風を受けながらトレインはハイペースで走っていった。

 成木1丁目の交差点を右折してしばしくねくねとした道を進むとやがて小曽木街道に出る。ここから緩やかに上っていき笹仁田峠を越える。

 この緩やかな上りが最後の坂バトルエリア・・・序盤から少しづつペースを上げていった。このままペースを維持してゴルフ練習場を通過したら一気にペースアップ・・・といった目論見であったが、早い段階でアタックがかかった。

 メンバーの一人が飛び出た。あっという間にその背中は遠ざかっていく。差が広がらないようにペースを上げようとするが、脚が重く切れがない。他のメンバーはペースを上げてアタック潰しに取り掛かっている。

 私はペースが上がらないまま、最後のスプリントポイントに突入した。ここは少し斜度が上がる。ダンシングでぐいっとトルクをかけた。

 しかし、すぐさま右脚には異変が・・・激しい痛みが再来した。さらに左脚の太ももにも鋭い痛みが走った。両脚とも攣った。

 最後はクランクを回すのがやっという感じで痛みを両脚に抱えながらスローペースで笹仁田峠を越えた。

 笹仁田峠を重力だよりの惰性で下りながら「やはり久々のロングライドは厳しいものだ・・・」ということを認識した。これからは定期的に長い距離を走ることが出来るであろう。調子は上がっていくはずである。Mt.富士ヒルクライムは6月・・・まだ時間は十分ある。

2015/3/24

3292:ころころ  

 ゆっくりとした入りで2ケ月ぶりのヒルクライムは始まった。山伏峠の上りは4kmと少し。上り終えるとやや下ってから、右折しながら正丸峠の上り道に途中から入る。そこからさらに1kmほど上る。

 もう1年以上続いている工事区間を抜けてから少しづつペースを上げていった。それに伴って心拍数も上がっていく。視線を下げてその数値を確認するたびに数字は大きくなっていった。やがてその数字は170を超えた。

 ロードバイクはフレームが新調され軽くなったが、体はやや重め・・・心拍数の割にはペースは上がらなかった。

 中盤あたりから数名のメンバーがペースを上げて前に出ていく。「ついていくべきか・・・」と思ったが「どうせすぐにちぎれる・・・マイペースでいこう・・・」と思い直し、無理はせずペースを維持した。

 山伏峠は比較的上りやすい峠であるが、2か所ほど斜度がぐっと上がる場所がある。ダンシングで左へ曲がりながらその難所をやり過ごしていく。

 山伏峠の上りの終盤・・・ぺースを徐々に上げていった。心拍数は180を超えた。ヒルクライムはやはり辛い。辛いが何故かしら辛いだけでない別の感情が感じられる。

 その限界付近でないと感じられない特殊な感情はなんなのであろうか・・・「楽しい」でもなく「うれしい」でもなくもちろん「悲しい」でもない。強いて言うなら、弱虫ペダルの真波山岳くんの決まり文句である「俺、生きてる・・・」のような感情である。残念ながら真波くんのように笑いながら坂を上ることはできないが・・・もちろん背中に翼が生えることもない。

 山伏峠を上り終えて、下った。2度3度と下りのカーブを曲がった。KUOTA KHANは下りもしっかりとしている。軽量なフレームであるが、腰高な感じがしない。くいくいっと曲がりカーブをいなしていった。

 正丸峠の上りへ入った。下りで少しリフレッシュした脚に鞭を入れた。ペースを上げて前を行くメンバーの背中を視界に捉えたかった。

 しかし、もうすぐ頂上近くという辺りであった。右足太ももの膝に近いあたりに激しい痛みが生じた。筋肉が攣ったのである。

 痛みに顔をしかめた。残念ながらこうなるとどうすることもできない。ペースを緩めるしかない。踏ん張るとその痛みは耐え難いものとなる。ペースを緩めだましだまし攣った筋肉をなだめるようにしながらどうにかこうにか上り切った。

 久々に限界付近に追い込まれた脚の筋肉には耐性が足りなかったようである。ゴールしてしばらくは右脚の太ももの筋肉をさすっていた。

 最後で脚の筋肉が悲鳴をあげたが、久々のヒルクラムをどうにか終えた。終えるとほっとする。正丸峠からの眺めはいつものように爽快なものであった。心の片隅にも爽快なものがころころしていた。KUOTA KHANは陽を浴びてきらきらしていた。

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2015/3/23

3291:ラメ  

 山伏峠までの道程は行き慣れたコース。すっかりと頭に入っている。都立狭山公園の入口付近までは遊歩道を進み、そこから旧青梅街道に入る。

 旧青梅街道が新青梅街道と合流して「旧」でも「新」でもない「青梅街道」になる少し手前で岩蔵街道に入るため右折する。すると徐々に風景は鄙びた感じに変わっていく。時折鄙びた風景に相応しい臭いも鼻孔に飛び込んでくる。

 軽いアップダウンを幾つか超えると岩蔵温泉郷に至る。そこから少し行った先のファミリーマートで小休止。補給食をとる。

 KUOTA KHANは実に軽やかに走る。フレームの重量は従前乗っていたORBEA ONIXとは300gほど違う。しかし単なる重量差だけでないものを感じる。

 「しなやかな軽やかさ」とでも表現したい走行感である。きっと使われているカーボン素材の違いが走りの質感の差になっているのであろう。

 2ケ月ぶりのロングライドではあったが、ここまでのところKHANの軽快な走りと優れた振動吸収性に助けられて、それほど消耗していなかった。

 「これならヒルクライムもそこそこいけるかも・・・」少し楽観的な気持ちになっていた。ロングライドが2ケ月ぶりということは、当然ヒルクライムも2ケ月ぶりとなる。

 「まあ、甘くはないだろうな・・・」ヒルクライムでは限界まで自分を追い詰めることとなる。体の状態がしっかりしていないと、そのツケはすぐさま現れるのである。

 KHANのボディーはグロスペイントの黒である。「KUOTA」や「KHAN」のロゴはグレーで印刷されていて、暗いところではほとんど目につかない。

 しかし、陽の当たる屋外に出るとその艶やかな黒からグレーの文字で「KUOTA」や「KHAN」のロゴが浮き上がってくる。さらにその浮き上がった文字を見つめると、キラキラと細かなラメが光っている。

 激しいヒルクライムにおいては、光に当たると浮き上がる「KUOTA」や「KHAN」のロゴ文字のように、体の状態の不十分さが如実に浮き上がってくるはずである。

 ファミリーマートを後にして山間の道を粛々と進んだ。緩やかな上り基調の道をしばらく進むと、山伏峠の上り口に着いた。いよいよここからヒルクライムの始まりである。

2015/3/22

3290:Xpresso15  

 約2ケ月ぶりのロングライド・・・「脚が最後までもつだろうか・・」少々不安を内に抱えながら、集合場所であるバイクルプラザへ向かった。

 昼には気温は上がり、4月中旬並みの気温になると天気予報は伝えていた。しかし、朝の走り出しの時にはまだまだひんやりする空気が体を通り抜けていった。

 バイクルプラザまでの道程は約7km。平坦な道である。その道を走りながら感じたKUOTA KHANの第一印象はというと・・・「思っていたよりも硬くない・・・」というものであった。

 4年間労苦をともにしたORBEA ONIXに変わって、新たな相棒となたKUOTA KHAN・・・KUOTAのフラッグシップの位置づけにある。

 「パリッと乾いて硬い・・・」軽量フレームに対して持っていたイメージは、するっとかわされた。

 「むしろ柔らかさを感じる・・・突き上げ感はなく、振動の角は比較的丸められている。シートステイの独特の形状が効いているのであろうか・・・」そんなことを思いながら、軽快に走っていった。

 今回のフレーム新調とともにペダルも変わった。4年間使用していたSHIMANO DURAACEに替わって、私の両足とロードバイクを繋ぐ役割を担うのが、TIME Xpresso15である。

 昨日実物を初めて目にして、手に持ってみた。拍子抜けするくらいに軽かった。Xpresso15の後にSHIMANOのDURAACEを持ってみる。ずしっとした感覚。

 その手で持った感覚の違いは、実際にロードバイクに取り付けて走ってみてもやはり感じられた。足元が軽い。

 手に持った時には「ちょっとおもちゃっぽいと感じるほどの軽さ・・・耐久性は大丈夫であろうか・・・」と感じたが、踏みしめてもしっかりとパワーは受け止めてくれていた。

 そして、感動的とも思えたのが、その着脱感・・・「カチャ!」と軽快な音を立ててはまり、そして外れる。このスムースな着脱感は素晴らしいとしか表現のしようがない。

 さらにペダルは一定の姿勢を保って足を待ってくれている。やたらクルクルしないので足は迷い足をすることなくペダルを捕まえることができる。

 唯一難点といえるのは、SHIMANOのクリートよりも歩き難いことか・・・ペンギン歩きの度合いが高まってしまう。まあ、これは走行上の難点ではないが・・・

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 KUOTA KHANとTIME Xpresso15という新兵器を手に入れて、気分はアゲアゲであった。今日のロングライドの目的地は「正丸峠」・・・チームで最も多くの回数行く定番のコースである。往復距離は100kmほど。

 新たなギアを手に入れたアゲアゲな気分と久し振りのロングライドに脚がもつか、という不安感とがないまぜになった状態でスタートした。



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