2015/1/29

3238:Polo  

 「この車はなんていう車なんですか?」

 「ゆみちゃん」はその質問にそれほどの興味はないことを示すかのように抑揚のあまりない語調で訊いてきた。小柄な彼女はポロの助手席のシートすっぽりと収まっていた。

 「フォルクスワーゲンのポロ・・・かわいい車でしょう・・・」

 私はエンジンをかけるためキーをイグニッションに差し込んで軽く右に回した。1.2Lのガソリンエンジンはすっと目覚めた。

 「taoさんは背が高いから、大きな車に乗っているのかなって、思ってました。」

 「ゆみちゃん」はシートベルトをした。車をゆっくりとコインパーキングから出した。喫茶店Mimizukuで待ち合わせ、これから渋谷へ向かう。道が混んでいなければ大した距離ではないのでそれほど時間はかからないはずである。

 「小さいものが好きなんだ。不必要に大きなものはどうもね・・・このポロは小さなお利口さんって感じの車で、気に入っている。外観もインテリアもかちっとしていて大人な感じがして、こちらに媚びてこないデザインが良い・・・」

 ナビに目的地の住所を入力したので、ナビが指示した通りの道を進んだ。ナビの画面には指示された道路に紺色のラインが入る。その紺色のラインから外れないように車は静かに進んでいった。道は徐々に混み始めた。

 「昨日ホームページを確認したんですけど、SONY CF-1610はまだ残っているみたい・・・現物が綺麗ならいいけど・・・」

 「ゆみちゃん」はどうやら候補を絞っているようである。CF-1610は1973年の発売のモノラル・ラジカセである。SONYらしい清潔感のあるデザインのなかに、独特なラインによる縁取りがあり、心惹かれるデザインである。当時のエントリー的なポジションの存在である。それだけに、機能はシンプルである。しかし、エントリーモデルだからといって気を抜いた感じは微塵もなく、隅々までしっかりとした作りがなされている。

 「CF-1610はお薦めだよね・・・このモデルはエントリーモデルなんだけど、小さなお利口さんって感じで、しっかりとしているんだよね・・・ちょうどポロのような感じかな・・・ポロのインテリアデザインとこの当時のSONYのデザインって少し共通点があるよね・・・媚びていない感じが良い・・・」

 車内はFM放送が流れていた。Inter FMにチューニングがあっていた。The Lumineersの「Ho Hey」がかかっていた。

 「この曲好き・・・」

 彼女は笑顔でそう言った。

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