2015/1/17

3226:デッカ・コーナー・スピーカー  

 「ゆみちゃん」と来週「Mimizuku」で待ち合わせて、渋谷のヴィンテージ・ラジカセ専門店に行く約束をしてから、私は店を出た。

 そして、同じビルの4階にある「オーディオショップ・グレン」に向かった。階段を上がる。古びたコンクリート製の階段は足音を吸収するかのように冷たく堅く、無表情であった。

 「ゆみちゃん」とMimizukuで合い言葉を交わしたのは何度目であろうか、4回目か、5回目か・・・妙に人なつっこい子である。くったくなく話し笑う。

 あの店の常連のようであるが、なぜあんな時代に取り残されたような古ぼけた喫茶店に頻繁に来るのであろうか・・・それに古いラジカセに興味を持っていたり、70年代ファッションに凝っていて、自分で組み合わせた服装を身にまとい、その姿を写真で取って、掲載されるわずかな可能性にかけて、雑誌に投稿したりしている。変わった子であることは確かなようである。

 そんなことを思いながら4階まで上がった。少し息が切れた。ドアを軽く3度ノックした。灰色の金属製の扉の向こうで「どうぞ・・・」とオーナーの覇気のない声がした。

 私は扉のノブを右手で掴んで時計回りに半回転ほどさせた。そしてこちらがわへ引いた。扉は開いた。「ギイ・・・」ときしんだ音をさせそうな外観であったが、ほぼ無音で開いた。

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 私の目に飛びこんできたのは二つの細長い物体。まだセッティングされておらず、二つは近接して床の上にぽつねんと所在なさそうに佇んでいた。

 その二つの物体はデッカ・コーナー・スピーカーである。製造されたのは1950年代前半。モノラルの時代であるので一つを単独で使うのが本来であるが、二つあればステレオで使用できる。

 正面にはユニットの姿はなく、美しい木目が見えるのみである。二つの木目の模様は当然異なっている。

 設計者のR.ウェスト。ユニットはキャビネット後面に斜め上を向けて取り付けられており、音は部屋の隅にいったんぶつかって部屋に拡散する仕組みである。さらに、ユニット背面からの音はキャビネット内の音道を通って下から出てくる。ユニットは20cmのワーフェデール製。 

 「変わったスピーカーが入ったよ・・・」オーナーから私の携帯に電話が入ったのが三日前・・・「きっと面白いよ・・・」オーナーの声はどこかしら嬉しげな響きに満ちていた。



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