2014/12/11

3189:EL34  

 「素な感じ・・・際立ったものはないけれど、なんだか充足している。こちらの心持ちをなだめ深めてくれるような・・・」

 そんなことを思いながら、私は白いコーヒーカップに3分の1ほど残ったコーヒーを飲んだ。もう少し冷めていた。黒く苦い液体は私の舌の上で2,3度ゆっくりと渦を描くようにして、喉を通り過ぎていった。

 「EL34は今ムラードののものが刺さっているんだけど、これをテレフンケンに替えると、また雰囲気が変わるんだよね・・・ムラードの時にはオースチン ミニ、テレフンケンに替えるとロータス ヨーロッパ シリーズ1という感じかな・・・」

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 「変えてみようか・・・?」

 「あるんですか・・・テレフンケンのEL34・・・」

 「もちのろんだよ・・・」

 PYE MOZARTのパワーアンプにはEL34が水平に設置されている。それをオーナーは手早く外し、テレフンケンのEL34に替えた。

 電源を再度ONにして、先ほど聴いた数枚のレコードを聴いてみた。最初のうちはEL34が暖まりきらないのか、音がほぐれない感じであったが、やがてエンジンオイルが滑らかに潤滑し始めたのか、音もスムースに流れ始めた。

 「やはり違いますね・・・ドライビングポジションが低くなった感じがします。路面の状況もよりダイレクトに体に伝わってきますね・・・」

 私はソファテーブルに置かれていたコーヒーカップを覗いた。その底には薄らと黒い液体の残りが僅かばかり残っていた。一旦コーヒーカップの取っ手にかけた指をほどいた。

 「ちゃんと二つのEL34の違いを出すよね・・・思わずいいこいいこしたくなる。」

 オーナーはそう言って笑った。確かにPYE MOZARTのプリアンプは手で撫でたくなるような愛らしい姿形をしている。

 ふっと頭の中で思った。「PYE MOZARTのモノラルプリメインアンプだとどんな感じなんだろう・・・ステレオで聴く場合には2台必要ということは、この愛らしい機器が2台双子のように並ぶのか・・・見てみたいものである。見てみるとついつい手元に置きたくなるかもしれないな・・・レコードプレーヤーが真ん中にありその両脇を双子のMOZARTが並ぶ・・・その風景は、なんだか瀟洒の極みのような・・・」



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