2014/6/21

3017:焼き  

 浜田山にある顧問先の会社での打ち合わせを終えて、浜田山駅に向かって歩き始めた。駅の傍の井の頭通り沿いにはBMWとPORSCHEのディーラーがある。

 PORSCHEのディーラーをガラス越しに覗いた。もしかしたら新たに発売されたMACANの展示車があるかな、と興味を持ったからである。

 しかし、ガラス越しに確認したところMACANの展示車はないようであった。もしかして、試乗車はあったりしてと思って、ディーラの回りを一周してみたが、それらしいものはなさそうであった。

 そこでディーラの建物のなかには入らずに、横断歩道を渡って駅へ向かった。駅前の商店が並ぶ通りをしばらく行ったところで、脇道に入った。

 時間は11時半を少し過ぎたあたり、もうそろそろお昼時である。浜田山にお昼時に来た時には必ず寄る店がある。

 「手打ちそば 安藤」である。コンクリート打ちっぱなしの店内にはアンティーク感あふれる大きな暖炉がどんと居座り、趣味性の高いテーブルと椅子が並んでいる。異種格闘技的な内装のバランス感覚は実に優れている。

 相当高齢であろう大おかみはどことなくムーミンのような妖精感にあふれている。この世のものから逸脱しつつあるような雰囲気を醸し出していた。

 「卵焼きと鴨せいろをお願いします・・・」

 小おかみに注文した。すると厨房に「焼きと鴨、お願いします・・・」と小おかみははきはきした声で伝えていた。

 「卵焼きのこと『焼き』と言うのか・・・」頭のなかですっとかすかな風が吹いたような気がした。『焼き』は数分待っているとテーブルに出された。熱々ではなく冷たくしてある。色は見事な黄色である。実に滋味深い色合いである。その色合いだけでも少々幸せな気分に浸れる。

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 醤油をかけた大根おろしを乗せて頂く。上品な味わいである。何かが強く主張することはない。すべての味わいが「和」のなかにある。いろんな要素がハーモニーとして調和している。

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 卵焼きを半分ほど食べ終えた時に鴨せいろが到着した。ここのそばはちょっとグレーがかった色合いの中細。よく見ると、細かく蕎麦の粒が散っている。

 コシは強いわけではないがしっかり感はある。口に含むとふっと蕎麦の風味が広がる。喉越しはさらっとした感じではないが、これはこれで比較的心地良いものである。切れ切れな感じの蕎麦ではないが、なんだか安心感がある。

 「ここは午後も休みなくやっているんですよ・・・また来てください・・・」

 会計は大おかみの仕事である。お釣りを渡す時に大おかみは表情を変えずにゆっくりと喋る。そのテンポはまさにムーミンの世界のようであった。



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