2014/6/1

2997:数字  

 Mt.富士ヒルクライム当日の朝は早い。4時に目覚ましのためのアラーム音があちらこちらから鳴り始める。

 眠い目をこすりながら、布団をたたみ、着替えを済ませる。歯を磨き顔を洗いひげを剃る。日常的なこれらの行為を手早く済ませた。

 いよいよ決戦の場へ駒を進める。ORBEA ONIXにまたがり北麓公園駐車場へ向かった。ゴール地点まで主催者側で持って行ってもらう防寒着などは所定の袋に入れてゼッケン番号別に預ける。

 その後スタート時間までの間に、朝食を済ませ、トイレを済ませ、アップを行う。そして、ゼッケン番号ごとにグループ分けされ順次スタートしていく。

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 私のスタート時間は7時45分。スタートといってもいきなり計測が始まるわけではなく、1kmほどアップ走行区間を経て、富士スバルライン料金所の500mほど手前に計測開始ポイントがある。そこを通り過ぎた瞬間、フロントフォークに取り付けられているタグに反応してピッと音がする。その音が始まりである。

 私の頭の中にはとある数字が列挙されていた。

 「5km 20分23秒  10km 38分38秒  15km 57分12秒  20km 1時間16分9秒」

 その数字はしっかりと私の左脳の皺に刻まれていた。昨日富士山へ向かう車で一緒であったチームメンバーが2012年の「funride」のMt.富士ヒルクライム特集号を持参していた。そのなかで1時間30分を切るためのペース配分表がタイム表示で示されていたのである。このペースで上り続けられれば、1時間28分でゴールできるとのことである。

 それを見せてもらってその数字をメモらせてもらった。そして、頭の中に叩きこんだ。現実には難しいとは思いながらも頭の片隅には「可能性がないわけではない・・・」と一縷の望みを残していた証拠であろう。私はその数字をすんなりと暗記した。

 ピッと音がしてから私の心拍数はウナギ上りに高くなった。1kmもいかないうち一つの目安としている170に達した。

 その負荷を極端に超えないようにコントロールしながらクランクを回し続けた。2km、3kmと進んでいった。呼吸はまだ極端に乱れてはいない。

 そして、5kmを経過した。サイコンのタイマーの数字を確認した。20分48秒であった。心拍数はそれほど高くはない。170〜173で推移していた。

 前半は快調であった。脚は比較的軽快に回っていた。10km地点が近づいてきた。心拍も脚も差し迫った危機は感じられなかった。

 10kmを経過した。タイムは39分23秒。頭の中にある数字と照らし合わせた。50秒ほどの遅れである。私の左脳は素早く反応する。「1時間28分のペース配分表の数字だから最大2分遅れても1時間30分を切れる・・・」

 次の15kmの経過タイムが凄く気になりだした。頭の中の数字は57分12秒。遅くとも59分以内で通過すれば・・・「可能性がないわけではない・・・」「可能性がないわけではない・・・」心の中では、高まる心拍数に応じるように同じ言葉が繰り返されていた。

 しかし、Mt.富士ヒルクライムの24kmのコース後半には、「試練」が獲物を狙う猛禽類のように鋭い視線を巡らしていた。私はその視線の網をかいくぐることはできなかった。



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