2014/3/1

2906:クロイツェルソナタ  

 ヴァイオリンソナタ第9番 イ長調 作品47は、ベートーヴェンの1803年の作品である。その当時高名であったフランス人のヴァイオリニストのルドルフ・クロイツェルに捧げられたため、『クロイツェルソナタ』と呼ばれている。

 ベートーヴェンの作曲した10曲のヴァイオリンソナタの中では、第5番「春」と並んで人気が高く、優れた演奏家のレコードも数多く残っている。

 ロシアの文豪トルストイは、この曲を聴いて大変衝撃を受けたようである。この曲に触発されて小説『クロイツェル・ソナタ』を執筆した。嫉妬心にかられ妻を殺してしまった夫の悲劇が描かれている。トルストイはこの曲から、人の心を突き動かし、より熱情を帯びた心情や行動へ誘惑する音楽の力を感じ取ったのであろうか・・・

 ベートーヴェン以前のヴァイオリン・ソナタというのは、「ヴァイオリンを伴うピアノ・ソナタ」と呼ばれていた。それらの曲はとても優雅で典雅な雰囲気にあふれていた。音楽好きな貴族の館の広い居間で、数名の賓客の前で演奏されていたのでないかと想像させるような感じである。

 ところが、この「クロイツェルソナタ」はピアノとヴァイオリンが、うねりながら格闘するかのように、激しく競い合う。

 ベートーヴェンはこの曲を出版する時「ほとんど協奏曲のようなスタイルで書いた」と述べていて、その効果が劇的に表れている。

 トルストイは、小説「クロイツェル・ソナタ」の中で、主人公に「これは貴婦人の前で演奏してはいけない曲だ」と述べさせている。トルストイはこの曲に強く心惹かれるものを感じるとともに恐れのようなものも同時に感じたのであろう。

 今日はこの「クロイツェルソナタ」を、素晴らしい二人のヴァイオリニストの演奏で聴くことができた。

 一人はPaul Makanowitzkyであり、もう一人はSusanne Lautenbacherである。もちろんレコードでの演奏である。場所は杉並区にお住まいのAさんのお宅である。

 Aさんのお宅に着いたのは4時を少し過ぎていた。仕事の合間を縫っての2時間ほどの滞在である。いつものように半地下のリスニングルームにはTANNOY GRFが幽玄な雰囲気で佇んでいた。

 まずは最近のお互いの動向などを談笑・・・その後最初にROKSAN XERXES10のターンテーブルに乗ったのはPaul Makanowitzkyのレコードである。

 ベートーヴェンの「クロイツェルソナタ」が収録されているこのレコード・・・大変貴重な盤である。コレクターの間ではとても高価な価格で取引されている。

 針音がGRFのモニターシルバーから数秒間発っせられたのち、冒頭の哀愁を帯びながらもどこか毅然とした美しさをたたえるヴァイオリンの独奏が流れ始めた。そしてその独奏が一旦途切れ、その余韻をピアノが引き継ぐ・・・



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