2014/2/7

2884:横顔  

 二人は白く広いシーツの上でまどろむように横たわりながら、しばらくの間とりとめのない会話を続けた。それらの言葉は降り落ちてきても積もることなくアスファルトの上で見る見る溶けていく大粒の雪のようにシーツの上で消えていった。

 ベッドの足もとには羽毛の掛け布団が乱れた形でずり落ちていた。部屋の中は暖房が効いていたので、その掛け布団を引き上げることもなく、二人は裸身をさらしていた。

 二人の会話が少し途切れた。二人が意図してそうしたわけではないが、私はそれをひとつの契機として感じた。

 「シャワー、浴びようか・・・」

 そう言って、私はベッドの上で半身を起こした。彼女は左側を下にして横を向く形でベッドに横たわっていた。私は左手をベッドに置いて、上半身を少し左へ捻った。

 「確かに似ている・・・大塚寧々に・・・特にこの角度から見る横顔はそっくりである・・・」彼女の横顔を眺めながら、そんなことを思った。

 彼女は45歳という年齢のわりには均整のとれた体型を保持している。しばらくその体を眺めていた。まるで、彫刻作品か何かのように彼女はほんの少し間微動だにしなかった。その表情はアンニュイでつかみどころのないものであった。

 私はベッドのスプリングの反発を利用してベッドから降りた。彼女はその揺れで我に返ったかのように表情を変え、「このまま少し間でも眠ってしまえたらいいのに・・・」と呟くように言った。

 私は、それほど広くないホテルの部屋を移動してバスルームに向かった。1時間ほど前に二人で入った広い湯船のお湯はまだ十分な暖かさを保っていた。

 そのなかに肩まで浸かった。軽い疲労感と虚脱感に包まれ、その湯船の中で伸びをした。少しすると「寧々ちゃん」はバスルームの扉を開けて入ってきた。

 彼女は湯船には浸からずシャワーを浴び始めた。彼女はなにかしら話していた。シャワーの音に混じってそれらの言葉は私の耳に断続的に到達した。

 私は合間、合間に相づちの言葉を挟んだ。しかし、その内容はしっかりと知覚されることはなかった。

 ぬるめのお湯に体を浸し、シャワーを浴びる彼女の裸身を眺めていた。私の脳は最大限ゆっくりと回転していた。僅かばかりの時間を極力引き延ばそうとするかのように・・・



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