2014/2/3

2880:STAP細胞  

 T字路を左折して21km先にある「都民の森」を目指した。上り基調のアップダウンが延々と続く。8km程進んだ。左に行くと「上野原」右に行くと「奥多摩」と表示されたY字路に差し掛かった時であった。

 ウィンドブレーカーを叩く乾いた音が聞こえ始めた。一瞬「なんだろう・・」と思った。すぐにその音の正体が雨だと分かった。

 「降ってきたか・・・でも、まだ小降りだし・・・大丈夫だろう・・・」都民の森の駐車場までまだ13km程ある。不安気に空を見上げた。断片的に見えていた青空はすっかりと消えていた。

 雨は弱まらなかった。徐々に天から落ちてくる雨粒はしっかりとしてきた。そしてその数も増えてきた。残り4km程になる「数馬」を通過する頃にはすっかり本降りになった。

 「しまった・・・嵌まったな・・・」心のなかで憎々しげにつぶやいた。「しかし、ここで引き返しても濡れることには変わらない・・・上りきろう・・・」そう思ってクランクを回し続けた。

 終盤はしっかりとした上りが続く。心拍数は170ほどで推移。単独ヒルクライムであるのでバトルは発生しない。この一定のエンジン回転数で上り続けた。

 汗は雨粒とまじりあい、顎から落ち続けた。サングラスは水蒸気で曇って視界がぼやけた。雨は激しく降り続けたが、気持ちのテンションは緩むことはなく、粛々と上り坂を進んだ。

 都民の森の駐車場にようやく到着した。車はまばらである。ロードバイクは1台も見当たらなかった。庇のあるところにORBEA ONIXを立てかけ、売店で購入したカレーパンを食した。

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 10分ほど休憩したであろうか、雨が小降りになってきた。空にも明るさが戻ってきた。上りきってしばらくすると体の熱も発散されて少し冷えてきた。

 この時期としては暖かとは言え2月である。濡れた体での下りは相当辛いはず・・・「早く済ませてしまおう・・・」と思い、21kmを今度は逆に下り始めた。

 雨はほとんど止んだが、しっかりと濡れた路面の水分をロードバイクのタイヤは盛大に巻き上げる。それが背中や脚に飛んでくる。

 雨が降ってなくても濡れる。下から雨が降ってくるようである。濡れた体での下りは想像以上に寒かった。歯の根が合わぬ感じである。ガタガタ震えながら延々と下る。少しでも上りがあると嬉しかった。上りではペダルを思い切り漕いだ。体が暖まるかもしれないという淡い期待を抱いて・・・

 今話題のSTAP細胞は、酸性の溶液に浸したり、細菌毒素で細胞膜を傷つけたり、細いガラス管を通すなど様々な手法で、ストレスとダメージを与え続けることにより、初期化した細胞である。

 この長い下りを下っている間、私の体は一つの大きなSTAP細胞になるのではと思えるような試練を受け続けた。これほど下りが辛いと思ったのは初めてである。

 長い下りを下り終える頃には太陽の陽光が降り注ぐようになっていた。全く今日の天気は豹変する。標高も下がったので、気温も上がったようである。寒さに震えて強張った体も少し緩んできた。

 睦橋通りを走る頃にはようやく普通に走れるようになった。今日は珍しい体験をした。普段は厳しい上りが試練であるが、下りも時と場合によっては上リよりも辛いということを体験したのであった。



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