2013/9/30

2755:ゼロスタット3  

 UNICORNさんはピストルのようなものを持っていた。その銃口をレコードの盤面に向けて引き金をとてもゆっくりと引いた。大きな銃声は響かなかった。そして、その引き金をまたゆっくりと戻していった。その操作を2度、3度と繰り返した。

 そのピストルのようなものは静電気除去装置である。製品名は「ゼロスタット3」。随分と昔からある製品のようである。イギリスのメーカーのものとのこと。(+)と(−)のイオンを発生させ、静電気を中和するそうである。

 操作は銃口をレコードに向けて引き金をひいて戻す。これを何度か繰り返す。電気、電池などを一切使用せず、半永久的(約50,000回)に使用可能とのこと。

 UNICORNさんは「5秒かけてゆっくりと引き金を引き、2秒ほど停止、そしてまたゆっくりと5秒ほどかけて戻す・・・これを3度繰り返せばばっちり。」とその操作方法を教えてくれた。

 レコードの静電気対策グッズはいろんなものが出ている。最もポピュラーなものが除電ブラシ。これはブラシの金属部分を持って盤面の上をブラシでなぞるだけ・・・埃も取れる。

 「除電ブラシも効果がないわけではないけど、静電気対策においては効果はそれほど大きくない・・・」とのこと。

 UNICORNさんはレコードをかける前とかけた後、それぞれ丁寧にゼロスタット3を操作した。これなら相当効果が出そうである。

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 色は当日窓から見えていた晴天の青を思わせる爽やかなもの。見た目的なかっこよさも充分に持ち合わせている。価格は1万円ちょっととのこと。

 「これいいな・・・買おうかな・・・」

 今はまだいいが、冬になるとレコードの静電気は猛威をふるう。レコードを両手で取り上げる時、LP-12のフェルト製のマットがレコードにくっついてきたりするのである。これが手元にあれば安心である。

2013/9/29

2754:観戦  

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 今年の国体は東京で行われている。ロードレースは多摩エリアで行われ、普段チームでのロングライドでよく通る道がそのコースの一部になっている。

 そこで、今日のロングは国体ロードレース観戦も織り込んだ設定となった。目的地は「都民の森」。今年、チームのロングで頻繁に行くコースである。往復距離は110kmほど。

 睦橋通り、檜原街道、そして都民も森まで続く道がロードレースのコースの一部となっていた。そこで、普段よりも早めにスタ―トして、選手たちが到着する前に都民の森まで上がり、そこで良い観戦ポイントを探すことにして出発した。

 朝早く出たので走り始めは肌寒かった。しかし、走り進むうちにウィンドブレーカーは不要になった。

 夏のロングライドは辛かった。特に今年の猛暑は半端でなかった。一度は軽い熱中症になって体調がおかしくなったこともあった。

 9月も下旬となり、当然ではあるがずいぶん涼しくなった。涼しいことは良いことである。11月までは快適なロングライドが続くはずである。

 快適な天候に背中を押されて順調に走った。「1年中こんな気候であったら良いのに・・・」とついつい思ってしまうが、時間を留めることが出来なのと同様季節はやがて移り変わってゆく。

 上り終えて観戦ポイントも決まった。そこでしばし待った。最初は「少年の部」。高校生である。続いて「成年の部」。こちらは実業団の実力派選手たち。

 高校生たちは若々しい空気を撒き散らしながら上っていった。「若いって、良いな・・・」と素直に思った。

 続いて「成年の部」。さすがに速い。「あんな風にぐいぐい上れたらな・・・」と思いながら観戦した。

 観戦は終わった。下り始めた。スピードはどんどん上がってゆく。一気に武蔵五日市駅まで走った。下り基調なので結構なハイペースであった。

 体重が70kgもあるので、下り基調の平坦路は大の好物。「ロングライドがこんな道ばかりであったら良いのに・・・」調子の良いことを思う。

 もちろんそんなことは起こり得ない。厳しい上りがあって初めて下りもある。猛暑の夏があって秋の涼しさがある。そういったことなのである。楽ばかりしていてはけして実り多いものは得られないのである。

2013/9/28

2753:午前中  

 高田馬場で西武線を降り、営団地下鉄東西線に乗り換えた。高田馬場から一駅目、早稲田駅で電車は停まり、ドアが開いた。間もなくそのドアは閉まり、電車は動き出した。電車のガラス窓から構内の様子や「早稲田」と駅名が書かれたプレートを眺めた。

 すると、私の心の中には甘酸っぱい液体が沁みだしてきた。その液体はゆっくりと沁み出る。まっさらな紙がごく薄い剃刀になって指の腹に真一文字の小さな傷を付けた時、赤い液体がぷっくりと膨らむように、心の中でその甘酸っぱい液体は丸く膨らんだ。その液体の色は赤紫である。表面張力が一定の限界点に達した時に破れ、その赤紫はさっと心の中に広がった。

 「懐かしい・・・」という一言では片付けられない感情がゆっくりと回る。この駅から10分ほど歩いた所に私が四畳半一間のアパートを借りていたのは四半世紀以上も前のことである。トイレも炊事場も洗面所も共同、もちろん風呂もない部屋であった。その小さな正方形の中で数年暮らした。部屋にはテレビもなく、電話もなかった。そこでは「清貧」という文字が胡坐をかきながら半目になっていた。

 そんな思い出深い駅の次の駅で電車を降りた。改札を通って、地上へ出る階段を登った。地上から地下へ向かって風が流れ落ちていた。地下の方が気圧が低いのであろうか・・・一定方向の風であった。登ろうとしている私にとっては向かい風である。

 流線形の航跡を後方へ伸ばすようにしながら私は階段を登った。登りきると風は止んだ。風の流入は階段とともに始まっているようであった。

 登りきったところにはpontaさんがいた。時間は9時20分。今日は珍しく午前中OFF会である。しばらくするとホスト役のUnicornさんがいらした。

 待ち合わせ場所から数分歩いたところにある独創的なデザインのマンションの一室がUnicornさんのお宅である。リスニングルームは長方形。その長辺に沿って銀色の角を持つ一角獣がその角を向かい合わせるように並び、その二つの銀色が引き合い、ほど良い緊張感を保っている空間には、個々に完全なバランスを有する惑星のようなオーディオ機器が設えられている。それらの機器は各々脈絡なく自転しているのであるが、何かしらの法則性を見出して公転することにより有機的に繋がり合っていた。

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 最初の音はグレン・グールドであった。かれの独自の宇宙はメビウスの輪のように一回ねじれては永遠の循環を続ける。彼の左手は軽々しくは動かない。しっかりとした足取りをもって白と黒の渡り廊下を駆けるように進む。その紡ぎ出す音の質感はとても自然。ピアノの質感がとても良くなっていた。

 その後さまざまな話を栞のように時折折り込みながら、Unicornさん最近の愛聴盤が披露された。そのなかで印象に強く残ったのは、グレングールドとシューベルトのロザムンデであった。

 ロザムンデはPHILIPS盤であった。PHILIPSらしい上品で穏やかな音の質感であった。「PHILIPSの音がする・・・」と思った。同時に「QUAD ESLの音がする」とも感じられた。

 PHILIPSは長年QUAD ESLをモニタースピーカーとして使用していた。この頃はESL63PROの時代であろうか・・・そんなことが刷り込まれていたから、そう感じたのかもしれない。しかし、普段ESLの音を聴き慣れている私がそう感じたのはこの盤だけであった。「なんだかほっとする・・・」

 9時半から12時までの「午前中OFF会」は晴天の青をバックにスムースに進んだ。昼食はUnicornさんの自宅そばのバーガー屋さんで頂いた。ここのバーガーは絶品である。厚みのある円形は見事な手さばきで胃袋の中に流し込まれた。

 「午前中OFF会って結構良いすね・・・健康的で・・・はやらせますか・・・」そんなことを話した。「はっやるかな〜、はっやらないだろうな〜」心の中の松鶴家千とせが間髪入れずに呟いた。

2013/9/27

2752:開墾  

 晴れて澄みわたった空気を貫いてくる矢のような直射日光は熱を孕んでいた。それらが降り注ぐ地面には熱がうっすらと積もっていたが、空気が乾いているからか風が吹くとその熱の堆積は思いのほか軽々しく移動していった。

 秋に季節が移りゆくに従って陽の傾きは夕方の早い時間帯に強くなっていく。重力の重みに耐えきれずにすっと太陽は降りていく。

 それに伴って気温も下がる。夏の蒸し暑かった頃自宅のそばの自然公園で時折見かけた蚊柱が何の前触れもなくその点描画の棒グラフをすっと地面の向かって下げるように、気温は下がった。

 6時少し前にダンススクールが入っているビルの入口に着いた。あたりはすっかりと灰色の色合いに支配されていた。その灰色が濃いものに変わっていくに従ってビルの斜めにあるセブンイレブンの看板の照明は鮮やかさを増していった。

 「7」はオレンジ色と赤に色分けされている。そこに緑色の文字とロゴがクレソンのように添えられている。それらが白い地を背景に浮き上がる。

 その看板を目にして、「そういえば、那須のセブンイレブンの看板は色鮮やかなものではなく白地に焦げ茶色でこれらの文字や記号達が色づけられていたな・・・」と脈絡もなく思い出した。

 皇室の保養地があるため地味な色合いに揃えられていたのである。それを目にした時、商業主義のどぎつさが改めて認識された。

 エレベータに乗って「3」のボタンを押す。ダンススクールの入口には大きなガラスがはめ込まれていて中の様子が窺える。

 例の小学生の男女が踊っていた。それ以外には初老の女性がレッスンを終えたばかりなのであろうか休憩コ―ナーで冷たい麦茶を飲んでいた。

 今晩は週に一回受けているダンスのレッスンであった。始めて4ケ月ほど経過した。進歩のリズムは極めてゆっくりである。

 「2年ほどすると姿勢が意識しなくても変わってきますよ・・・」

 「ジェニファー」は言う。年単位で見る必要があるのであろう。今はまだ、開墾を要する広大な畑地を前に鍬一本で耕し始めたところである。

 鍬一本による人力ではそれほど進まない。それでも、継続すればやがて耕されていく。土は捲れ上がり、空気を内に含む。微生物が活性化され土は徐々に豊富な養分を備蓄してゆく。種がまかれれば、それらの発芽を促す成分がゆっくりと沁み込んでいくはずである。

 脳はこの開墾により何かしら刺激を受けているのであろう。「ジェニファー」と右腰を合わせる。その接触が離れない絶妙の距離感が保てればいいのであるが、複雑なステップに差し掛かるとこともなげにその腰は離れていく。

 鍬が腕の一部になったように感じ、両手の指の付け根が太く硬くなる頃、「ジェニファー」の右腰と私の右腰は寄り添ったままワルツの調べに乗って滑るようになるのであろうか・・・

2013/9/26

2751:dB  

 タイヤは走行距離30,000kmごとに交換している。Mercedes-Benz E-350 BLUTECは尿素を入れたタンクが荷室の下に格納されているためスペアタイヤがない。そのため、ランフラットタイヤが装着されている。

 ランフラットタイヤはパンクしてもしばらく通常の速度で走ることが出来る。側面は頑丈な材質のゴムで出来ている。もしもの時には安心であるが、乗り味は少々硬い。荒れた路面ではごつごつとした突き上げ感がある。

 車を20年以上運転していて実際にパンクを経験したのは一度だけ・・・「20年に一度のことのために・・・あえて、ランフラットでなくてもいいか・・・」というのが正直な感想である。

 ランフラットは乗り味だけでなく、価格面でもデメリットがある。前回30,000km走行時に交換した時には20万円以上のコストが必要であった。普通のタイヤよりも価格が高いのである。

 スペアタイヤがない場合、ランフラットタイヤを装着していれば車検は通る。普通のタイヤであっても、パンク修理キットが装備されていれば車検は通るようである。

 そこで、今回は普通タイヤに交換しようと思っている。自宅そばのイエローハットで見積もりしてもらった。候補は二つ。一つはMICHELIN Primacy HP。交換にかかる費用は工賃や現在のタイヤの処分費も含めて170,000円。もう一つはYOKOHAMA ADVAN dB。こちらはもう少し安く155,00O円。

 もう少しで走行距離は60,000kmに達する。

 「どちらにするかな・・・ハンドリングや乗り味などの総合力ではMICHELINであろう・・・でも静寂性ではYOKOHAMAか・・・商品目にdB(デシベル)と付いているくらいだから・・・」

 E-350 BLUETECはディーゼルらしい太いトルクと燃費の良さがセールスポント・・・どちらかというと癒し系の車である。見かけはけして癒し系ではないが・・・

 「その癒し系の車の性格からすると、dBでも良いかな・・・静寂性高そうだし・・・でもMICHELINを履いていた方が、分かってる感が高いか・・・差額は15,000円か・・・」

 そろそろ、決めなければいけない。あと数日で走行距離は60,000kmを超えそうである。

2013/9/25

2750:マッサージチェア  

 妻が休日に友人の家に遊びに行ってきた。「おでん会」であったとのこと。4名の女性が集まって、おでんを食べる。そしてたわいのない会話をして帰ってくる。その家にはおでん用の専用の調理器具があったようである。

 「あ、そうそう・・・その家にね、大きなマッサージチェアが置いてあったの。リビングに・・・それで20分くらいかな『疲労回復コース』という自動コースでマッサージしてもらったら、気持良かった・・・ああいうの家にあるといいね・・・」

 妻はそのマッサージチェアが気に入ったようであった。

 「マッサージチェアか・・・そういえば、今結構高級なマッサージチェアが売れているって新聞に出てたな・・・」

 そんなことを思った。 

 「でも置く場所が・・・ああいうのは結構場所をとるからな・・・リビングには置きたくないな・・・あっ、そうか・・・ピアノの部屋はどうかな・・・スペース的には空いているな・・・オーディオセットがごっそりと引っ越ししたからな・・・」

 ふと思いついた。

 1階の元応接間にして元オーディオルームに入ってみた。今は妻のピアノがあり、ロードバイクが固定式ローラー台にセットされていて、ピアノの練習室兼ロードバイクのトレーニングルームとなっている。スペース的には充分余裕がある。

 ここにで〜んとマッサージチェアを置いて、BGM用のオーディオセットを購入し、音楽を流しながら、マッサージチェアでゆったりとする。

 マッサージチェアはほぼフラットに近い形までリクライニング状態にしてゆらゆらとゆすられるに任せる。

 「ああ、良いかも・・・・」

 そんな空想を頭に描きながら、今日は帰りに「コジマ電気」に立ち寄った。マッサージチェアのコーナーには6台のマッサージチェアが展示してあった。値段は168,000円から446,000円まで・・・

 「とりあえず、試してみるか・・・」

 座ってみて、リモコンで自動コースのうち一つを選ぶ。マッサージチェアはかすかな機械音を発しながら動き始めた。

 肩・腰・首以外にも足や腕までもんだり、叩いたりと、その動きは多種多様である。一つのコースは15分程度であろうか。終わるともうひとつ別のマッサージチェアも試した。

 両方で30分ほど試してみた。

 「体がすっきりとするか・・・したと言えばしたような・・・かえって体がだるくなったような気もしないことはない・・・でも血行は良くなったな確かに・・・」

 といった印象であった。頭は少々ぼっとしていた。家に帰った。なんだか無性に眠くなった。これもマッサージ効果であろうか・・・

2013/9/24

2749:彼岸  

 三連休の最終日は「秋分の日」である。「お彼岸」なので、午後からお墓参りの予定が入っていた。午前中はフリー。

 「昼前に帰ってくれば大丈夫か・・・あまり遠くまでは行けないな・・・」

 行先は「和田峠」に決めた。「和田峠」なら自宅から往復で80kmほど、それほど距離がない。7時に出れば、お昼前には家に帰り着くはずである。

 「和田峠」の第一印象は最悪であった。

 「なんて意地が悪く冷淡なやつなんだ・・・」と思った。

 2度目もその印象はそう変わらなかった。しかし、3度目、4度目、5度目と回を重ねるに従って少しづつ印象は変わってきた。

 「良いやつではないが、けっして悪い奴でもなさそうだ・・・確かにとっつきにくいというか、人付き合いは悪そうだが・・・」

 そんな風に感じるようになった。もちろんだからといってあの強烈な斜度が緩むわけではないが・・・

 23日はとても涼しかった。天候は曇り。最高気温が24度であったと後からテレビのニュースで知ったが、ロードバイクで走っていても快適そのもの。汗をかいたのは、峠の上りだけであった。

 いつものコースで進んだ。陣馬街道のコンビニで一度休憩を入れ、飲み物と軽めの食糧でエネルギーを補給した。

 和田峠の上り口に着くまでの間2名ほどのローディーとすれ違った。いつもの休日よりも少ない気がした。三連休であったから分散したのであろう。明らかのこの三日うちでは今日が一番快適に走れる天候であった。

 いよいよ和田峠を上り始めた。最初は比較的穏やかな斜度である。やかで厳しい斜度に変わっていく。斜度が厳しくなると心拍数も上がる。

 一般的な最大心拍数の計算式は「220−自分の年齢」である。私の場合「220−50=170」である。しかし、170はあっという間に超えていってしまう。

 175ほどの心拍数で推移する。「まあ、大丈夫かな・・・」と思いながら上がってゆく。時折鬼のような斜度が出現する。すると一気に心拍数は上がり180まで迫る。さすがに少し怖くなる。

 「心臓がストライキを起こすかもしれない・・・」そんな恐怖感に襲われる。

 「けしいて良いやつではないな・・・けして・・・優しく微笑みかけるようなことはない・・」

 最後まで緩まない斜度に辟易しながら、ようやく上り終えた。珍しく峠の茶屋の休憩所にはロードバイクの姿は1台もなかった。二人の小さな子供を連れた家族が有料駐車場に車を停め、ハイキングに出かけるところであった。微笑ましく穏やかな景色であった。

 顎からは汗がぽたぽたと落ちた。汗は地面に落ち、すっと消える。

 「体が冷えないうちに下ろう・・・」

 数分の休憩の後下り始めた。帰りは下り基調・・・ハイペースで駆け抜けていった。ノンストップで走った。快適な気候に助けられて、それほど疲労感なく自宅に到着した。「もうすっかり秋・・・」そんな感慨にふけったロングライドであった。

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2013/9/23

2748:フロー現象  

 昨日は東京ジングフェラインの第5回定期演奏会があった。場所は神奈川県立音楽堂。桜木町駅から徒歩で10分ほど。結構な斜度を有する紅葉坂を上ったところにある。

 桜木町駅に着いたのは12時半頃、開場まで少し時間があったので、紅葉坂の途中にある洋食屋さんでランチを食した。

 店の名前は「洋食屋 綺・Luck」。ランチは1,600円。ハンバーググリル・ランチを頼んだ。前菜盛り合わせ、ハンバーグ、ライスまたはパン、デザートとコーヒーが付いてこの値段であれば、リ―ズナブルと言えるであろう。

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 しかも味が抜群に良い。オーナーシェフ一人で切り盛りしているこじんまりとした店であるが、隠れた名店かもしれない。このオーナーシェフがちょっと神経質で無愛想なことを除けば、素晴らしい店である。

 お腹を満たしたところでちょうど1時半の開場時間となったので音楽堂へ向かった。音楽堂には長蛇の列が形成されていた。その行列は大蛇がどこかの穴蔵に吸い込まれていくかのように建物の中にスムースに収納されていった。

 私もやや左手後方に席を確保。開演を待った。ここの建物は古い。きっと1960年代前半ぐらいに建てられたのではないであろうか。すると50年ほど前ということになる。

 身長181cmの私が座ると両足の膝が前の座席にあたる。かなり窮屈である。古いホールの座席というのはだいたいがこうである。できれば座席のみでも改装してもう少し空間にゆとりが欲しい。

 プログラムはJ.S.バッハ「ミサ曲 ロ短調」。休憩なしで演奏される。4部構成で、全23曲からなる大曲である。演奏時間は約2時間。

 指揮は福島章恭氏。4名のソリストはそれぞれ実力者ぞろい。東京バロックコンソートがバックを務める。合唱は当然東京ジングフェライン。

 東京ジングフェラインはアマチュアの団体であるが、実力は相当なもの。その証拠に、「ヨハネ受難曲」のライブCDがライプツィヒ・聖トーマス教会の関係者に認められ、30倍を超す競争率を勝ち抜いてバッハの聖地での演奏が認められた。

 そして、去る8月25日に聖トーマス教会で「ミサ曲 ロ短調」を演奏し、ライプツィヒの聴衆を魅了したのであった。

 もちろん共演したザクセン・バロックオーケストラや著名なソリストの助けもあったであろうが、東京ジングフェラウインの実力の高さがなければ決してなしえなかったことであろう。

 この経験は大きな自信になったに違いない。昨日の演奏は実に堂々としているように感じられた。もちろん緊張感を持ってコンサートに臨んでいるはずではあるが、その緊張感がマイナスに働くことはなく、素晴らしい集中力をもって最初から最後まで演奏していた。

 アスリートの集中力が高まると「フロー現象」が起きる。平たく言うと「ゾーンに入る」ということである。余計な力みが消え、傍からは余裕があるようにさえ見える。

 そんな「フロー現象」が、昨日の東京ジングフェラインの演奏には垣間見えた。自分達が達成してきたことに対する自信が、純粋な集中力を生み出したのであろうか・・・

 来年の定期演奏会は「マタイ受難曲」の予定である。来年は創立10周年にもあたるようで、記念演奏会でもある。これも今から楽しみである。

2013/9/22

2747:ちょうどいい  

 今日は午後に神奈川県立音楽堂でバッハのミサ曲ロ短調を聴く予定が入っていた。そのため、先週の日曜日と打って変わって晴天に恵まれたが、チームでのロングライドには参加しなかった。

 神奈川県立音楽堂は桜木町駅から徒歩10分ほど、紅葉坂を上りきったところにある。前川國男の設計による趣のある建物である。建てられてから相当な年月が経過したが、その古びた味わいが独特の魅力を醸し出している。

 その予定が入っていたので、午前中桜木町から電車で30分ほどの所にお住まいのseiboさんのお宅に無理を言ってお邪魔させてもらった。

 seibo邸にはかって我が家で活躍した2セットのTANNOY CHATSWORTHの1セットが活躍している。そのCHATSWORTHの華麗な姿を久しぶりに目にしたいという気持もあった。

 1年半ぶりに訪れたseibo邸は、ぱっと見には変わっていないように見えた。しかし、細かくチェックすると、スピーカーの足回りや、アンプ類に変更があった。

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 CHATSWORTHの足元にあったウッドブロック類は全て取り払われ、直置きに変わっていた。さらにプリアンプとパワーアンプも前回訪問時と変わっていた。

 注目はパワーアンプ・・・マランツ製のとてもシンプルなものに変わっていた。既にカタログ落ちしているモデルである。定価が3万円台というコストパフォーマンス抜群のモデル。中古では1万円台で手に入れることができる。そんな値段であっても実に良いパフォーマンスを見せてくれた。プリアンプは知人のマニア自作のもの。

 これらの新兵器が効を奏したのであろうか、そのサウンドステージは高く奥行き感がある。

 「部屋が広くなったような感じがする・・・」

 そう思えた。

 CHATSWORTHのその艶やかな音色は変わっていなかった。その色合い同様の穏やかな音である。心の中で「イギリスの良心・・・」そんな言葉が自然と浮かんできた。

 サイズはコンパクトである。奥行きも浅く、実にさりげない外観をしている。改めて良いスピーカーだと感心する。

 seibo邸のリスニングルームの空間とも実にマッチしている。スピーカの大きさと空間とがちょうどいいのであろう。「ちょうどいいHONDA・・・」という車のCMを思い起こした。「ちょうどいいTANNOY」といったところか・・・

 クラシックやジャズなど数多くの楽曲を聴かせてもらえた。そのなかでも私の耳にはバロック音楽との相性が「最高にちょうどいい・・・」と思えた。

 ちょうどいい時間となったので、私は駅まで車で送ってもらい神奈川県立音楽堂を目指した。天気は良かった。軽く風が吹いていた。直射日光は強かった。それでも日陰ではそれほど暑さを感じなかった。ロードバイクで走ればきっとちょうど良かったはずである。音楽に浸るにもまたちょうどいい天気であった。

2013/9/21

2746:トレーニングチューブ  

 ワルツのステップ・・・表面上の形はだいたい覚えることができた。しかし、姿勢がどうも悪いようである。

 ステップのことに注意がいってしまうと、どうしても視線が下がり、腰が引け気味になる悪い癖が出てしまい、見るからにおどおどしたような感じになってしまう。

 その腰が引けてしまう矯正法として「ジェニファー」はとあるものを取り出した。それはトレーニングチューブである。

 ゴム製で伸縮性がある。このトレーニングチューブを両手に持ってその紐状のチューブをお尻の下の部分にあてがい手で前方に向かって力が加わるようにする。

 そして鏡を見ながら、膝を緩めたり、伸ばしたりを繰り返す。トレーニングチューブによって前方に向けて力が加わっているので腰が引けることなく体の重心移動を行う感覚が身に着く。

 さらにその状態で足を前後したり、ステップを踏んでみたりする。今まで「尾てい骨を前方に押し込むような感じで・・・」と言われても今一つよく分からなかった姿勢の保持の感覚がこれだとよく分かった。

 「これだと分かりやすいですね・・・これってスポーツ店で売っているものなんですか?」

 ジェニファーに訊いてみると、

 「ええ、普通に売っていますよ。本来は筋力トレーニング用のものみたいです。確か2,000円ぐらいだったはずです。」

 と答えが返ってきた。

 「姿勢が崩れる原因のもう一つがホールドですね・・・もう一度確認してみましょう・・・」

 鏡の前でホールドの形を取りながら、徐々にその形を直された。

 「もう少し上体をそらす感じで胸を張って下さい。両肘をもう少し広げて、肩甲骨の間の筋肉をグイッと広げる感じで・・・そうですね・・・良い感じです。この形をキープできれば、姿勢がとても良くなり、初心者卒業って感じですね・・・」

 「ジェニファー」はいつもの笑顔でそう言った。「初心者卒業か・・・」心の中で少しばかりにんまりした。

 ホールドの形が決まると確かに姿勢が凛とする。背筋がピンと伸びきるのである。この姿勢を維持するにはそれなりの筋力も必要である。

 そしてトレーニングチューブで体感した腰を常に入れた状態にしておくにもインナーマッスルがしっかりしていないと難しい。

 たった30分のレッスンであったが、終わると結構疲れていた。

 「やっぱり、スポーツとして捉えた方が良いのかも・・・」そんなことを思いながらダンス教室を後にした。

 「ジェニファー」は、「また来週お会いしましょう。姿勢が随分と良くなりましたよ・・・」と、笑顔で送り出す。「蟻地獄」から抜け出すのは、やはり難しいようである。



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