2013/8/3

2697:マングース  

 私と和田峠は、犬猿の仲である。相性が悪いのである。あと10kg私の体重が軽ければ、もう少し良い関係を築けたかもしれない。ヒルクライムにとって軽いということがいかに重要かということを嫌がうえでも分からせてくれる峠である。

 犬猿の仲というと、対等の関係のように感じられる。しかし、実際はいつも私が負かされる。和田峠は私にとって「天敵」と表現すべきかもしれない。蛇にとってのマングースのような存在である。いつも、その鋭い牙で首根っこを噛みつかれ、ぐうの音も出ないほどに痛めつけられるのである。

 今日は単独でのロングに出かけた。行先は和田峠である。往復距離は90kmほどでそれほど長くない。峠の上り口までもそれほど大変ではなく、まあ楽なコースである。唯一和田峠が激坂なだけである。

 和田峠に向かうためにはまずは二つの橋を越える。「多摩大橋」と「大和田橋」である。その後浅川に沿って繋がっている遊歩道を進む。三つめの橋となる「水無瀬橋」のところで遊歩道から離れ、この橋を渡って陣馬街道に入る。

 あとは陣馬街道をひたすら道なりに走る。圏央道の下をくぐる頃には、その道は山間の田舎道の風情を醸し出してくる。川に沿って連なるその道は、どこかしら日本人の心の原風景のような雰囲気に溢れていて、心を穏やかなものにしてくれる。

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 その道をしばらく進むと青地に白で「左折 陣馬高原」と図で表示された道路標識が見えてくる。そこを左折する。するとすぐに和田峠の上り口に到着する。

 和田峠の上り口にはバス停と公衆トイレがある。ちょうどバスが到着したばかりで多くのトレッキング姿の人々が降り立っていた。

 ここでしばしトイレ休憩をしてから、おもむろに上り始めた。和田峠の上りは3.5kmほど。序盤は緩やかであるが、すぐに斜度は厳しいものに変わる。時折「オイ、オイ・・・」と突っ込みを入れたくなるような厳しい斜度の上りが現れる。

 するとあっという間に追い詰められる。心臓も肺も脚の筋肉もロープ際に追いやられ、それに伴って心の余裕も最小限に・・・

 「なんで、こんなことしているんだろう・・・」

 そんな、根源的な問いが沸騰しはじめた水から泡が出るように、心の表面に浮かび上がってくる。途中通った道から見えた、川で釣りをしている親子の姿が脳裏に浮かんでくる。

 「あんな風にのんびりと過ごすのが本来の休日の過ごし方では・・・あるいは、自転車ではなくバスで峠の上り口まできて、風景を楽しみながらトレッキングといったものでも・・・充分なのでは・・・しかし、なんでまたこんなに苦しいのか・・・」泡は浮かんでは消え、また浮かぶ。

 後半に入っても激坂は続く。「私はへたれ野郎です。」とはっきりと書かれた紙を額に貼ったかのような風体で私は上り続けた。

 「根源的な問い」には、「まあいいじゃないか・・・まあ、まあ・・・」と曖昧に答え続けた。「私はへたれ野郎です。」と書かれた紙は、僅かばかりに吹いてくる風に不定期に揺れた。

 へたれ野郎は上り終えた。マングースの牙はやはり鋭かった。のたうちまわる蛇はぐったりとへたり込んだ。

 頂上には6名ほどローディーがいた。順次峠の石碑の前で記念撮影をしていた。私もORBEA ONIXを石碑に立てかけるようにして、写真を撮った。

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 峠の頂上で10分ほど休憩した。峠の茶屋は閉まっていた。喉元過ぎれば暑さ忘れる・・・ではないが、体が回復してくるとさっきまでの心の弱さもどこかへ消えた。

 「明日もここへ来よう・・・午後からオーディオのOFF会の予定が入っているからチームのロングには参加しても途中で帰らなければならない。和田峠なら7時前に家を出れば正午までには帰り着くはず・・・へたれの2連発になる可能性は極めて高いが、かまうものか・・・」

 そう心に決めて峠を下り始めた。「根源的な問い」は下りでは決して発生しない。上手く出来ているものである・・・だから続けられるのであろう。



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